中国のICT企業ファーウェイと半導体産業をつぶすために米国が仕掛けたハイテク戦争で、米国の旗色が悪い。
ファーウェイは5G通信だけでなくパソコン分野でもシェアを広めつつある。またトランジスタが誕生してから集積回路基板の原材料はシリコンだったが、今ではカーボンチップの技術開発が進み、中国の目覚ましい進展が注目されている。米国は制裁という手段で中国企業を市場から追放しようとしているが、息の根を止められない限り、たたけばたたくほど強くなる相手にけんかを売ってしまったのかもしれない。
2015年、中国は「製造強国」を目指し、今後10年間の製造業発展のロードマップを「メイド・イン・チャイナ2025」計画として発表した。そこには製造業のイノベーション能力向上として、次世代情報技術、高度なデジタル制御の工作機械とロボットなどの重点分野が盛り込まれている。
米国の制裁は短期的にはファーウェイのスマートフォン事業を妨げても、長期戦になればこの計画が進行して中国は台湾や韓国、日本の製品と同等かもしくはより高品質なチップを生産するようになるだろう。世界トップの半導体生産能力を持つ台湾と中国とは技術者の間にコミュニケーションの問題がないということも重要な点である。
5G に関して中国は市場規模も世界最大である。ジェトロによれば5Gの基盤となる中国の4G携帯ユーザー数は今年5月末時点で12億7933万に達し、5Gのユーザー数も3月末時点で既に5千万を超えている。さらに5G関連の特許出願件数(2020年1月時点)でも1位はファーウェイ、2位は韓国のサムスン、3位は中国のZTEだった。
ICT産業の中心が東アジアにシフトしていることはもはや疑う余地はない。RCEP、東南アジア諸国連合加盟に日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを含めた国で自由貿易を進める協定も署名された。日本にとってもRCEP参加国との貿易は全ての貿易取引の半分を占めるため極めて重要であり、参加していない米国には大きな打撃を与えることにもなるだろう。
中国と韓国の間ではすでに自由貿易協定の第1弾が発効され、現在はサービスや投資といった第2弾が進行中である。日本と中国の自由貿易メカニズムは米国の介入により、そう簡単には作られることはないだろうが、「メイド・イン・チャイナ2025」のゴールは2049年、中華人民共和国建国100周年に製造強国のトップになることである。日本が政策転換する時間は十分にある。
米国政府やメディアの激しい反中国プロパガンダにもかかわらず、米国主導で2003年にイラクを侵略した時と異なり米国を公式に支持する国は少なく、支持している国のほとんどは西側でかつて世界中に植民地を作ってきた国だ。そしてアジア、アフリカ、南米など西側の侵略の犠牲になった国々は中国支持に回っている。中国と東アジアの台頭は西洋の覇権主義の終焉を告げる出来事になるかもしれない。