世界保健機関(WHO)がコロナウイルスによる新型肺炎の地域別の危険性評価を最高レベルの「非常に高い」に引き上げ、日本政府は感染拡大を防ぐために春休みまで全国の小中高校と特別支援学校の臨時休校を要請した。
学校の一斉休校は突然すぎる、重篤化するのは高齢者が多い上、子供に流行していないのになぜ、といった意見もあるが、子供はウイルスに感染しても症状が軽いため動き回ることでさらに感染を広げてしまう可能性がある。そして中国で感染が沈静化したのは、中国政府が感染を止めるために5千万人以上が住む武漢と湖北省全域を早期に封鎖したことにあると言われている。
本来ならば1月末に新学期が始まるはずだった中国では、半月以上遅れて2月半ばに「国家クラウド学習プラットフォーム」が始動した。登校を禁じられている生徒たちが自宅で学習できるオンライン授業である。中国政府は新学期延期を決定するとすぐにオンライン授業に切り替える方針を打ち出し、授業教材は既にオンライン授業を取り入れていた北京大や上海大の付属小中学校の協力も得て作られたという。
中国のインターネット利用者は8億人を超す。農村部などインターネットが普及していない地域や、貧困のためにインターネットを利用できない学生には、中国政府は国営テレビを通じて関連授業の放送が行われるようにするという。日本でも有料の教育コンテンツを無償提供する企業が出てきているが、日本政府からこうした対策がなされるという話はまだ聞かない。
また中国では、人が密集する鉄道や地下鉄駅では非接触赤外体温計で体温測定を行うなどの感染予防措置もとられている。日本でも市中感染とみられる例が相次ぐ中、満員電車を避けるための時差通勤の導入や在宅勤務への切り替え、入館時に検温を義務付けるオフィスビルなども出てきたが、全体から見ればまだ一部にすぎない。
同じく感染者が出ている米国では、新型コロナウイルス対策担当に任命されたペンス副大統領は「国民が感染するリスクは非常に低い」と述べたという。この冬インフルエンザで既に2万人以上の死者が出ていることに比べれば特に憂慮すべきではないということだろうか。しかし新型コロナウイルスの感染拡大で株価が暴落し、景気悪化を食い止めるとして米国政府は政策金利を0.5%引き下げる緊急利下げを行い、日本政府も株価を支えるために3月2日から1週間の間に上場投資信託(ETF)を過去最大規模の3千億円買い入れた。日米政府にとって最優先の新型コロナ対策は資本家、株主救済にあるのだろう。
このような中で我々ができることは、しっかり手指洗い・消毒を行い、他人との距離を保ちイベントなど密閉された空間で長時間過ごすのを回避するに尽きるだろう。そしてデマに惑わされることなく冷静に対応することである。中国では新規患者は減り、生活も徐々に戻りつつあるという。中国でできたことは日本もできるはずだ。