テレビや新聞はあまり報じていないが、世界は日米同盟から中ロ連合へと重心を移しつつある。
日本とアメリカが不参加のアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、中国をトップに57カ国を創設メンバーとして今年1月から業務を開始した。参加国は年末には100カ国近くになると言われており、日本が最大の出資国であるアジア開発銀行(ADB)を大きく超す勢いである。
日本はアメリカに合わせてAIIBに参加していない。しかしG7では、最初に参加表明したイギリスを始め、フランス、ドイツ、イタリアも、関係を強化することで自国が利益を得られると判断して参加しており、イギリスの欧州連合(EU)離脱でこの動きはさらに強まるとみられている。
ロシアはAIIBで中国、インドに次ぐ第3位の株主で、EUではドイツが最大の出資国となっている。ユーラシアの国々はロシアや中国と緊密な経済関係、投資関係を結ぶことで、シルクロードプロジェクトや中国をロシア経由でヨーロッパとつなぐユーラシア統合プロジェクトなど、長期的なインフラ建設への参画機会を得ようとしているのだ。
こうした動きに対し、アメリカがとっているのは戦争による経済活性化である。巨大軍需産業や政府が抱える約150万人の兵士のために戦争が必要であり、世界の警察官として各国に軍隊を派遣し、2015年の軍事支出は5960億ドル(約60兆円)にも上った。この軍事費が削減されれば、軍産複合体と一体化しているアメリカ経済は崩壊してしまう。アメリカ経済の最大の敵は「平和」なのだ。
軍事費を正当化するためにアメリカはロシアを自国の敵とみなし、北大西洋条約機構(NATO)加盟国を防衛するためとしてロシア国境にミサイル防衛(MDF)システムを配備した。7月に開かれたNATOサミットでは中・東欧の4カ国に新しい駐留軍を配備することも決まった。
旧ソ連のロシアはヨーロッパの脅威かもしれないが、ロシアからすれば、ヨーロッパにおける軍事支出を4倍増して軍隊や兵器を配備しロシア国境で軍事演習を行うアメリカとNATO軍の東方拡大は同じく脅威となる。しかしアメリカ資本のメディアや同盟国日本のメディアは、一方的にロシアを世界の脅威であるかのごとく報道し、AIIBのような動きがあることはほとんど報じない。平和的な解決方法を模索することもなく、軍需産業のために戦争をあおる「プロパガンダ」が日米にはびこっている。
安倍政権も中国や北朝鮮の脅威をあおり、防衛費を4年連続増加させ、その額は5兆円を超えた。安保法制によりアメリカと一体化し、「日本を脅かすかもしれない」近隣の敵と戦う準備も整った。防衛大臣には近隣諸国から懸念の声が出る右翼強硬派を抜てきした。そして広島、長崎に核兵器を投下したアメリカと同盟を組み、核保有国のロシア、中国との戦争をあおっている。安倍内閣によってあたかも日本は戦前の大日本帝国憲法下の時代に引き戻されたかのようである。