6月8日からカナダで開かれたG7首脳会議では、関税問題で米国と残り6カ国との対立がクローズアップされた。新興国の急速な経済的発展に伴い、世界経済に関して近年はG7にEUやロシア、中国なども加えたG20の枠組みで議論されることが多くなり、G7はもはや形骸化しつつある。
そのG7サミットで、あまり報じられることはなかったが、環境問題についても不調和が目立った。プラスチックごみの海洋汚染への対策を各国に促す合意文書(G7海洋プラスチック憲章)に、米国と日本だけが署名をしなかったからである。ドイツの公共放送ドイッチェ・ベレは、「G7マイナス2」と見出しを付けて日米を除く5カ国が文書に署名したことを報じている。
G7サミットで海洋プラスチックごみが問題に上がったのは初めてではない。2015年には海洋プラスチックごみ問題に対処するアクションプランが定められ、2016年の伊勢志摩サミット、2017年のイタリアでのサミットでも再確認されている。EUはプラスチック用品に対する規制強化を発表し、法案審議も始まった。
これを背景に5カ国の首脳は2030年までに全てのプラスチックを再利用、リサイクル可能なものにするため産業界と共に取り組むこと、使い捨てプラスチック製品を削減しリサイクル・プラスチックの使用を促進するという文書に署名し、大きな問題となっているプラスチックごみの海洋汚染に対処することでG7の存在価値を示そうとしたのだろう。
この環境問題の話し合いに、温室効果ガスの排出削減に取り組むことを定めたパリ協定からも離脱したトランプ大統領は代理人を立て、自身は参加すらしなかったという。石油など資源開発の規制撤廃、オバマ前大統領が中止したエネルギー開発関連計画の復活はトランプ氏の選挙公約でもあった。
プラスチックを世界で最も生産しているのは中国で、全体の25%を占める。しかしEUが20%、米国は19.5%と、プラスチックの45%は欧米で作られている。特に米国のプラスチック業界は米国製造業で3番目に大きな業界であり、トランプ氏が利益も雇用も守りたい分野なのだろう。
米国に歩調を合わせてG7での署名を辞退した安倍首相は、しかし一転して来年6月に大阪で開催されるG20首脳会議で、議長国として世界規模で海洋プラスチックごみの問題解決を提起するとしていると6月25日に新聞各紙が報じた。
すでに世界60カ国以上で使い捨てプラスチック製品の使用禁止や課税が行われている現実の中、なぜ署名を辞退したのか、またわずか数週間でなぜその態度を変えたのか分からないが、どんな理由にせよ環境後進国の米国に従い続けるのをやめるのは良いことだ。2016年の伊勢志摩サミットで海洋プラスチックごみに対処することを再確認していたのだから、米国におもねるのはやめてG20で協力して迅速な対応をとるべきである。