米ゼネラルモーターズの工場閉鎖やフォードの人員削減などが報じられる中、日本のトヨタ自動車が米国内に約830億円を投資して車両工場を設立すると発表した。この事業拡張に伴い、約600人の新規雇用が予定されているという。
トランプ政権は貿易赤字の解消が米国の産業と雇用のために必要だとして、鉄鋼やアルミニウム、中国からの輸入品などに関税を課し、自由貿易から一転して保護主義的な政策をとっている。トヨタの計画は、米国に工場を造らないのなら多額の国境税を払えと以前から主張してきたトランプ政権に対応したものであろう。しかしその一方で、ロイターによると米国企業は2018年、過去最高数の産業用ロボットを導入したという。
高度な作業を行うロボットの出荷台数は3万5880台と、2017年より7%の増加となった。これまでほとんどの産業用ロボットを利用していたのは自動車産業だったが、昨年は非自動車産業で1万6702台が導入され、食品や消費財の生産現場での増加が著しかったという。食品工場では商品の箱詰めなど、正確な作業を素早く反復するのは人手によるライン作業よりもロボットの方が適しているし、ロボットが食材を自動認識してこれまで人がしていた盛り付け作業を行えば、訓練も不要で労働者の退職リスクも考慮しなくて済む。
米国自動車産業は世界に先駆けて産業用ロボットを導入し工場の自動化を推進してきたが、他の業界もそのメリットを理解し、大手だけでなく中小企業や小規模の工場でもロボットの導入が広がり始めたのである。トランプ政権が雇用を取り戻すための貿易政策をとっても、仕事はロボットにとって代わられるというわけだ。
自動化といえば昨年10月にインドネシア、3月にはエチオピアでボーイング社製の旅客機が墜落した。システムが誤作動を起こしたがパイロットが自動制御から手動に切り替えることができなかったのが原因とみられている。実際のところ飛行機は数十年前から自動飛行システムが実用化され、離陸後は高性能コンピューターによるオートパイロット(自動操縦)で運転されてきた。それがパイロットから現実の条件下で操縦の経験を積む機会を奪い、今回のようなシステム誤作動という緊急事態において適切な対処ができず、事故につながったという見方もできる。
パイロット不足に対応するために人工知能(AI)の開発も進んでいるというが、機械が誤作動した場合にそれを解決するパイロットは必ず必要となる。しかし既にシステムの大半が自動化されているために、新人のパイロットであるほど手動コントロールに慣れていないという問題もある。人間とロボットの共存は既に現実となったが、失業問題や安全性など、新たな問題の発生は避けられそうもない。ロボットによって人的ミスのリスクは取り除かれても機械もまた万能ではないからだ。