香港では6月ごろから、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案をきっかけに大規模な抗議デモが起きている。
8月には香港国際空港でデモ隊と警察が衝突し、座り込みデモが暴力に発展した。これに対して米国のトランプ大統領は、中国政府が中国本土と香港との境界沿いに軍部隊を移動させているとの情報があることなどから、中国は香港に約束された「一国二制度」を崩壊させることを懸念しているとコメントしたという。
ここで歴史のおさらいをしよう。イギリスはインドで製造したアヘンを清に輸出し、巨額の利益を得ていた。アヘンのまん延に危機感を募らせた清王朝がアヘンを禁輸するとアヘン戦争が起き、イギリスの勝利に終わった。その結果、清朝は香港島と九龍半島の南端部をイギリスに割譲、その後1898年にイギリスは九龍半島の残りの部分(新界)を99年の期間で租借し、これにより現在の香港地区が形成され、イギリス資本主義の下、香港は貿易や金融センターとして発展した。
1980年代、中国政府はイギリスに対し、租借期限が1997年に満了する新界だけでなく、アヘン戦争で割譲された香港島と九龍半島南端部も返還するよう要求し、返還されることになった。条件は「香港特別行政区」として現行の法律や社会、経済制度は基本的に変えない、財産や投資も法律による保護を受けるなどで、これが2047年までの50年間、中国共産党支配とは異なる別の制度を維持する「一国二制度」である。
「香港の若者の抗議活動を武力で威嚇する強権的な中国」と欧米や日本のメディアは報じているが、世界の中でも多忙なハブ国際空港である香港空港が閉鎖されたのだ。もしデモ隊がヒースロー空港やJFK空港を占拠し、飛行機の運航を止めたら米英の警察はどうするだろうか。デモ隊を逮捕し、米国ならその場で射殺もあり得るだろう。
イギリスの植民地だった香港は1997年、中国に返還された。2047年の完全統合まで、特別行政区としての自治権はあるが、主権は中国にある。そして中国は自国の法と秩序を守る権限がある。フランスで、イエローベストのデモ隊に警察が催涙スプレーを使い失明者も出ているのに弁明しないマクロン大統領のように、香港市民の抗議運動をどのように対処するか、中国は米英に説明する責任はない。
香港のデモを裏で米英が資金提供をして操っている証拠はない。英国旗を掲げていたデモ隊は、中国に統一されるよりも再び植民地化されることを、心から望んでいるのかもしれない。イギリスの教育を受けて育った香港人は、欧米同様、中国についてネガティブな情報しか教えられず、中国人としてのアイデンティティーなどないからだ。
香港の政治的紛争は、その土地の人々が対話と平和的手段によって解決すべきことである。中国政府は公共の秩序を確保する権限を持っている。欧米諸国が中国政府の国民への態度を批判するなら、同じことを自国でも適用するべきだろう。