No. 1201 危ぶまれる核戦争勃発

日本では北朝鮮のミサイルでJアラートが発動されたが、世界を見渡せば中東のシリアでは6年以上にわたり残忍なテロとの戦いが続き、核戦争の勃発すら危ぶまれている。

シリアで米トランプ政権が行っている軍事攻撃に対して北朝鮮は、「核兵器を持たない国だけを選んで横暴にたたいてきたのが歴代米政権だ」と反発し、だからこそ今後も核兵器やミサイル開発による軍事力強化を推進すると強調したのである。

ヨーロッパを中心に、難民が世界中に増え続ける原因はシリアのアサド政権だと言われてきた。しかしここにきて難民問題だけでなく、シリア内戦の原因はアメリカの軍部と軍需産業の支援で作られたISISや反政府軍だという事実が露呈し始めている。プーチン大統領はすでに2015年に国連総会で、ISISは無から発生したのではなく体制に抗する武器として大切に育てられたものだと、ISISの背後にアメリカがあることを示唆していた。

シリアの現アサド政権を支援する国はイラン、ロシア、中国といった国々で、一方シリアの反政府軍を支援するのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、つまり反米国家と親米国家の戦いであるともいえる。この戦いがエスカレートし、9月にはロシア軍の中将と2人の大佐がISISの迫撃砲攻撃と思われるものにより死亡した。これに対してロシア国防省は、シリア北東部デリゾールの北にあるISIS
の陣地を撮影した衛星写真を公表し、そこに米軍特殊部隊の装甲車などがあることから、米軍とISISの関係を示す証拠であると主張したのである。

ロシア軍中将と大佐の殺害が意図的か偶然かは分からないが、シリアにおいて米軍が焦っていることは確実であろう。シリアで地上軍を投入しているのはロシア、イラン、トルコなど皆反米国家で、一方でアメリカの同盟国はイスラエルもサウジも地上戦に軍を投入していない。ISISを使ってシリアを分割するというアメリカの計画は成功していないし、シリア政府から抑圧されていたクルド人勢力を利用するという案も失敗のようである。

ストックホルム国際平和研究所の報告書によれば、核弾頭を米国が6800発、ロシアが7千発保有しているという。両国は核兵器削減条約を締結したが、ほとんど削減していないどころか核兵器の近代化を進めており、アメリカは2026年までに4千億ドル(約45兆2880億円)、今後30年で1兆ドル(約113兆円)を核関連分野に投じるという。

北朝鮮だけでなくシリアへも、アメリカは外交を通して平和を追求していくという意思はないようだ。政策を立案しているのはトランプ大統領ではなく軍隊と軍需産業という既得権益集団であり、したがって北朝鮮を挑発するようにシリアではロシアを挑発している。もちろんアメリカもロシアも、デリゾールを制圧したいのはユーフラテス川沿いに広がる油田地帯を抑えたいためであろうが、シリアの現状は朝鮮半島の危機とは比較にならないほど危険な状態になっていると言える。