No. 1286 世界恐慌以来最悪の景気後退

IMFは4月14日、2020年の世界経済成長率は新型コロナウイルス感染拡大の影響によりマイナス3%になるとの見通しを発表した。

2008年の金融危機を上回る、世界恐慌以来最悪の景気後退だという。国別では米国がマイナス5.9%、日本はマイナス5.2%、中国はプラス1.2%になるとしている。今年後半に感染が終息すれば2021年は回復するだろうと予測しているが、終息しなければさらに下回るおそれがあるという。

感染は世界の国々に広がり各国で異なる措置が取られている。日本は1月末に中国の急速な感染拡大や都市封鎖という厳しい措置を見ていながら、オリンピック延期の決断の遅れにより対応が遅れた感がある。しかし先例のない新型ウイルスとの闘いは、誰が指揮者でどんな対応を取っていたとしても、それが正しかったかどうか賛否が分かれるところであろう。

早々に新型コロナの拡散を抑え込んだ中国では、感染の再拡散を防ぐために無症状感染者の管理を始めている。新興宗教のイベントで感染が爆発した韓国では、検査と、海外帰国者や感染者との濃厚接触が疑われる場合に自宅隔離を徹底することで感染広がりの抑制に成功し、1日当たりの新規感染者数が1桁台まで減少している。

中国と韓国は感染経路追跡のためにスマホGPSやクレジットカード履歴のアクセスなどを利用し、調査に協力しなければ罰則など厳しい防疫制度をとっている。日本では個人のプライバシーの尊重という問題から同じように強力な措置を取ることは難しいかもしれないが、疫病による社会的コストを考えると抑え込みに成功した方法の導入が必要かもしれない。

一方で感染の新たな中心となった米国では死者が5万人を超えた。世界一のGDPを誇る経済大国でありながら、新自由主義を追求してきた結果、高額な医療費、数千万人の無保険者、世界一の刑務所人口にホームレス、オピオイドなど麻薬のまん延する米国は、軍事費に70兆円をかけていても、ウイルスには脆弱な社会だったことが露呈したのである。

すでに大半の経済活動が事実上止まっていることで米国には大量の失業者が出ている。この1カ月で失業保険申請数は2200万件にも上り、支援団体が提供する食料を求めて仕事を失った人が長蛇の列を作っている。感染症が発生する以前にも米国は人口の約12%、4千万人が貧困状態にあった。貧困層の多くはサービス業に従事していたためテレワークに移行できず、新型コロナで職を失った。

ミシガン、オハイオ、ケンタッキーなど多くの州で知事が発令した厳しい外出制限に対し、感染拡大に対して過剰反応であり行動制限が続けば経済は致命的な打撃を受けるとして、住民が怒りの抗議行動を起こしている。自由主義の原理である個人の自由と自己責任を標榜する国なら当然だろう。トイレットペーパーの買い占めと同時に米国では銃器や弾薬を買い求める人が相次いだ。活動制限が続けば、これまで外に向けていた暴力が国内に放たれるかもしれない。