No. 1240 G20首脳会議で相次ぎ会談

アルゼンチンで開かれたG20首脳会議で安倍晋三首相は、トランプ大統領、習近平国家主席、プーチン大統領と相次いで会談した。トランプ大統領は、対日貿易赤字を是正するために日本が米国の最新鋭戦闘機「F35」100機を総額1兆円で購入することを高く評価したという。

習国家主席との会談では、日本は中国にさらなる経済協力を行い、自由で公正な貿易体制発展に向けて東アジア地域包括的経済連携の早期妥結に協力すると述べ、プーチン大統領とは今後平和条約について論議し、北方領土での共同経済活動の実現など、全ての分野でロシアとの協力を拡大させていきたいとの考えを表明した。

2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化してから冷え込んだ日中関係は今年急速に改善した。日本の首相として7年ぶりの訪中には、中国市場への参入を熱望する千人人近い日本企業関係者が同行した。米ペンス副大統領は中国の一帯一路を「債務外交」だと非難したが、中国は双方にメリットがある関係だと反論している。マレーシアやパキスタンなど債務削減を理由に一帯一路のプロジェクトを延期または中止した国もある中、日本の協力表明は他の国の参加を奨励することになるだろう。

10月にはインドのモディ首相も来日し、日印でバングラデシュ、ミャンマー、スリランカなど中国が活発に活動している国のインフラプロジェクトを共同で行うことで合意した。すでに日本はインドのムンバイからアーメダバードを結ぶ高速鉄道の資金も提供している。また新たな金融危機を予測しているかのように日本は中国だけでなくインドとも通貨スワップ協定を締結した。

広大なユーラシア大陸東部の経済を発展させようとするロシアとの関係も深まっている。日本とロシア間の貨物輸送は主に空か海の輸送手段で行われているが、今夏、シベリア鉄道とロシア、日本、韓国を結ぶ定期フェリーを利用した輸送実験も始まった。シベリア鉄道を使えばコストも輸送日数も半分以下になるという。

G20サミットは世界的な経済の安定と成長を図るための国際会議だが、今年のG20 で一番目立ったのは米国と中国の確執であり、現実としてユーラシアに移ってしまった経済成長の軸を北米に取り戻したい米国の憤りだった。第2次大戦後70年代まで米国経済は世界をけん引するリーダーであり、強大な軍事力とともに世界秩序を決めるのは米国だった。しかし80年代から米国企業は利益のために安い労働力の中国に工場を移転し、できた製品を米国に輸入するようになった。これにより多くの米国人労働者は雇用を失った。

一方、中国は新技術と投資により成長し、経済発展はユーラシアに及んだ。中国の一帯一路を「債務外交」だと言うことは、日本を含め近隣諸国が中国とともに自国を発展させたいという現実からみて当てはまらない。アジア諸国も、自分たちの成長のもとは米国ではなく中国にあると分かっている。米国から戦闘機を買う約束をした安倍首相も、それをよく分かっているはずだ。