No.1301 政府はコロナ禍の国民守れ

新型コロナウイルスの感染拡大速度が低下したため、観光需要の喚起策として10月から東京も「GoToトラベル」の対象地域となった。

民間信用調査会社の帝国データバンクは、9月半ば時点で新型コロナの影響による企業倒産件数が累計で500件を超えたと発表した。しかしこの調査には小規模倒産や廃業は含まれていないし政府や自治体の各種支援策に頼って経営を維持している企業もあり、新型コロナによる景気悪化は予断を許さない状況だ。

飲食業、アパレル関連、宿泊業などの経営が悪化しているが不動産業界にも影響が及んでいる。都市部にオフィスを構える企業がテレワークを進め、オフィスマーケットへの需要が懸念されるためだ。在宅勤務が増えてもすぐにオフィスの契約解消ということはないだろうが、長期的な鈍化は避けられないかもしれない。

さらに「国家戦略特区諮問会議」のメンバーであり自民党政権と強いつながりを持つ竹中平蔵氏が取締役会長を務める人材サービス大手パソナグループは、本社機能を東京千代田区から兵庫県淡路島に段階的に移転することを明らかにしている。これはコロナ禍によるものではなく、竹中氏が推進してきた地域活性化総合特区指定を淡路島が受けているため、さまざまな補助金や税制などの優遇措置を受けられるためだ。

竹中氏は7月に「ポストコロナの『日本改造計画』 デジタル資本主義で強者となるビジョン」という本を出し、安倍氏を継いだ菅政権はそれに合わせるようにデジタル庁の創設を発表しており、パソナの動きをまねる企業も出てくるだろう。

最初に新型コロナ危機に陥ったが最も速い回復を成し遂げ、2020年通年では主要国で唯一プラス成長が見込まれる中国を除いては、軒並みどの国も経済が低迷しているが、中でも米国は飲食業や小売り、輸送、観光業などで多くの企業倒産が起き、コロナ禍に加えて人種差別問題による暴動、略奪で社会は混乱状態にある。

それにもかかわらずニューヨーク市では民主党の市長が警察の予算を大幅に削減すると発表し、さらに密を避けるためホームレスをシェルターから市内のホテルに移動させ、マンハッタンのある地区では数百人のホームレスを受け入れるなど、住民の間では麻薬患者や精神障害者などを含むホームレスの受け入れで治安の悪化を懸念する声が出ている。またシアトルやポートランドなども同様に民主党の首長が警察予算を削減する一方で略奪行為を容認して市民を不安に陥れているとトランプ大統領が非難している。米国の混乱は11月の大統領選挙に向けて深まるばかりだ。

首相に就任した菅氏は早速トランプ大統領と電話会談し、日米同盟を一層強固にすることや新型コロナ対策での協力を約束したというが、自国民を守れない米国に期待などすべきではない。日米同盟とは米国の戦争に日本が加担することにすぎず、政府はコロナ禍の影響を受けた日本国民の暮らしを守る政策に真っ先に取り組むべきだろう。