No. 1181 CIA実態暴露資料公開

3月7日、内部告発のウェブサイトであるウィキリークスは、米国中央情報局(CIA)の諜報作戦の実態を暴露する「Valut 7」という資料を公開した。

この機密資料はCIA本部のサイバー・インテリジェンス・センターに保管されていた8千以上の文書からなり、CIAの5千人以上のハッキング部隊は、トロイの木馬、ウイルス、マルウェアなど千以上のハッキングツールを駆使しているという。ハッキングとは他人のコンピューターに不正侵入して情報を収集し、攻撃を行うツールである。

サムソン製スマートテレビをハッキングするツールは電源をオフにしても部屋の会話を録音することができ、それをインターネット経由でCIAのサーバーに送信したり、スマートフォンAndroidを狙ったツールは暗号化機能をバイパスして音声データやメッセージを集めたりすることができる。感染するとパソコンを外部からコントロールできるようなマルウェア(悪意のあるソフト)の開発も行っているし、自動車を制御するコンピューターに不正侵入し、遠隔から車を乗っ取り事故を装う(つまり殺人も可能)こともCIAは計画していたという。

Vault 7 は始まりに過ぎず、今後さらに情報を公開していくという。CIAはこの文書の内容が真実であるかどうかコメントはしていないが、具体的に示されたCIAのサイバー攻撃やプライバシーの侵害について、公的な議論がなされる必要がある。

米国は民主主義で政府の統治を憲法に基づいて行う立憲国家だという。立憲国家では政府の権威や合法性は憲法の制限下に置かれる。しかしCIAなど諜報機関は独自に活動し、米国民を監視し、政治家さえもスパイしている。そんな国がなぜ立憲国家、民主主義国家と言えるのか。米国の憲法修正4条は「不合理な捜索および押収に対し、身体、家屋、書類および所有物の安全を保障されるという人民の権利は、これを侵してはならない。令状は、宣誓または確約によって裏付けられた相当な理由に基づいてのみ発行され、かつ捜索すべき場所、および逮捕すべき人、または押収すべき物件を特定して示したものでなければならない」と記している。

Vault 7やスノーデンが告発してきた米国諜報機関による盗聴や電子メールの傍受は、米国が選挙で選ばれた政治家が憲法に基づいて統治している国ではないことを示している。憲法をないがしろにする選挙で選ばれてない人々が、公共の秩序を守るためとして個人生活を監視するなど過度に干渉して官憲的権威を振りかざす警察国家なのである。

日本でも、憲法は自国に対する武力攻撃に対してのみ武力行為を認めているが、安倍内閣はそれを無視し、集団的自衛権を行使できるよう安保法制を成立させた。そしてテロ対策の名のもとに、危険性のある行為のはるかに以前の段階で国民を処罰する「共謀罪」を新設しようとしている。それに伴い警察の恣意(しい)的な通信傍受も米国並みに行われるようになるだろう。

サイバー時代の今、政府はあらゆる文書、会話、そして行動や、近いうちに国民の考えていることまでも監視するようになるかもしれない。