昨年12月、中国が2020年の経済成長率目標を6%前後に設定したという報道がなされた。
米国の2019年の経済成長率が2.3%、日本に至っては1%にも満たなかったことを考えれば、中国経済は米国との貿易問題や投資抑制策によって減速したものの、大きな失速はしないというのが中国政府の方針のようである。
しかし日本のメディアやアナリストは、中国の自動車市場の不振や対米輸出の減少、インフラ投資の見直しによる資金繰り問題などから中国経済は低迷するという悲観的な予測をしている。日本でも1980年代、自動車などの輸出で米国と激しい貿易摩擦が起きた。対日貿易赤字は日本市場の閉鎖性によるものだとして米国はスーパー301条を適用して日本製品を排斥し、その後米国通商代表部の指示通りに作られた「前川レポート」により日本は財政赤字の拡大と規制緩和、民営化を行った。それ以降、日本経済は低迷し、「失われた30年」の今に至っている。
しかし中国と日本とでは状況が大きく異なる。欧州と陸続きの中国は、欧州との関係を外交上の優先課題とするとして米国への依存を減らし、欧州やロシアとの関係を強化していくと表明した。2021年には「一帯一路」も正式に完成する。一帯一路の規模とそれにかかる莫大なコストを考えれば、あと10年くらいたたなければその構想が成功か否かは判断できないが、どんな横やりが米国から入ろうとも中国は日本政府のように素直に米国の言いなりになることだけはないだろう。
日本が直視すべきは中国の台頭よりも、日本政府が宗主国と仰ぐ米国の没落である。もはや貿易戦争で米国の勝ち目はない。2006年、中国の貿易相手国は世界70カ国で、米国は127カ国だったが、2011年に逆転し、中国124カ国、米国の相手は76カ国に減少している。世界の港湾別コンテナ取り扱い個数ランキングでも中国には227の港湾があるが米国は26しかない。さらに世界で最も利用されている10の港湾のうち七つが中国である。工業生産額でも中国は2014年に米国を追い越し、今では米日独の3カ国合計に等しい。
米国や日本が直視したくない中国の実績は他にも数多くあるが、すでに経済発展を遂げていた1980年代後半の日本とは違い、1人当たりGDPは米国の6分の1と中国は発展途上にあり、まだ伸びしろがあるということなのだ。だから中国は日本のように、または米国との覇権競争で崩壊したソ連のような道をたどることはないのである。
皮肉なことに中国に貿易戦争をしかける超大国こそ、負債総額が22兆13億ドルという前代未聞の借金を抱えながらシリアやアフガンを攻撃し続け、議会は大統領を解任(弾劾)するという混乱の中にある。この米国の現状を目にしながら日本政府の対米従属がこれからも変わらないとしたら、その政治家を選挙で選び続ける国民の責任以外なにものでもない。