No. 1148 地震過小評価と消費税

3月末、東京株式市場の日経平均株価は1万7千円を切り、その後も低迷が続いている。百貨店販売が不調だというのも、株安で富裕層の購買に陰りが出始めたせいかもしれない。

バブルがピークだった1989年、東証一部の時価総額はGDPを上回る590兆円まで膨らんだ。アベノミクスによる株高のピークだった昨年6月も590兆円を超す勢いだったが、それが今500兆円を割り込んでいる。アベノミクスの三本の矢によって実体経済が回復したのではなく、日銀の量的緩和でダブついたお金が株式に出回っていたにすぎなかったのだから当然である。

2014年12月、安倍首相はアベノミクスで経済再生と財政再建を実現し、10%への消費税増税は延期するが2017年4月には必ず引き上げると断言して衆院を解散、総選挙を行った。それから1年半、雇用も賃金も増えていないし、国民経済だけでなく株価も低迷している。

2014年4月、消費税を8%にしたが増税はそれだけではない。東日本大震災の復興特別所得税は2037年12月末まで25年にわたり所得税額に2.1%が加算され続ける。所得への税金なので退職金や預貯金の利息にもかかる。また年500円だった復興特別住民税も2014年6月から年千円になった。自動車税は継続保有の場合の自動車税、車検時にかかる自動車重量税も増税された。4月からは軽自動車税が7200円から1万8000円に引き上げられた。給料が上がらない状態で多くの可処分所得が家計から失われたのだ。  

日本の経済は国内消費で成り立っている。従ってアベノミクスで増えた通貨供給量が賃金として国民の手元にわたり、消費が増えなければ景気が回復することはあり得ない。消費税は低所得であるほど税負担が重く、消費は停滞する。消費税3%が導入された1989年以後の日本経済を検証すればそれは明白だ。

去る3月、安倍首相はノーベル経済学賞を受賞者したポール・クルーグマン教授やジョセフ・スティグリッツ教授と会合を行い、両氏ともに消費増税に待ったをかけたという。クルーグマン教授においては、会合の内容をインターネットで全文公開したことでも話題になった。しかしこれに対して安倍首相は、リーマン・ショックや大震災のような事態が起きない限り増税を行うと述べた。

そして4月14日、熊本県を大地震が襲った。16日には再び最大震度7という地震が起き、現在でも熊本、大分両県では余震が続き19万人以上の人が避難生活を送っているという。それにもかかわらず菅義偉官房長官は4月20日の記者会見でこの地震は「大震災級の事態ではない」とし、再増税をすると述べた。

死者49人、重軽傷者千人以上、全壊家屋は益城町だけでも750棟にもおよぶ、このどこが大震災ではないのか。消費税を予定通り上げるために熊本地震を過小評価しておきたい、そういうことなのだろうか。国民の安全を守るよりも地震におよんでオスプレイをアピールしたり、「緊急事態条項」をごり押しするなど、安倍政権は一体この国をどうしようと考えているのだろう。政府の言動からますます目を離せなくなった。