No. 1261 気候変動は人為的でない?

これまでに何度か気候変動の話題を取り上げてきた。今年は7月には日本各地で記録的な日照不足となり、東京では過去50年間の記録に並ぶ寒さだったが、梅雨明けと共に日本全国で猛暑が続いている。

世界を見渡すと、平年この時期気温14度くらいのアラスカが20度を超えたり、シベリアでは平年気温を10度以上上回ったりするなど、高温の地区も多い。また鹿児島が異常多雨となった一方で、韓国や中国東部では異常少雨が続くなど、地球全体でバランスをとっているようにも見える。

そんな折、気候変動は人為的な要因によるものではない、すなわち人間が排出する温室効果ガスによって起きているのではないという報告書を、フィンランドのトゥルク大学の研究者が発表した。化石燃料燃焼による二酸化炭素はわずか0.01度しか気温を上昇させていないため、それが地球の気温に影響を与えていることを実証する証拠はなく、その代わり地球の気温を実質的にコントロールしているのは、「低い位置にある雲の量」だというのである。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候モデルは、自然の要素を考慮してこなかったために、温室効果ガスの影響を過大なものとした。しかし雲の量と地球の気温の関係をみると、雲量が増えると気温が下がり、雲量が減少すると気温が上がると報告書は結論づけている。

この論文はまだ発表されたばかりで、科学界で同じ分野の別の研究者によるピアレビューはなされていないようだが、これが正しければ各国政府による温暖化への取り組みは意味をなさなくなり、当初から人為的な地球温暖化はないとしてオバマ政権時代の温暖化対策を撤廃する大統領令にサインしたトランプ大統領が正しかったことになる。

さらに同時期、神戸大学の研究グループが、気候変動の原因に宇宙から飛来する高エネルギー粒子(宇宙線)が及ぼす証拠を発見したと発表した。宇宙線が増えれば下層雲が増え、宇宙線が減れば下層雲も減るので逆日傘効果で温暖化が起こる可能性があり、現在の地球温暖化を理解する上で宇宙線がもたらす雲の日傘効果は重要だと結論づけ、フィンランドの研究を裏付けるようになっている。

米国ではオカシオ・コルテス下院議員らが、温暖化対策の決議案「グリーン・ニューディール」を発表し、今後10年以内に米国内電源を二酸化炭素排出量ゼロの再生可能エネルギーに100%切り替え、製造業および農業での二酸化炭素排出量削減、住宅および建物のグリーンビルディング化等々を掲げている。しかし二酸化炭素が原因でなければグリーン・ニューディールは誤ったデータに基づいて社会を大改革することになる。

1993年、日本は冷夏のため凶作に陥った。高温でも冷夏でも、異常気象による食料不足は今後も不可避であり、成り行きをみてから行動を起こすのは賢明ではない。原因が何であれ、結果としてもたらされる事態への対策を講じることは必須である。