No. 1232 気候変動と21世紀

気象庁は9月初め、今年の夏の天候まとめを発表した。東日本は平年より1.7度高く、1940年に統計を開始してからの最高を記録し、西日本も1.1度高くなるなど記録的な猛暑だったことがわかる。

国内観測史上最高気温も更新し、埼玉県熊谷市で41.1度を記録、全国927の観測地点のうち202地点が過去の最高気温に並ぶか、更新したという。35度以上の猛暑日も増えた。大阪は7月のうち14日、8月のうち13日が猛暑日、名古屋は8月のうち20日も猛暑日であった。これらは明らかに地球温暖化であり、英語では「Climate Change(気候変動)」という言葉が使われる。

自然災害の被害も大きく、7月の列島縦断豪雨では200人以上の死者、行方不明者が出た。6~8月だけで18の台風が発生し、9月4日には今年最大規模の台風が上陸して、死者も出た近畿地方では多くの世帯が停電し、関西空港では高潮と重なり甚大な浸水被害が発生した。そしてその2日後には、北海道で最大震度7という地震が起きている。

地球はこれまでも長い時間をかけて氷河時代と無氷河時代が繰り返され、海洋や地殻変動、火山の噴火などにより気候も変動してきた。近年において人間の活動に起因する気候の変化が加わり、より激しい変動期に入ったと言えるだろう。

北極海周辺では温暖化によって永久凍土の融解が加速し、凍土に含まれるメタンガスが放出されることでさらに温暖化が進行するという悪循環がもたらされている可能性もあるという。確かにこの夏は欧州北部も熱波に襲われ、北極圏では森林火災が発生し、農家は干ばつ被害に見舞われた。

これから春に向かう南半球でも、オーストラリアが過去最悪レベルの干ばつに見舞われている。昨夏も猛暑日や最高気温が記録ずくめだったが、冬季に入っても降雨が少なく、農業生産額の約4分の1を担うニューサウスウェールズ州ではほぼ全域が干ばつ状態だという。

21世紀は中国がさらにその力を増し、「中国の世紀」になると言われるが、気候変動の観点から見ると中国も安泰ではない。先月、英ガーディアン紙は「2070~2100年に生存不可能なレベルの熱波が中国を襲うかもしれない」という研究者の発表を報じている。

この予測をしたのは米MITのエルタヒル教授で、中国で最も人口が密集し、食糧生産地でもある中国北部の華北平原一帯において、気候変動により湿度の高い熱波が発生し、そこにいると健康な人でも数時間で死ぬというのが科学的な調査の結果だというのだ。

中国は世界最大の人口を擁し、温室効果ガスの最大排出国でもある。この夏も中国各地で記録的な猛暑が続き、熱波による死者が相次いだ。中国当局ももちろん危機を認識しており、国家エネルギー局は100以上の石炭火力発電所の新規建設計画を取りやめ、2020年までに3600億ドル以上を再生可能エネルギーに投じる計画を発表しているが、これらの取り組みも時間との闘いだ。

このまま気候変動が加速すれば、21世紀は中国どころか誰の世紀でもなくなるであろう。