No. 1209 最大となった防衛費予算

昨年の北朝鮮ミサイルの脅威を受け、日本政府はさまざまな兵器を米国から購入することを決めた。

地上からミサイルを迎撃する「イージス・アショア」は1基で約1千億円だといい、2018年度防衛費予算は5兆1911億円、6年連続増で過去最大となった。米大統領選の時からトランプ氏は在日米軍駐留経費の負担増を求めることを主張するなど、日本にもっとお金を払わせる方針を明確にしていたから、安倍首相はトランプ大統領に大きなプレゼントを約束したのである。

しかし北朝鮮によるミサイル実験がなければ、これほど大量かつ簡単に日本政府が兵器を購入することはできなかった。北朝鮮の核ミサイル開発は米国に対する抑止力のためであるが、それに対してトランプ政権は先制攻撃をちらつかせ、安倍首相も圧力をかけることに同意して兵器購入の必要性を正当化した。Jアラートを出して鉄道を止め、ミサイルから身を伏せる訓練をさせて日本国民の不安をあおったのである。

日本政府は、北朝鮮のミサイルが日本の領域に侵入し襟裳岬の東に落下したと発表したが、国際航空連盟が定める海抜100キロを超えるラインをカーマン・ラインと呼び、このラインの先は宇宙空間と定義され、日本の人工衛星なども飛んでいる空間である。ミサイルはこのラインのはるか上を通過したため、国際法上は領空侵犯にはなっていなかった。

しかし政府の発表が訂正されることはなく、ミサイル危機は安倍首相が進める日本の軍備化や沖縄の辺野古の新基地建設推進に大いに役立ったのである。衆院選後、麻生副総理は「自民党の勝利は明らかに北朝鮮のおかげ」と発言したが、そう考えたのは彼一人ではなかったはずだ。

日米のリーダーが主張してきた、北朝鮮への圧力だけが解決策のように報じられてきたが、その一方で別の解決策を打ち出していたリーダーもいる。ロシアのプーチン大統領は昨年9月、ロシアが主催する東方経済フォーラムにおいて北朝鮮を経済協力に引き入れることを提案していた。

東方経済フォーラムはウラジオストクで開催される国際会議で、ロシア極東への外国からの投資を促すのが目的で日本、韓国、中国など多くの国が参加している。ロシアの提案とは、シベリア横断鉄道と北朝鮮を通って韓国の鉄道とを結ぶ合同の鉄道建設、パイプラインの建設、北朝鮮の港湾の開発などにより北朝鮮を段階的に地域に引き入れるというものだった。

ロシアのメディアであるスプートニクによれば、この提案に中国、韓国、そして安倍首相も賛同しており、北朝鮮も反対しないと表明しているというのである。このニュースが日本のメディアで報じられることがなかったのは、おそらく米国がこれに反対していたからだろう。日本の大手メディアが米国の利益に反する報道をしないのはこれに限ったことではない。

極東の国々が経済で協力し合うというプーチン大統領の提案は、米国にとってはその影響力、極東での地位が後退するわけだから許しがたいことであるのは違いない。安倍首相は年頭に「国民を守るため真に必要な防衛力強化に取り組む」と述べたが、防衛が北朝鮮から国を守ることであれば、まず対米従属をやめ、ロシア・中国との緊密な協力に取り組むしかない。