米国のIT大手であるマイクロソフト、フェイスブック、ツイッター、グーグル傘下のユーチューブは、テロ対策に4社共同で取り組む団体の設置を発表した。
それに先駆けてフェイスブックは、これまでもテロリストが投稿したとされるコンテンツを人手で削除するなどの対策をとってきたが、それを強化し、テロリストやその支持者とみられる人が投稿する画像やプロパガンダなどを識別する人工知能(AI)の運用を本格化すると発表している。フェイスブックは世界で20億人近くが利用しているというが、2011年にチュニジアで起き、エジプトやリビアなどに波及した民主化運動において広く活用されたのがフェイスブックやツイッターだった。
日本政府も6月に、テロリズム集団やその他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画等の行為を処罰するためとして、「テロ等準備罪」を成立させた。
しかしテロリズムとは何を指すのであろうか。一般的には、テロとはある目的のために行う暴力行為であり、暗殺や暴力行為も辞さないとする考えを持つのがテロリストである。しかし重要な点は、政府が政府の目的を達成するために民間人に暴力を使うことはテロとはみなされないことだ。テロという用語は偽善なのである。
今後、日本政府が計画の段階で「テロ」を見つけるために、国民の電話や電子メールを傍受するようになるのは明らかであろう。一般人には関係ないと言う人は、日本政府が常に手本としているアメリカを見るとよい。アメリカでは国家安全保障局(NSA)がさまざまな手口で全ての国民を対象に諜報活動を行っている。光ファイバーケーブルを通して、インターネット企業サーバーからの直接収集、そしてコンピューター・ネットワークを使った傍受などである。アメリカ政府は監視を行うために「愛国者法」や「外国諜報活動監視法」など数々の法律を制定してきた。
これらの法律により監視は合法となり、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックといったIT企業は政府に協力しなければビジネスを続けられなくなり、オルダス・ハクスリーが1932年に書いた『すばらしい新世界』、1949年にジョージ・オーウェルが書いた『1984年』のような社会になったのである。麻薬を持っている「疑い」、マネーロンダリングの「疑い」、それで国民を盗聴する。結局は一般国民に対してもすべての行動を監視していく。こうしてアメリカでは警察官に毎年千人以上が殺され、刑務所に収監される囚人の数は約240万人と世界のどの国よりも多くなった。
専制国家となったアメリカに倣い、日本も全体主義的な法律を作り、国民への監視を強めていくのであろう。巨額の財政赤字を抱え、国民の福祉を削減し、近隣諸国と友好的な関係を築くかわりに脅威をあおり軍事費を増額する。政権を批判するコンテンツはテロリズムだとしてAIを使い排除していく。『すばらしい新世界』へようこそ。