No. 1171 平和外交で発展目指す時期

去る10月、国連において核兵器禁止条約に向けた交渉開始を定める決議が賛成多数で可決された。反対はアメリカやロシアなどの核保有国、そして世界で唯一の被爆国である日本も反対票を投じた。

この決議は核兵器禁止条約の制定に向けた交渉を2017年から開始するよう求めるもので、国連加盟国193カ国のうち123カ国が賛成した。反対はアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、そして日本やイスラエルなどの38カ国で、棄権は中国やインドなど16カ国であった。

世界で唯一、核兵器攻撃を受けたにもかかわらず、戦後はその核を投下した米軍基地を置き、核の傘に守ってもらうという安全保障政策をとってきた日本は、夏にオバマ大統領を広島に招聘し「核兵器のない世界を実現する」と言った。しかし2009年のプラハ演説でも核廃絶を口にしたが、現実は核開発も核実験も続けているのがアメリカである。安倍政権の反対票は、そのアメリカに追従したともいえる。

ところがここへきて、日本や韓国など米軍基地のある国は基地の費用を負担すべき、さもなければ撤退すると言っていたトランプ氏が大統領に選ばれるという、安倍政権にとって予想外の展開になった。安倍首相は9月には訪米してクリントン候補と会い、その信頼関係を見せつけてトランプ氏への不信感と日米同盟崩壊への危機感をあらわにしていたのである。

11月17日、安倍首相はそんなことがなかったかのように再び訪米し、今度はトランプ氏と会談をした。それを報じたメディアは会談の意義を強調したが、実際どんな意味があったのだろう。トランプ氏は正式に大統領に就任しておらず、就任は来年の1月である。さらにトランプ氏の政策は「アメリカ孤立主義」だということを忘れてはならない。世界で紛争が起きようが、アメリカは自国の繁栄を考える。国を豊かにし米国人の生活を良くする。それが多くの国民の共感を得て当選したのだ。

トランプ氏との会談後、安倍首相はペルーへ行き、環太平洋連携協定(TPP)を早期に発効させるため一層努力することでペルー大統領と合意をしたというが、11月21日にはトランプ氏は、就任直後の100日間に実施する行動計画をビデオで公開し、そこでTPPからの離脱を改めて表明した。移民、貿易協定、国防などについて言及し、米国の労働者に富と雇用をもたらすことを再び公言したのである。トランプ氏の言動は過激だと言われるが、そこに一貫しているのは大多数のアメリカ国民の利益を優先することだ。しかし安倍首相はその場しのぎの、国民よりも宗主国を優遇することが目的であるかのような行動をとり続けている。

オバマ大統領は「チェンジ」で当選したが、8年間アメリカは変わらなかった。それにいら立った国民がトランプ氏にアメリカのチェンジを託したのかもしれない。トランプ氏が大統領になって実際にどんな政策を取るかは分からないが、孤立主義になったアメリカに助けを求めることなく、日本も軍事力ではなく平和外交により国の発展を目指す時期がきている。