気象庁の発表によれば、暖冬の影響で春の訪れは早い見込みとのことだが、南半球のオーストラリアではいま、記録的な暑さが猛威を振るっている。
オーストラリアでは2017年には史上4番目、昨年には3番目の暑い夏を記録したが、今年も激しい熱波に襲われ、最高気温が45度を超える地点も続出しているという。北半球では冬の間はあまり地球温暖化について話題に上らないが、それでも問題であることに変わりはない。
温暖化で、大気に含まれる水蒸気の量が増え、それにつれて大気のエネルギーも高まりそれが気象変動の幅を拡大し、温和であった気候が熾烈になる。ニュースなどでよく聞かれる「記録的な暴風」「記録的な降水」はまさにそれである。また最も暑いアフリカのサハラ砂漠で積雪があったのも気候変動にほかならない。
地球温暖化の原因の一つはエネルギー消費である。化石燃料の燃焼で発生する二酸化炭素は地表の放射する赤外線を吸収して放射冷却を妨げ、いわゆる温室効果をもたらす。樹木などの緑色植物は二酸化炭素を吸収して酸素を発生させながら成長するが、ブラジルやインドネシアで熱帯雨林が伐採されたことにより大気中の二酸化炭素濃度が増えた結果、地球全体が温室に入っているような状態がつくり出された。
地球が直面している危機は気候変動だけでなく、戦争や天然資源の減耗、貧富の格差も大きな脅威であるが、これらの問題は根底でつながっている。二酸化炭素を最も排出しているのは中国、米国、インド、ロシア、日本という順番だが、上位10カ国のうち1人当たりの排出量では米国人が年間15.8トン、中国人は6.8トン、インド人は1.6トンと米国が圧倒的に多い。自動車、冷暖房、大量消費、大量廃棄といった米国の豊かな生活様式は資源を浪費し、大量の二酸化炭素を排出する。
発展途上国の政府は国民の生活水準を上げることを政策目標としているが、貧しい国の国民の中にはそれを待つことができず、豊かな暮らしを求めて先進国に移民することを選ぶ人も多い。そうした人々がビザのある無しにかかわらず米国やヨーロッパ、オーストラリアに向かう。世界の人々が皆、米国人のような暮らしをするということは、75億人が年間15.8トンの二酸化炭素を排出するということである。先進国は、環境汚染は中国やその他途上国の消費の急増が原因だと言うが、誰もが米国人のように消費を楽しみたいという欲望を持っているのだ。
地球の生物はこれまでに5回の大量絶滅を経験し、最後は今から6550年前、恐竜をはじめ生物の70%が絶滅した白亜紀の大量絶滅だったといわれる。そして今、6度目の大量絶滅が人間によって進行中だと科学者たちは指摘する。これを阻止するためには、文明の利器の利用をやめる必要があるが、先進国の人はその利便性を捨てることはないだろう。数百万種の生物が存在する中で、万物の霊長と自称する人類だけが自然に手を入れ、エネルギーをほしいままにし、そして今、地球の運命を憂いているのである。