No. 1199 操作されたネット検索

今年初め、インターネット検索の大手グーグルは、同社のガイドラインに反する不適切な方法で検索結果の表示順位を引き上げたとして、企業サイトなどの順位を強制的に下げるペナルティーを科していたと報じられた。

IT企業に限らず、あらゆる業界でインターネット利用が一般的となり、多くのビジネスがインターネット検索を通じて顧客の獲得を図っており、同様に一般消費者も製品購入や各種サービスの予約や情報収集で検索システムは欠かせないツールとなった。中でもグーグルのシェアは他の検索エンジンを大きく引き離している。

グーグルからペナルティーを受けたという企業は、検索順位を上げるために他サイトの記事を許可を得ずに転載したり、他サイトへのリンク数を水増しするなどしていたというが、グーグルは検索順位を決めるアルゴリズムを公表しておらず、ペナルティーの基準や仕組みも不透明なままだ。

製品やサービスを検索して上位に提示されれば利用者の注目を引きやすく、売り上げや顧客獲得につながる。また情報は上位に表示されるほど人々の目にふれることになり、したがってグーグルが何を上位に表示するかは世論操作にもつながる。

先のアメリカの大統領選挙では、グーグルがクリントン候補に有利となるように操作をしている疑いがなされた。グーグルの元幹部がクリントン候補の技術統括役員をしていたり、グーグル社員が頻繁にホワイトハウスを訪問するなど、同社とオバマ政権との親しい関係の中において、インターネット検索が世論の形成に大きく影響することをグーグルも政府も十分に理解しているからである。

さらにグーグルとアメリカ政府、特に諜報機関CIAとの深いつながりを示すのがグーグル・マップとグーグル・アースだ。CIAは地理空間データを視覚化するこのアプリケーションを開発した企業に、CIAのベンチャーキャピタル会社を介して投資しているのである。

政府が国民を監視し、オンラインコミュニケーションをコントロールするようになれば、もはや民主主義とは言えない。政府がマスメディアを管理し、プロパガンダを使い権力を維持する全体主義にほかならない。

アメリカの元経済政策担当の事務次官補だったポール・クレイグ・ロバーツ氏は自身のコラムで、グーグルはCIAとNSA(アメリカ国家安全保障局)に協力して政府に異議を唱える思想や表現を抑圧しており、検索エンジンのアルゴリズムを利用して反戦や進歩派のウェブサイトへ人々がアクセスしないように操作していると記している。グーグルはアルゴリズムを公表していないが、検索表示の上位に来るのはグーグルや政府が好ましいとする結果が表示されていると思ってよいだろう。

このため私個人について言えばグーグルは使わず、DuckDuckGoという検索エンジンを利用している。グーグルが上位にランクしたくない記事も上位に表示されるし、個人情報を収集することも共有することもないと明記しているのも気に入っている。政府の御用機関紙以外の情報が欲しければ、まずは政府とつながっていない検索エンジンを使うことだ。