遺伝子操作された蚊を放つ実験が4月末、米国フロリダ州フロリダキーズで始まった。目的は殺虫剤を散布する代わりに遺伝子操作した蚊を使い、ジカ熱やデング熱などの感染症を媒介する「ネッタイシマカ」を駆除するのだという。
血を吸うのはメスの蚊でオスは感染症を媒介しないので、実験で放たれる蚊は全てオスで、成虫になる前に死ぬメスの子孫しか産まれないよう遺伝子操作され、これによって蚊の数を激減できるという。
遺伝子操作した蚊が将来的に人間や環境にどのような影響を与えるかわからないため、地元住民や環境団体は実験に反対していたが、米環境保護局、フロリダ州、地元モンロー郡が承認し、毎週約1万2千匹の遺伝子操作された蚊が12週間、6カ所で放たれるのだという。これは第1段階で、今後2年間でモンロー郡は約10億匹の遺伝子操作された蚊を放つという。反対者の邪魔が懸念されることから、蚊を入れた箱は非公開の私有地に置かれているとNature誌は報じている。
このプロジェクトを行うのは、遺伝子組み換えサーモンなどを開発する米バイオ・ベンチャー企業の英子会社オキシテックだ。同様の実験は2013年にブラジルで行われ、遺伝子操作した蚊の放出後、蚊の数は当初は減少したものの1年半後には回復していたという。人為的な遺伝子操作をされた蚊は最悪の場合、従来の蚊よりもより耐性を持つ可能性があると懸念する研究者もいる。
オキシテックが蚊の遺伝子操作で使ったCRISPRという遺伝子編集技術は、遺伝子組み換えサーモンやファイザーやモデルナの新型コロナワクチン開発にも使われている。コロナワクチンだけでなく、オキシテックにも多額の資金を提供しているのがビル・メリンダ・ゲイツ財団だ。また米国防総省の機関、国防高等研究計画局も、以前から巨費を投じて「Insect Allies(昆虫同盟)」プログラムという遺伝子編集の研究をしている。病原菌や水害などで農作物が被害を受けた時に昆虫を使ってウイルスをまいて植物の遺伝子を操作し、その性質を変化させて対応しようというものだが、これを「新たな生物兵器か」と疑問を呈する科学者もいる。
遺伝子編集技術が生物兵器になり得ることをゲイツ氏は理解している。2017 年1 月のダボス会議、同年2月にミュンヘンで開かれたセキュリティー・カンファレンスで、ゲイツ氏は「生物兵器のテロ」による感染症の世界的大流行を防止するためにも迅速なワクチン開発が必要だと述べた。新型コロナで、遺伝子編集技術を使って開発されたワクチンを「緊急使用」する絶好の機会が到来したのだ。
新型コロナは自然発生でなく武漢のウイルス研究所が発生源だとトランプ前大統領は言い続けていたが、その武漢の研究所に資金提供していたのは米国政府だったことが明らかにされている。米政府はメリーランド州フォート・デトリックをはじめ国内外にいくつも生物兵器研究所を持つ。新型コロナが人工物であるかどうかを調べるためなら、米国の生物兵器研究所を国際査察する必要もあるだろう。