No. 1247 人類存続へ有機栽培転換を

3月6日は二十四節気の一つ「啓蟄」だった。春になり、冬の間土の中にいた虫たちが動き始めて顔を出す時季である。しかしその虫たちが地球から急速にいなくなっているという。

世界でミツバチが減少している問題が取り上げられ始めたのは1990年代で、ヨーロッパなどでミツバチの大量死や働きバチがいなくなってしまう現象が起こり、米国やインド、中国、日本にも広がった。その原因には諸説あるが、一つはネオニコチノイド系農薬だと言われ、EUではネオニコチノイド系農薬の屋外使用の制限を採択した。

しかし最近発表された研究によると減少はミツバチに限らず、さまざまな昆虫種が世界中ほぼ全ての地域で減少傾向にあり、あと数十年で全体の40%が絶滅する恐れがあるという。バイオロジカル・コンサヴェーションに掲載されたオーストラリアの大学教授らによる研究論文によれば、原因は農業や都市化によって生息地を奪われたこと、農薬や化学肥料による汚染、病原体や侵入種などの生物学的要因、気候変動だという。

絶滅危惧種と言えば日本ではイリオモテヤマネコやジュゴンなどが話題によくのぼるが、昆虫の減少は地球の生態系を崩壊させる引き金になり得る。なぜなら昆虫は、鳥や魚、哺乳類など数多くの生物の食糧であり、ミツハチやチョウは野菜や果物の栽培において受粉という重要な役割を担っているからである。論文は世界各地で行われた研究を基にまとめられており、地球上に生息する昆虫の数は1年で2.5%のペースで減少しているという。10年で25%が減少、50年で半分になるというのである。

世界の昆虫に関して科学的レビューがなされたのはこれが初めてだというが、緊急に対処しなければならないレベルであることは言うまでもない。虫の総数が半分になれば、虫を食べる生き物の数は半分以下にならざるを得ない。食物連鎖においては一般に下位のものほど個体が小さくて個体数が多く、連鎖の上に行くほど個体数が少なくなる傾向があるからだ。

地球における陸地面積のうち約40%が農地として使われている。論文では虫の減少が始まったのは1950年から60年代だが、ネオニコチノイドとフィプロニルという2種類の殺虫剤が使われるようになってから減少率が急増したという。また一般に市販されているガーディング用のネオニコチノイド系殺虫剤は、農業用よりもずっと高濃度のものが使用されているともいう。

地球はこれまで5回、大量絶滅が起き、今世紀になってからは6回目が始まっていると言われてきた。この研究論文は、人間が食糧生産の方法と自然への接し方を変えない限り、地上で最も数多くいる虫たちがあと数十年で死に絶え、地球のエコシステムにとって大変なことが起きるとしている。人類の存続のためにも有機栽培への転換を各国の政府主導で、または世界のプロジェクトとして行うべきだろう。