No. 1210 目立つ米国孤立の動き

昨年からイランで反政府デモが続いている。1月には国連安保理事会でアメリカがイランの反政府デモを批判したが、多くの国はアメリカの批判に追随せず、内政干渉だと反発した。

世界や地域の反対にもかかわらず、エルサレムをイスラエルの首都として正式に承認し、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転する準備をするよう求めるなど、トランプ政権になってからアメリカの孤立した動きが目立っている。

イランの反政府デモの原因は、物価上昇と国内の苦しい経済状況によるものだと言われ、反政府運動の中心は失業率の高い若者で、最高指導者の退任とイスラム体制の解体を求めて政府機関などが襲撃された。ロウハニ大統領が軍事費を拡大する一方で、2018年予算において低所得者への補助金を削減したことも一因とされる。大統領はその怒りを認識し、憲法に則して国民は政府に批判や抗議ができると述べたというが、大統領が国民に強調すべきだったのは、この経済悪化の原因の一つがアメリカによる経済制裁だったということだ。

アメリカは自国の国益のために制裁という名のもと、他国に対して圧政的な政策を押しつける。制裁とはより強い国が弱い国に対してとる対抗措置なのだ。そしてイランへの制裁でイラン国民は経済的に圧迫されている。特にイランでは、アメリカが支援したパーレビ国王が失脚し、反体制聖職者ホメイニ師による政権が樹立されて以来、その発展を阻止するためにアメリカはさまざまな制裁を行ってきた。

食料や医薬品などの取引を制限することは国民の命にも関わる行為であり、人権侵害であることは明らかである。また中央銀行や外貨取引に対する制裁では産業全体が抑圧され失業がもたらされる。つまりイランで起きた反政府デモが向けるべき矛先はアメリカなのである。

アメリカの目的は、制裁に終わらずその先の戦争であろう。兵器ビジネスに依存するアメリカ経済は、軍事支出を正当化するために世界各地に火種を求めている。中東ではアメリカ政界に大きな力を持つイスラエルロビーが、イランの核開発を阻止し、唯一の核保有国であり続ける必要がある。イランで起きているデモはアメリカにとって政権を転覆させる良いチャンスでもあるのだ。

テヘランの反政府デモは、2010年から2012年にかけてアラブ世界で起きたアラブの春のような事象に発展したかもしれない。しかし今回の場合はそうはいかないだろう。なぜならイランには中国の後ろ盾がある。中国はイランの最大の貿易相手国であり、イランの高速鉄道など、幅広い分野で経済支援を行うとしている。アメリカが圧力をかけるほど、反米諸国同士の結束は固くなるのである。