No. 1187 大規模サイバー攻撃

5月半ばに起きた大規模なサイバー攻撃により、少なくとも世界150カ国が被害に遭い、さらに感染は拡大する可能性があると報じられている。

サイバー攻撃に使われたのは、パソコンを感染させ引き換えに代金を要求するランサムウェアである。イギリスの国立病院、ロシア内務省、フランスの日産ルノー自動車工場、スペインの通信大手テレフォニカ、アメリカのフェデックス、中国の大学など、被害は全世界に広まり、日本でも独立行政法人情報処理推進機構が不審なメールの添付ファイルを 開封したりリンクをクリックしたりしないよう呼びかけた。

サイバー攻撃を行ったハッカーは当然非難されるべきだが、その「サイバー兵器」を開発したのはアメリカ国家安全保障局(NSA)であった。NSAがマルウエア(悪意のあるソフトウエア)を開発しているという指摘はNSAの契約職員だったエドワード・スノーデン氏によって以前からなされていたが、NSAはインターネットや電話網からデータ収集を可能にするために、世界中のコンピュータにマルウェアを埋め込んで感染させ、今回ハッカーがNSAから数カ月前に盗んだランサムウェアは、マイクロソフトのWindowsの脆弱性を狙ったものだった。

マイクロソフトは修正用のプログラムを配布していたが、それをインストールしなかったPCが被害にあったとして、あたかも修正用プログラムをインストールしなかったことが被害の原因のように報じるメディアもあった。しかし責任は開発したNSAにあり、マイクロソフトの社長も、「サイバー兵器が盗まれたのは、トマホークミサイルが盗まれたのと同じだ」とNSAを非難している。

NSAがトマホークに匹敵するサイバー兵器を開発した理由は、もちろん他の国を攻撃するためであり、相手は現在その国境に核ミサイルを配備しているロシアであることは間違いない。サイバー兵器は短時間に広範囲にわたり大きな悪影響をもたらし、破壊力は核兵器にも匹敵する。アメリカ政府がサイバー兵器を開発したのはそのためである。

サーバやパソコンなどあらゆるコンピュータシステムがネットワークでつながった現代、ネットワークを通じて政府や企業、個人を標的に破壊活動やデータの窃取、改ざんを行うことは容易である。重要データが紙のファイルで保管されていれば、盗むためにはそれがどこにあるかを探し、その建物へ侵入してファイルを探し出し、データをコピーするなどの危険を冒す必要があった。しかし今ではそれはネットワークでつながったコンピュータの中にある。盗むのも破壊するのも遠隔から簡単に行えるため、NSAは核兵器だけでなくサイバー兵器を開発したのである。

世界征服のためにはサイバー攻撃や、使えば自分たち自身の命をも脅かす核の先制攻撃も辞さないとしているアメリカは、ヒトラー政権下のナチス・ドイツのように、世界を征服することができると信じている自信過剰の愚か者によって支配されているようである。