高齢者の暴走運転による痛ましい事故が起きた。交通事故による死者が減少している中で、高齢者による死亡事故の割合が増えている。
少子高齢化により75歳以上の運転免許保有者数はこれからも増加していくだろう。しかし地域によって自動車は必要不可欠な移動手段であることから法的に制限することは難しいとされ、また若者の車離れが起きている中で、自動車メーカーにとって大切な顧客である高齢者に離れられたら困るという現状もある。
若者の車離れは日本に限ったことではない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、車が欠かせない米国でも若者の車離れが進んでいるといい、若者の新車購入者数が過去に比べて落ち込んでいるのはカーシェアリングの普及などもあるが、最大の理由は日本の若者の車離れと同じく経済的な問題だという。
米国の若者の場合は学資ローンで4千万人以上の学生が借金を抱え、負債額は100兆円以上、米国の自動車ローンやクレジットカードを上回る。多くの学生は借金を抱えて大学を卒業し、仕事につけたとしてもローンを返済しながらの生活は容易ではない。公共交通機関がほとんどない米国で倹約のためにカーシェアリングなどのサービスを利用するのも必要に迫られてのことで、若年層の貧困化がもたらした社会現象なのだろう。
米国政府発表の失業率は4%以下でも、実際の失業率は20%を超えているという統計もある(ジョン・ウィリアムズのShadow Government Statistics)。なぜなら政府統計には仕事を見つけることをあきらめた何百万人もの労働者が数に含まれてはいない。製造拠点は海外へ移転され、大型店の進出により多くの中小零細企業は廃業に追いやられた。地域社会から産業がなくなればその中で循環するお金もなくなり、若者が職を求めて離れていってしまう場所に未来はない。中間層に収入をもたらす産業の仕事がなく、あるのはパートタイムや、国外に移転することのできない大半が低賃金のサービス業というのがここ30年間の米国の構図なのだ。
これは日本も同様である。米国政府の要求に従い、平成になって大型店出店の規制を緩和し、12年には規制が廃止された。これにより郊外で大型店が増え続け、多くの地方の中心市街地で商店街の店舗やスーパーが閉店、町がさびれる事態となっている。またサラリーマンの平均給与は平成9年の467万円をピークに29年は432万円にも下がっている。それもそのはずで30年前には労働者の19%、817万人だった非正規雇用が今では37%、2036万人にも増えている。非正規雇用の平均給与は175万円なのだ。
1947年には50年だった日本の平均寿命は今や83年と長寿を誇る国となり、天皇陛下がご高齢を理由に譲位されて令和が始まった。高齢化、雇用、貧困、そして失われた30年の問題に取り組むためにも大きな社会体制の変革が必要だ。さもなければ日本という国全体が過疎の村のようになってしまうだろう。