1月20日、米国にバイデン大統領が誕生した。バイデン氏が獲得した票数は史上最多の8千万票を超えたが、トランプ氏の得票数も7380万票以上で史上2番目の多さであったという。
8千万人もの米国人に支持されたバイデン氏だが、その就任式にはホワイトハウスに2万5千人を超す米軍兵士を配備しなければならなかった。1月6日に起きた連邦議会での乱入事件のためだというが、アフガニスタンとイラクに駐留する兵士を合わせて5千人、その5倍以上とは驚きである。パレードもなく兵士に囲まれた厳戒態勢の中、花火が上がりハリウッドスターたちが祝福するという就任式は、それ自体が非現実のハリウッド映画のようであった。
米国ニュースメディア、ポリティコの行った2020年大統領選挙に関する調査によれば、共和党支持者の79%が選挙において民主党の不正が行われた、と信じているといい、バイデン氏に投票した有権者の12%が不正選挙のあったことに同意しているという。これとは別にラスムセンという調査会社でも、共和党支持者の61%が民主党は不正選挙を行ったと信じていると報じた。米国人の半数が支持していないからこそ、就任式を米軍が守らなければならなかったのであろう。
今回の大統領選挙では、主流メディアだけでなくビックテックと総称されるIT業界の支配的な企業、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブック、ツイッター、アップルなどが総出でバイデン陣営を支援した。SNSプラットフォームを提供するテック企業は、米国ではセクション230という法律によって第三者の発言に対して責任を問われることがないばかりか、攻撃的なコンテンツの制限ができることになっている。フェイスブックやツイッターはトランプ氏や共和党支持者のアカウントに対して検閲を行い、フェイスブックは大統領であったトランプ氏のアカウントを閉鎖し、ツイッターはアカウントを永久に停止したのである。
さらに自社のプラットフォームでコンテンツの検閲をするだけでなく、トランプ氏を支持する保守派から人気のあったパーラーというSNSに対して、アップルはアプリのダウンロードサービス「アップストア」から削除し、アマゾンは自社のクラウドサービスでのパーラーの取り扱いを停止し、トランプ支持者からコミュニケーションの場を奪ったのである。
10年前に起きた「アラブの春」ではエジプト政府が電話やメールを検閲したため、民主化を広める場としてSNSが活用され、検閲のないフェイスブックで人々は民主化デモの場所や時間を伝えあった。その同じ企業が「多様性を支持する」と言いながら多様な意見を検閲し、排除したのである。意見を自由に述べられるのがシリコンバレーやハリウッドだけなら、抑圧された国民の反発は大きい。こうしてできた新政権が多くの兵士たちの警備を必要とするのはその反発の大きさを知っているからかもしれない。