No. 1248 傲慢な「米国第一主義」

2月末にベトナムのハノイで行われた米国と北朝鮮の2度目の首脳会談は合意に至らず破談に終わった。

破談後の記者会見でトランプ大統領は、北朝鮮側が核施設の一部破壊の見返りに対北制裁の全廃を要求したと説明したが、この後北朝鮮外相は、国連制裁決議のうち「民生分野に支障を来す項目だけ」を先に解除するよう求め、米国が同意すれば全ての核施設を米専門家の立ち会いの下で永久に廃棄すると提案したと述べている。

国連制裁により北朝鮮は、灯油やガソリンなどの石油関連製品や産業に必要な機械や車両の輸入ができず、また鉱物資源や生産した繊維製品、工業製品などの輸出もできない。さらに米国は、北朝鮮が関係する企業と取引している金融機関は米国の金融機関と取引できないという制裁も科しているため、北朝鮮は窮乏しているのである。

現実は北朝鮮が核兵器を保有したまま南北は和解し、38度線の軍事対立は解消している。制裁が解除されれば経済支援や投資が再開され、北朝鮮の経済発展が始まるのは時間の問題だろう。破談は米国と北朝鮮の対立を望む軍需産業界や政治家のためにトランプ大統領がとった時間稼ぎかもしれないが、北朝鮮の窮乏は続くのである。

米国の制裁対象は国家に限らない。国際刑事裁判所(ICC)が米国民への起訴を実施するならICCに制裁を科すことをトランプ政権は明らかにしている。ICCは国際的な罪を犯した個人を訴追、処罰することを目的に2002年に発足したが、米国は当初から参加してはいない。

ICCは、アフガニスタンで米軍関係者が拘束者を虐待した疑いについて起訴を検討しており、それに対してボルトン米大統領補佐官は自国民を守るために米国は何でもする用意がある、ICCは米国の主権と国家安全保障を脅かしており、米政権は「合衆国憲法を超越した権威を認めない」と語ったのである。

米国は他の国に命令はするが、他の国が国内政策、法律、外交に口出しすることは許さない。世界に平和を推進する米国の判断はいつも正しい。だから米国に従わない国には制裁を科す。今、ロシア、イラン、イラク、シリア、リビア、ベネズエラ、キューバなど20カ国近くの国に資産凍結や米ドル建て取引の禁止などの制裁措置をとっている。特にイラン、中国、ロシアは民主主義、自由主義の国際秩序を乱す敵対勢力なのである。

トランプ大統領は温暖化対策の枠組みであるパリ協定やイラン核合意から離脱し、国連人権理事会やユネスコといった国際合意からも離脱している。歴史的にも米国が積極的な国際機関は米国が主導権を握って動かすことのできるIMFや世界銀行、NATOだけであったが、トランプ大統領のあからさまな「米国第一主義」でその傲慢さがより明白になった。

日本は1941年、ルーズベルト大統領によって対日石油禁輸という経済制裁を受けて戦争に突入し、敗戦後はひたすら米国に追従し、制裁を免れてきた。しかし日米貿易交渉が開始されれば米国の理不尽な市場開放要求が始まるだろう。米国の外交政策は70年以上変わっていないのだ。