No. 1195 日本が牛耳られる日

インターネット小売り最大手であるアマゾン・ドット・コムが米国の自然食品スーパー、ホールフーズ・マーケットを買収した。

アマゾンは本や家電、雑貨などをインターネットで販売する小売企業のイメージが強いが、ITインフラの提供者でもある。「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」という名称で、データ保存やデータベース、コンピュータ処理サービスなどさまざまなIT関連のインフラサービスを提供しており、2013年にはCIAにクラウド・コンピューティング・サービスを提供することで話題になった。

政府関連の受注を多くしてきたIBMが、受注できなかったために異議の申し立てをCIAに行い、その回答の中でアマゾンのテクニカルソリューションの方が優れていたと説明されたため、アマゾンの受注が明らかになった。システムの受注額は6億ドル(約670億円)だったと言われている。

しかしこのシステムについては、米国民の監視体制を強化するためにCIAとアマゾンが連携したと懸念する専門家もいる。なぜなら、アマゾンが買収したホールフーズの顧客の多くは、遺伝子組み換えに反対し、有機栽培やフェアトレード製品を好む人々であることは周知の事実で、つまり米国政府の農業、医療、健康分野の政策を好ましく思っていない消費者ということだ。

アマゾンはCIAと強いコネクションを持つ新聞社「ワシントンポスト」も買収しているが、今回のホールフーズ買収により、アマゾンとCIAはコンビで、ホールフーズの顧客層をターゲット別に細かいアルゴリズムを展開し、分析ができるようになるからである。

1999年、CIAは「In-Q-Tel」というベンチャーキャピタルを設立し、諜報活動に利用できそうな優れた技術、たとえばウェアラブル、ソーシャルメディア解析などのスタートアップ企業に投資している。CIAがアマゾンと共に投資しているベンチャー企業の一つにカナダにある量子コンピュータを開発する会社があるが、量子コンピューターとは驚くほどの速さで検索が行える革新的な技術なのである。

またアマゾンはホールフーズに農作物を提供している生産者との関係を利用して、食料供給においても統制力を行使するようになるかもしれない。電子商取引においてアマゾンは独占的な地位を確立しており、米国で売買されている製品の価格を支配している。すでに凋落の始まっている米国の小売業界で、ホールフーズを買収することでアマゾンは実店舗にまでその力を広げることができるだろう。

元国務長官だったヘンリー・キッシンジャー氏は、あらゆるもの、食料、ワクチン、医療品、種子に至るまで、戦略的武器として扱うことを提唱した。日本では安倍政権が主要農作物種子法を廃止する法案を可決したが、これは米、麦、大豆の種子を国が守るという政策を放棄するに等しく、これにより外資系企業による種子、そして食料の支配が可能になるということである。規制緩和、独占、技術進歩により、日本も膨大な富とデータを独占するアマゾンのような巨大企業に牛耳られる日は遠くないのかもしれない。