No. 1319 新疆ウイグルの現地訪問

3月30日から4月2日の4日間、イランやロシアなど21カ国の外交官や上海協力機構の事務総長などが中国新疆ウイグル自治区を視察した。

米ポンペオ前国務長官は中国政府がウイグル人を「ジェノサイド」(集団虐殺)しているという声明を発表し、新疆ウイグル自治区では100万人を超えるウイグル人が強制的に収容され、女性には強制的な不妊手術が行われていると非難した。さらに新疆の綿花収穫でウイグル人が強制労働に動員されているという米シンクタンクの報告書をもとに、欧米各国が中国の当局者に制裁を発動するなど圧力を強めている。

こうした「ジェノサイド」「強制労働」の批判を中国側は「ばかげている」と否定し、現地を訪問するよう呼び掛けていた。シンクタンクの報告は実際に新疆を訪れたことのない人物の論文やインターネット情報を元にしているにもかかわらず、欧米の主流メディアや米国の同盟国日本でも、それらがあたかも唯一真実のように報じられているからだ。スウェーデンの衣料品大手「H&M」は新疆産の綿花は使わないと発表して中国の通販プラットフォームから商品が取り下げられたりし、中国の消費者からの強い反発を受ける結果となっている。

新疆ウイグル自治区を訪問して経済発展や宗教信仰の自由の保障などを実地踏査した21カ国は、米国が「ジェノサイド」と呼ぶ行為は、ウイグルでのテロと過激主義を取り締まるためであったという中国政府の説明を肯定し支持している国であり、イランやパキスタンなどはウイグル人と同じイスラム教の国でもある。

さらに上海協力機構は「テロ、分離主義、過激主義」に共同で対処すること、経済や文化などの分野で協力強化を図ることを目的に作られた多国間協力組織で、中国とロシアが中心でイランをオブザーバーとする欧米主導のNATOに対抗するユーラシアの一大連合体ともいえる。その訪問団が目にしたのはウイグル人の平穏な暮らしぶりと現地社会の目覚ましい発展であったという。

米国による執拗な中国たたきは、1980年代、対日貿易赤字拡大で米企業の業績が悪化する中での日米貿易摩擦を彷彿させる。当時米国は日本がハイテクや半導体産業で競争力を高めることを許さず、ダンピングしていると非難し、日本製品に100%の関税をかけ、プラザ合意と規制緩和で日本は「失われた30年」の道を突き進んだ。日本の失敗を教訓とする中国が米国に従うはずはない。

中国の経済発展は米国企業が製造基盤を中国に移転したことから始まった。競争力が強くなりすぎると米国は中国に制裁関税や禁輸措置をとり、効果がなかったために今度は人権問題で打撃を与えようとしているのである。しかし皮肉にも、それは米国内でのアジア系に対するヘイトクライムを急増させた。

米国政府が真剣に人権問題に取り組むなら、まずはアフガニスタンやシリアでの戦闘行為を止めることだが、軍産複合体に支配されているバイデン政権にそれは望めないだろう。