No. 1218 FBの個人情報漏えい

インターネットを介して交流ができるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の中でも、実名制でリアルな友人関係を特徴とするFacebookはユーザー数が全世界で20億人、日本国内でも2800万人が利用しているという。

そのFacebookの個人情報がイギリスのデータ分析企業「ケンブリッジ・アナリティカ」(CA)に流出し、イギリスEU離脱国民投票や米大統領選キャンペーンにも利用されていたことから、米連邦取引委員会は個人情報の管理に当たりFacebookが適切な扱いをしていたか、法律違反がなかったかについての調査を開始し、米議会はCEOのザッカーバーグ氏を公聴会に呼んで証言を求めた。

CAは、ケンブリッジ大学の教授がFacebookで性格診断クイズを行い、クイズに回答した人やそれに「いいね!」を押した友達など約5千万人の米国人のプロフィールデータを不正に取得し、大統領選で活用したという。個人情報漏えいは今までにも数多くあったが、ユーザー規模の大きさと、大統領選挙にも影響を与えてしまった点で最大の事件となった。

大学教授がFacebookから集めた個人データを第三者に売ったことはFacebookの利用規約違反に当たる。しかしFacebookの本業は広告であり、ユーザーだけでなくユーザーが「いいね!」した情報や相手に関するデータを広告主に売ることなのだ。Facebook上で行われるコミュニケーションがマーケティングに利用され、このビジネスモデルにより、ザッカーバーグ氏は710億ドル(約8兆円)もの資産を築いた。Facebookの顧客は広告主で、ユーザーは情報を提供することで友人と無料で交流ができるのである。

公聴会でザッカーバーグ氏はFacebookユーザーはいつでも個人データを消去できると述べた。しかしニューヨーク・タイムズのコラムニスト、ケヴィン・ルース氏は最近のコラムで、Facebookが収集した自身のキャッシュデータを精査したところ、ずっと以前に削除したデータも残っていたという。つまりユーザーがデータを削除しても、またはFacebookのアカウントを消した後でも、誕生日のような基本データから自分が投入したあらゆる情報、誰をいつ友達から外したか、どんな広告や投稿に「いいね!」をしたのかをFacebookは保管していたという。

またルース氏はFacebookの「Messengerアプリ」という、Facebook上で友達同士がテキスト送信や音声通話を無料で利用できるアプリも利用していたが、データをコピーして驚いたのは、彼のiPhoneの電話帳にある全ての名前と電話番号をFacebookが保管していたことだったという。

しかしこれらは当然のことかもしれない。Facebookのビジネスモデルは個人の情報を広告主に売って利益を得ることである。ユーザーがどんな友達とつながっていて、どんな記事を見て、どんな投稿や広告をいいと思っているのか。Facebookにとってそれは宝の山であり、削除すべきものなど一つもないのである。