No. 1297 目指す世界経済の再構築

今年3月、米金融大手ゴールドマン・サックスは新型コロナの悪影響で米国の4~6月期のGDPが前期比34%減になると予測した。そして7月末、米国のGDPが発表され、ほぼ予測通り過去最大の32.9%減という落ち込みとなった。

日本の4~6月期のGDPも年率で27.8%減と、リーマン・ショック後の下落を超える戦後最悪となっているが、米国の景気後退はそれを上回る。米国の主要メディアは頻繁に「中国経済が崩壊する」と報じているが、中国政府が7月に発表した同期間のGDPは前年同期比3.2%増と新型コロナの影響でマイナス成長だった前期の6.8%減から一転してプラス成長となった。北京などで感染者がみられるが中国全土では収束傾向にあり、経済活動も本格的に再開している。

日本もコロナ禍でさまざまな問題が起きているが、米国社会は末期的な状態にある。公衆衛生の危機、失業者の急増、そして社会不安は広範囲に及び、これら全ての危機が政治的利益のために操作されている。トランプ大統領も攻撃を受けている一人であり、またトランプ政権以前の民主党時代に、移民法と自由貿易政策によって失業や貧困に追い込まれた、トランプ氏を支持する主に白人の労働者も同様である。

トランプ氏は「アメリカ・ファースト」を打ち出して大統領になった。就任後すぐにシリア難民の入国を禁じ、オバマ政権時代は数万人単位で受け入れていた移民や難民政策を一転させたり、「世界の警察官」をやめると明言し7月にもドイツに駐留する米軍約1万2千人を撤退させると発表した。民主党が推進してきた自由貿易については、米国内の仕事が中国に奪われたのは自由貿易のせいだとして関税を上げ、それが中国との貿易戦争になっている。

そんなトランプ政権を何としてでも終わらせたいのが民主党、正確にいえば国境線の撤廃とヒト・モノ・カネの自由な移動を求めるグローバリストたちであり、トランプ氏が統治能力に欠けるリーダーであることを示すために米国社会に暴動と略奪が起こされている。トランプ氏が人種問題で国民を分断させる悪人として常に描かれるのも、主要メディアがグローバリストの支配下にあるからだ。

グローバリズムは多国籍企業がボーダーレスに資本の流れを支配し利益を求めて自由に投資ができる世界であり、アメリカ・ファーストというナショナリズムはその大敵なのである。トランプ氏を排除した後にグローバリストが目指しているのは世界経済の再構築、「グレート・リセット」だろう。グローバリストの総本山ともいえるダボス会議が選んだ2021年のテーマであり、より多くの富をエリート層に流すために経済モデルを変えることである。そしてパンデミックの恐怖を誇張することで人々の親密さを妨げ、孤立させ、失業者は生きるためにわずかな賃金でも働くようになる。

今米国で起きていることはこのための条件づくりだ。ゴールドマン・サックスのGDP予測が的中したのではなく、計画通りに事が進んでいることの表れかもしれない。