No. 1329 アフガンを手放さぬ米国

バイデン大統領は20年間続いたアフガニスタンでの戦争を9月11日までに終わらせ、米軍を撤退させると発表した。

アフガニスタン戦争とは何だったのか。2001年9月11日のテロ攻撃を受け、首謀者であるサウジアラビア人のウサマ・ビンラディンが拠点としていたことから、米国は「テロとの戦い」と称してアフガニスタンを攻撃したのが始まりだった。

2002年からはイラク、イラン、北朝鮮は大量破壊兵器を保有するテロ支援国家だと非難し、米国はイラクの政府関連施設などの査察を繰り返し要求した。そして大量破壊兵器の証拠がないまま2003年、米国はイラクに侵攻し、中東もテロとの戦場となった。イラクでの正規軍同士の戦闘は同年終了し、ブッシュ大統領は5月1日に空母の上で“Mission Accomplished(任務完了)”を宣言したが、実際米国はイラクを「民主主義国家」に作り替えるために駐留を続けたのである。多様性を尊重すると言いながら、自分と異なる考え方や文化を抑圧するのが米国のやり方なのだ。同様にアフガニスタンから米国が完全に手を引くことはないのである。

これまでもドローン攻撃を行い民間人を含む多くのアフガニスタン人を殺傷してきた米軍だが、米空軍のジョン・ロス長官は6月、カタールやクウェート、UAEの米空軍基地からドローン攻撃を行ってテロ(タリバン)との戦いを続け、アフガニスタン軍を支援すると言明している。アフガニスタン戦争は終わりではなくこれからもドローンで爆弾を落とし続ける、ということだ。

さらに民間の軍事会社が米軍に代わり戦争を支援するのが米国の戦争である。イラク戦争では要人警護や補給輸送をブラックウオーターという企業が担っていた。武装して一般のイラク人を殺害したのだから完全な雇い兵である。一民間企業がある集団に対して「テロとの戦い」という名の元で、武器を持ち殺人ができるということが許されるのは戦争が米国においてビジネスそのものだからだ。

ブルームバーグガバメントの分析によると、米国は2002年以来アフガニスタンで民間の請負業者に1079億ドル(約11兆円)を費やしたという。アフガニスタンでは1万6千人以上の請負業者を雇用し、そのうち6147人が米国人だという。駐留している兵士は2500人だから、倍以上の数の請負業者、つまり雇い兵がアフガニスタンで活動していて、彼らが撤退することはない。そして撤退する兵士に代わりさらなる雇い兵が送り込まれる。

なぜならアフガニスタンは米国にとって重要な場所なのだ。世界一の麻薬(ケシ)の生産地であり、それを育てたのも密売するのも米国のCIAなのである。また過去40年にわたり戦争と貧困に見舞われながら、アフガニスタンにはリチウムなどのレアアースが大量に埋蔵されている。だからこそ、米国はアフガニスタンを手放すことはなく、戦争という言葉を使うのを止めるというだけにすぎない。