防衛省は8月末、2020年度軍事費として、総額5兆3223億円と過去最大の予算の概算要求を発表した。第2次安倍政権になって以来、毎年軍事費は膨張し続けている。
日本が軍事費を増やす理由の一つは、悪化する韓国との関係にある。中国に貿易戦争を仕掛けた米トランプ政権と同様、安倍政権も貿易関係において韓国に制裁を加えた。その対抗として韓国は日本との諜報分野での協力協定を破棄してきた。
一方で、昨年は北朝鮮が「ミサイル」を発射するたびにJアラート(全国瞬時警報システム)を使い、避難訓練を呼び掛けて危機をあおっていた安倍政権だが、今年は北朝鮮が発射した物体を「飛翔体」と呼び、Jアラートの出番は一切ない。トランプ大統領と金委員長の首脳会談により、日本への危険は去ったと言わんばかりだ。
5兆円を超す巨額の軍事費は日本に貿易赤字削減を迫るトランプ大統領に対する安倍首相の配慮と言われるのも無理はない。なぜなら予算を大きく押し上げているのは米国製の高額装備品の購入で、護衛艦「いずも」を空母化して導入する米ロッキード・マーチン社製のステルス戦闘機F-35Bは、6機で846億円に上る。2023年度までに、日本政府は18機のF-35Bを導入する予定だという。
問題はF-35戦闘機の性能である。4月に自衛隊三沢基地を飛び立ったF-35Aが墜落し、操縦者が平衡感覚を失った状況となって急降下したことが原因である可能性が高い、ということでF-35の欠陥ではないかのようにこの事故は終わっているが、機体に問題があることは米国でも報告されている。
さらに、フランスのDefense-Aerospace.comによれば、「2023年までに納入される輸出用F-35の74%は、旧式の製品」になるという。つまり日本が2023年までに導入するという18機のF-35の多くは20年以上も前に設計されたセンサーを使用しているため、性能も使用できる攻撃兵器も限られている問題の多い機体である。しかも2023年以降に提供される新型も、防衛装備品は数多くの運用評価試験があるためそれに合格することが前提なのだ。
米軍に古い機体が納品されても、問題はそれほど深刻ではない。数多くの戦闘機を運用しているので飛行訓練に使用したり機体の部品をスペアとして利用したりすることもできるという。しかしF-35を唯一の戦闘機として輸入する日本や他の同盟国にその選択肢はない。2023年になって新しいセンサーが利用可能になった時に、それを組み込むために新しいコンピューターとメモリーが必要となり、そのためには高額なアップグレード費用が発生する。
つまり2023年までに日本は18機の旧式のF-35を米国から購入するが、アップグレードをしない限り高性能の対空ミサイルなどは使用できないということになる。
旧式機の購入だけでなく、安倍首相は憲法を変え、首相を自衛隊の指揮者として米国の戦争に「集団的自衛権」という名目で参画できるようにしようとしている。民主主義の国で、選挙で選ばれたリーダーが独裁者としてふるまっているのが今の日本なのだ。