2019年12月、新型コロナの最初の感染例とされる肺炎が中国湖北省武漢市で見つかった。あれから1年、世界は「新型コロナ」に翻弄され続けている。
国によって状況が異なる中、検査体制の拡充や死者数の少なさからドイツはコロナ対策の優等生とされてきた。しかし昨秋から感染者数が増えたとして部分的な封鎖を導入し、それによる経済的打撃と行動制限を強いられる国民からの反発が強まっている。同時に起きたのがメルケル政権の感染症対策アドバイザリーグループによる検査や、それを提唱する教授に関するスキャンダルである。
イギリスでは都市封鎖によって、例年に比べて心臓病や認知症などの病気により自宅で亡くなる人の数がこの半年で増えているとBBCは報じたが、日本でも昨年自殺者数が急増した。長期化するコロナは世界中に影響を及ぼしている。封鎖措置は最初中国政府が昨年1月23日から2カ月半にわたり武漢でとった対策だが、それに倣って欧米諸国でも、驚くほど速く導入されたPCR検査結果に基づいて、企業や学校、人々の集まる場所を緊急に封鎖することを義務付けてきた。
ベルリンのシャリテー病院ウイルス学研究所のドロステン教授が主導して武漢の新型ウイルス向けにPCR検査を開発したという論文を発表したのは2020年1月21日のことだった。死者数わずか数人の時点で、ドロステン教授は新型肺炎が世界的感染症になると予想したらしい。そのPCR検査は世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が推奨し、コロナに感染しているかどうかを調べる世界のプロトコルとなった。この論文に対してドイツで感染症専門家や科学者らがコロナ調査委員会を組織し、検査の欠陥を告発し、撤回を求めている。
感染症専門家が指摘する問題の一つは、診断方法が新型コロナとされるウイルス材料もないのに開発されたことである。さらにこのPCR検査ではプライマー(DNAの合成・複製に必要な核酸の断片)の取り方が不十分であり、結合温度が高すぎて不特定な結合を起こし、そのため新型コロナ以外のものも捉えてしまい疑陽性が増えるという。また論文の著者の一人は、これを基にPCR検査キットを製造した最初の会社の経営幹部という利益相反もある。これらの問題があるにもかかわらず、WHOやドイツ政府はこの論文を早急に採用してPCR検査を広め、都市封鎖と深刻な経済破壊がもたらされた。
日本ではインフルエンザで2018年には3325人が亡くなっている。毎年1千万人超がインフルエンザに感染するが、政府は会食や移動の自粛を呼び掛けたことなどなかった。そのインフルエンザシーズンに不確かなPCR検査を数多く行えば多くの陽性者が多く出るのは当然だろう。欠陥のあるPCR検査結果によって引き起こされた都市閉鎖によって被害を受けた全ての人々は、その損失に対して完全な補償を受ける権利があると主張するドイツコロナ調査委員会の司法的展開を注視したい。