3月上旬、米国トランプ大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談するというニュースが世界を駆け巡った。
つい2月にも安倍首相は北朝鮮に対しては継続して圧力をかけ続けると言ったばかりだったし、何よりも大量の兵器を米国から購入したのも「北朝鮮の脅威」に備えるためだった。安倍政権は過去5年間、物価と賃金の低迷を理由に年金を減らし続けてきたが、防衛費は6年連続で増やし、2018年度は5兆1911億円と過去最大になっている。国民の生活に必要なのは年金よりも防衛力だと、兵器を買い込んで北朝鮮の弾道ミサイルへの対応を強化したのだ。
では米国が北朝鮮に強い圧力をかける理由は何なのか。第2次大戦後、米国は中国における国民党と共産党の権力闘争と、ソ連が満州の多くを支配下に置いていることを懸念した。もしソ連が満州を掌握すれば戦争で日本に勝った意味がなくなる。なぜなら米国にとって太平洋戦争の目的は、真珠湾を攻撃した日本を降伏させるだけでなく、日本が植民地であった満州や朝鮮半島に築いたインフラや工場も米国の占領下に置くことだったからだ。
20世紀初頭、米国もヨーロッパや日本が進出していた中国に加わろうと、「門戸開放政策」を提言した。東海岸から始まった米国が、先住民族を殺りくしながら西部へ進み、ハワイ、フィリピンを領有し、ついには東アジア、ユーラシア大陸までを掌握することが米国の「マニフェスト・デスティニー」(明白な運命)だったからである。
しかし戦後、中国共産党の台頭で米国は中国市場を失った。朝鮮半島はヤルタ協定により北緯38度線を境に南側を米国、北側をソ連が分割占領し、北には金日成による労働党政権ができた。米国は南に李承晩を大韓民国の初代大統領とする傀儡政権を立てた。
1950年、南北統一を目指し北の軍が38度線を越えたことから始まったのが、南北合わせて約300万人が亡くなった朝鮮戦争である。3年で休戦になったが1958年、在韓米軍基地に核弾頭を装着できるミサイルが配備され、冷戦時代には中国もソ連の援助を受けて核兵器を開発した。北朝鮮が核ミサイルを開発する理由は、米国から先制攻撃をされないという保証が欲しいからである。核を使えば敵国も核で応戦し、お互いが滅ぶことがわかっているからだ。
これまで米国は他の国と取引をする時、必ず米国の条件を相手に飲み込ませた。しかしもはやそれは強大になった中国のある東アジアでは通用しない。対話を重ねて平和協定を結び、北朝鮮は核をあきらめ、米国も1945年から韓国に配備している米軍兵士と兵器を撤退するのだ。
世界が平和の流れに向かう中、安倍政権はそれに逆行するように憲法を変えてまで日本を戦争ができる国にしようとした。ナチスがドイツ国民の怒りを背に成長したように、安倍政権も中国や北朝鮮への怒りと憎しみをあおることで戦争を起こそうとした。しかしそれは失敗に終わり、世界は米国の覇権から、中国、そしてユーラシア経済圏へと動いていくであろう。