No. 1245 気候変動各国共通の問題

先月スイスで世界の政財界トップが一堂に会す世界経済フォーラムが開かれた。これは通称ダボス会議、「世界の1%の富裕層の集まり」とも言われる。

パートナーと呼ばれる多国籍企業100社が年会費として各社1千万円以上を出資し、メンバーである世界の主要企業千社以上は年会費約350万円を支払う。企業の経営陣がダボス会議に参加するにはさらに約500万円がかかる。これに政治家を含めた各国の1%の富裕層が、「世界を良くする」ための意見交換をするのが団体の目的であるという。

しかし今年は政府機関が閉鎖していた米トランプ大統領、EU離脱で揺れる英メイ首相、イエローベスト運動が起きている仏マクロン大統領らは参加せず、カナダ、中国、ロシア、インドなどの首脳も欠席だった。

各国がさまざまな問題を抱え世界の不安定さが増している中で共通の問題は気候変動である。環境問題はダボス会議でもアジェンダの一つで、今年は16歳のスウェーデン人の少女が気候変動対策を強く訴えるスピーチを行って注目を浴びた。

高校生の環境活動家、グレタ・トゥンベリさんは昨年12月にポーランドで開催された国連気候変動会議でも講演を行っている。スウェーデンは18歳から選挙権があり、国政選挙では若者の投票率が80%を超える。トゥンベリさんはまだ16歳で選挙権がなく、国政に声を届けることができないために昨年9月から毎週金曜日にストックホルムの国会の前に座り込み、2015年に採択された温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の順守を訴え続けている。ダボスへは鉄道を乗り継いで来たという。

例年ダボス会議に出席するために多くのエリートたちがプライベートジェットを利用しているが、航空機は気候変動の原因である二酸化炭素を大量に排出する。温暖化による経済への影響は懸念しても、自らの生活様式を変えることは容易ではないのだ。二酸化炭素を最も多く排出する上位10カ国だけで排出量全体の66%になり、この10カ国のGDPの合計は世界の59%を占める。排出量を劇的に削減するにはこれらの国が率先して行うことがまず必要だろう。

日本の排出量は世界で5番目、国民1人当たりでは上位10カ国中6番目に多い。排出量削減のためには、化石燃料に頼らない低炭素社会への転換や省エネに取り組まなければならないが、今年のダボス会議において安倍首相は「経済活動を制約する必要などなく、求められているのは従来の技術を根底から覆すほどの革新的な技術革新」だと演説し、「ESG投資」(環境や社会に配慮している企業に対して行う投資)への期待を語った。

すでに多くの生物種が地球上から姿を消している今、技術革新が遅れれば環境は人間にとっても不利なものとなってくる。先進国の先進性はエネルギーの大量消費によるものだが、新技術の開発や普及に合わせ、先進国こそが率先して低炭素社会へ転換するべく生活や心構えを変える必要があることは言うまでもない。