No. 1192 スティーガル法復活を

日本では北海道夕張市が2007年に財政破綻したが、数年前から債務不履行を宣言していたアメリカの自治領プエルトリコが、この5月に破綻申請した。債務額は約8兆円と、アメリカの自治体としては最大の財政破綻となり、プエルトリコが発行している債券の保有者であるアメリカの年金基金などに影響が出そうである。

しかし、この破綻がなくても、アメリカ経済はいつ崩壊してもおかしくない状態にある。2008年の金融危機で一度破綻したにもかかわらず、金融業界はあらゆるものを投資の対象にしている。クレジット・デフォルト・スワップなど、ある会社が「倒産する可能性」までも金融商品化し、デリバティブに組み込んでお金をもうけているのである。

トランプ大統領が就任して以来、期待感から株価が上がっているが、その状況は何一つ変わってはいない。もし、トランプ大統領がアメリカ経済を救えるとしたら、一つの方法として、銀行にハイリスクな投資を禁じていたグラス・スティーガル法を復活させることだろう。これは1933年にできた銀行業と証券業を分離する法律で、銀行が証券業務にのめりこんだために金融危機が起き、世界大恐慌につながったという反省から導入された。しかし、1999年、クリントン政権はこの法律を廃止した。トランプ氏は大統領選挙出馬においてこのグラス・スティーガル法を復活させることを提案していたのである。

銀行とは基本的に、預金者からお金を集め、それを必要としているところへ貸し出すのが仕事である。銀行の預金者からすれば、お金を安全なところに置いて、“ばくち”には使われたくない。だからそのお金を投機に使えないようにするのである。「グラス」と「スティーガル」という議員の名前から取った金融規制法はただそれだけの法律だ。そして1933年に法律ができてから約70年間、預金が投機に回ることはなかったが、クリントン大統領はロビイストや銀行家の圧力を受けてこの法律を廃止するグラム・リーチ・ブライリー法に署名したのである。

その後どうなったかは言うまでもない。2008年の金融危機は、過度の債券発行に触発されて1929年の大暴落が起きたように、銀行によるサブプライムローンや複雑な金融商品を組み込んだデリバティブが原因だった。それでも巨大銀行は経営責任を問われることもなく、「大きすぎてつぶせない」として税金によって救済された。

オバマ氏、クリントン氏のようにウォール街から政治献金を得ていた大統領にはできないことだし、現在トランプ政権で財務長官を務めるムニューシン氏もゴールドマン・サックスやヘッジファンドなどウォール街出身で、当然ながらグラス・スティーガル法の復活は支持しないと明言している。しかし、大統領になっても給料は受け取らないと言っていたトランプ氏ならできないことはない。地球温暖化対策であるパリ協定からの離脱がアメリカ第一主義、アメリカの有権者とアメリカの家族の利益のためなら、将来のアメリカの金融制度を安定させるためにその復活を迷うことはないはずだ。