No. 1307 各国政府の協調が重要

民主国家の手本であるはずの米国で1カ月以上たっても大統領が決まらない間に、世界では大きなサミットが四つ開催された。

一つは東アジア地域における自由貿易協定であるRCEPであり、この締結は中国に対して強硬な姿勢をとる米国にとって看過できないものであったことは間違いない。もう一つはオンライン開催されたBRICS首脳会議である。議長国はロシア、それに中国、インド、ブラジル、南アフリカの5カ国が、コロナ禍において中国とロシアが開発したワクチンの安価で公平な供給をすること、そして世界経済の回復に向けて連携して主導的な役割を果たすことを前面に打ち出した。また内政干渉や保護主義に反対することなど、明らかに米国に対する姿勢も共同宣言に盛り込まれた。

菅首相、トランプ大統領、習国家主席ら21カ国・地域が参加したアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議もオンラインで行われた。ここでもポストコロナに向けた対応が議論された。保護主義的な貿易政策をやめて自由な貿易によってコロナで打撃を受けた経済を支援することの重要性を確約し、トランプ大統領もAPECの平和と繁栄の追求に向けた米国のコミットメントを表明したという。

そして11月21,22日にはサウジアラビアが議長国となってG20サミットがオンラインで開催され、新型コロナワクチンの安価かつ公平なアクセスを確保するという表明がなされた。また気候変動問題に関して日本を含むG20諸国の半数が2050年までに脱炭素社会の実現を含め環境問題のための取り組み、最貧国の債務問題解決への対応など、今後G20は一層協力していくことがこれまでになく必要だという声明がなされた。

これら四つのサミットのアジェンダはどれも、ポストコロナの時代に重要なのは協調であり、各国協調により人々の安全と地球を守ることだった。四つのサミットに参加した中国は、G20において、ワクチンを公共財とみなし途上国にも支援と協力を行うと述べ、また感染症を予防しながら安全に国々を往来するために各国で独自に発行し、国際的に通用する「QRコード形式」の健康コードの構築を提案した。

この中国の多国間協調政策とは対照的に、世界の超富裕層や国際資本からなるダボス会議がコロナ後の「テクノロジーによる監視」として提唱しているのが世界共通の電子証明書「コモンパス」の発行である。これを開発しているのはロックフェラー財団が資金を提供するコモンズ・プロジェクトで、国境往来時にコロナの検査結果(将来的にはワクチンの接種履歴)が必要になるという。ダボス会議という国家の代表でもない民間人が決めたシステムが世界に強制されれば、海外渡航そしていずれは国内の移動も制限されるようになるだろう。コロナ禍は超富裕層たちの手による「グレート・リセット」ではなく、世界の各国政府の協調によって乗り越えなければいけない。