No. 1200 新しい戦争の時代

先月、アメリカの電気自動車会社大手のテスラが、半導体大手AMDと共同で自動運転車向けの人工知能(AI)用半導体を開発していることが報じられた。

グーグルはAIディープラーニングを高速に実行するための半導体を開発しており、ソフトバンクグループは、投資ファンドが調達したその大規模な資金を半導体大手に投資するとしている。AI半導体の製造には数千億円の初期投資が必要とされ参入障壁が高いが、優秀なエンジニアを集めることができれば設計は可能で、製造はチップの生産工場に委託することができる。半導体の性能が上がればあらゆる産業においてAIの採用がますます加速することは必至であろう。

去る8月、テスラのCEOやグーグルのAIスペシャリストなどを含む、AIやロボット工学に携わる企業リーダーなど116人が、自律型のロボット兵器の開発に関する懸念を表明する公開書簡を発表し、戦争において人命を奪うことを目的とする自律型のロボット兵器が開発されれば、武力紛争の規模が人類の理解を超えるスピードでかつてない規模に拡大するだろうと警鐘を鳴らした。

そして国連に対し、こうした兵器を禁止する措置を講じるよう求めたという。アメリカ、中国、イスラエル、ロシア、イギリスなど10カ国以上がすでに自律型の兵器システムの開発に着手しているとされ、テスラのCEOは以前からAIを使用したロボット兵器のもたらす危険性を指摘し、最近ではツイッターで「北朝鮮が世界にもたらすリスクよりも大きい」と発言していた。

アマゾンはドローン(無人航空機)による配達サービスの実現を目指しているというが、ドローンは元々軍事目的で開発され、イラクやアフガニスタン戦争などでは実戦に使われ、テロリストを殺害するためという理由で多くの民間人が巻き添えになった。一方でドローンは何十万キロも離れた管制センターから操作しているので、たとえ対空ミサイルに撃墜されても人命が失われることはない。精密誘導爆弾などを搭載したドローンは今や戦争の主役であり、2011年のリビア内戦ではカダフィ大佐の乗る車両を攻撃したのもドローンであった。

また北朝鮮が電磁パルス(EMP)による攻撃能力も手にしたとして米韓両国を威嚇したが、EMPは核爆発によって発生するパルス状の電磁波で、あらゆる電子機器の内部回路を瞬時に発火させてしまう。核保有国は潜在的にEMPをもたらす能力を持っており、電子機器で作動する戦闘機や艦隊が無力化され、周辺地域の通信網も電力網もストップする。あらゆるものが誤作動すれば文明生活は一瞬にして破壊されることになるのだ。

戦争は無人化され、生身の人間同士が戦闘機で相手と戦い合うものではなくなった。この新しい戦争の時代に、日本政府はオスプレイやイージス艦などをアメリカから大量に購入しているが、一体それに何の意味があるのだろう。AIを使ったロボット兵器以前に、もはや戦争は違った次元で行われるものとなったのである。