No. 1174 3年連続GDP減少

昨年末、内閣府は日本の1人当たりGDPが3年連続で減少したと発表した。OECD35カ国の中では20位、世界では26位となった。

2000年には世界2位だった1人当たりGDPが、長引くデフレと、2013年以降はアベノミクスがその減少傾向に拍車をかけた。円安が進み、ドル換算によりGDPが低下したこともあるが、主因は、アベノミクスで富裕層の資産は倍増しても実質賃金が減少し、日本経済を支える一般国民の消費が伸びなかったためだ。

日本政府は一部の富裕層や大企業が利益を得るような政策を進める一方で、社会保障に充てるとして2014年には消費税を8%に増税したが、10%増税を延期したことを理由に8%に増税した分のほとんどは福祉の充実に使われることもなく、さらに格差を拡大させたのである。

格差と言えば、アメリカ大統領選の民主党予備選挙でサンダース候補は、格差社会を修正するために北欧の社会民主主義を一つのモデルとして提案した。デンマークでは医療費と教育費は無料、充実した高齢者サービスも提供している。しかしクリントン氏はこれを「アメリカはデンマークではない」と一蹴した。

社会民主主義ではなく、企業や起業家にとって自由の国であることがアメリカの強さだと言いたかったのかもしれないが、北欧にも成功している企業は数多くある。ボルボ、イケア、レゴ、カールスバーグ、ノボノルディスク、ノキア、またインターネット通話のスカイプを始めたのはスウェーデン人とデンマーク人で、リナックスのコードを開発したのはフィンランド人だ。無料の教育や医療の提供は、最も基本的な生活レベルにおいて起業のリスクを軽減していることであり、今アメリカが直面しているオバマケアなど社員の健康保険という負担から企業を解放している。

北欧の経済にも循環はあり、永続する企業も破綻する企業もある。これは自由な資本主義経済において当然のことだ。しかし北欧諸国が1人当たりのGDPが高いことや、さまざまな世界幸福度ランキングで上位についている事実は、そうした資本主義経済と、国民の誰もが利益を享受できる、賢明で普遍的な福祉や社会政策が両立することの証明でもある。デンマークのように消費税25%、所得税50%でも、無料の医療、教育、出産、介護福祉、充実した年金制度と高齢者福祉が提供されるのであれば、税の高負担は当然のこととして国民は受け止めるのだ。

グローバル化により競争が激化し、より多くの人が終身雇用から短期的な働き方をするようになれば、すべての国民は生活の浮き沈みに対処する用意が必要になる。1人当たりGDPが減少をたどる日本に必要なのはセーフティーネットの充実である。社会保障が充実していれば高い税負担でも支持され、国家が教育や医療、その他の支援を提供すれば、国民は転職や起業がよりしやすく、国民だけでなく、結果的に国家も豊かになることを北欧諸国は証明している。