8月29日に北朝鮮が発射した中距離弾道ミサイルは、北海道上空を通過し太平洋上に落下した。
メディアはこれを挑発的な行動だと北朝鮮を糾弾し、国連安保理も緊急会合を開いて発射を「強く非難」する議長声明を採択したと報じた。その一方でメディアが報道しなかったことがある。それはアメリカ、韓国、日本が8月半ばから大規模な共同軍事演習を行っていたことだ。
北朝鮮は以前から、アメリカと韓国の軍事演習が自国の主権や領土保全に脅威であり、朝鮮半島に惨事をもたらすものだと強く抗議してきた。それにもかかわらず韓国では約5万人の韓国軍兵士と1万7500人の米軍兵士が、北海道や青森県でも8月10日から28日まで自衛隊と米軍との共同軍事訓練が行われていた。
7月に習国家主席とプーチン大統領が北朝鮮の核実験への対応を協議した際も、両首脳は核実験には断固として反対し、強烈に非難するという声明を出した一方で、米韓が軍事演習を停止した上で北朝鮮と対話によって解決を目指すことを提案した。
アメリカはこれを無視して圧力を強化し、今年が北朝鮮軍創建85周年であることを理由に、北朝鮮の脅威に対する先制措置と呼んで軍事演習を行ったのである。日本のメディアが報じなくても米海兵隊のウェブサイトには、自衛隊との共同軍事演習について詳細が記されている。「ノーザンヴァイパー2017」と呼ばれる訓練では、自衛隊と米海兵隊員およそ3500人が参加し、沖縄ではできない実弾発射の演習も行ったという。
韓国や日本で北朝鮮との交戦をシミュレートした軍事演習を行うことが北朝鮮に対する挑発でなくて何であろう。米軍はB-1B爆撃機と最新鋭F-35B戦闘機も韓国入りさせ軍が攻撃態勢にあることをアピールしたと、AP通信も報じている。ロシア軍がメキシコで軍事訓練を行ったら、中国軍がサンフランシスコ湾で軍事演習を行ったら、トランプ大統領はどのような反応をするのか。軍事演習が終わって数時間後に行われたミサイル実験は北朝鮮からの抵抗だったと言えるだろう。
北朝鮮はアメリカに侵略されないために核兵器が欲しいのであって、米西海岸を核攻撃する計画などはないはずだ。なぜならそれは何も達成しない。北朝鮮が求めていることは現政権の維持、経済制裁の解除、韓国との関係正常化、そしてアメリカに朝鮮半島の問題から手を引いてもらいたいのである。
しかしアメリカは現状を維持し、ロシアと中国に対する 基地として日韓を利用し、朝鮮半島を火種にしておきたい。9月5日、トランプ大統領は「私は日本と韓国に対して、アメリカの高性能軍事装備を 大量に購入することを認める」とツイートしたが、なんと正直なコメントだろう。北朝鮮を挑発して緊張が高まれば米軍 需産業がもうかり、軍事力強化は事態をより悪化させる。朝鮮半島の危機はこれからも続くだろう。