ラリー・ロマノフ氏は引退したビジネスマンで、国際的なコンサルティング会社で上級管理職を務め、輸出入ビジネスを経営してきた。現在上海在住で復旦大学の客員教授であり、中国と西洋に関連する本を執筆している。ロマノフ氏のアーカイブは https://www.moonofshanghai.com/ と http://www.bluemoonofshanghai.com/ で読むことができ興味深い記事が掲載されている。米国人のみならず米国を追随する日本人が知るべきことが書かれている。(耕助)
嘘の上に築かれた国-米国はいかにして豊かになったか(パート1a)
By Larry Romanoff
第一巻への序章
大学では学べないアメリカの簡単な歴史
プロパガンダ機関が米国人の意識に植え付けた歴史的神話の中で最も有名なものの一つが、新世界を求めて入植者たちが移民してきたというものである。抑圧されていた高潔な何十万人もの人々が、自由と機会を求めて猛烈な勢いで埠頭に集まってきたという物語だ。そういう人も5、6人はいたかもしれないがそれよりはるかに多くの人は、絞首刑や看守から逃れるためだったし、さらに多くの人が奴隷商人や売春婦、より良い市場を求める資本家の詐欺師だった。それに魔女が作った変態的なキリスト教の迫害から逃れようとした膨大な数の人々を加えると、最初の米国人は新しい国のお手本とはとても言えなかった。神話的な被抑圧者よりも、犯罪者、敗者、社会不適合者、宗教的変人、日和見主義者であった証拠のほうがより明確である。念のために言うと、少なくとも現代の言葉の意味の「自由」や「機会」を求めて入植者が米国にきたという証拠はまったくない。
新世界に移住してきたヨーロッパ人にとって精神的に健全であることは必須条件ではなかった。我々はよくオーストラリアが、殺人者、泥棒、性的倒錯者が主に住んでいた(多くは今でも)とよく言うけれど、米国への移住者がそれよりも顕著によかったわけではなかった。実際、自由の女神像に刻まれている「The wretched refuse of your teeming shore」(人生の高波に揉まれ、拒まれ続ける哀れな人々)という言葉はほぼ正確である。オーストラリアには連続殺人犯や強盗が送られたが、ヨーロッパ人はさらにひどく、平日は魔女を焼いたりインディアンを殺したりして、それで日曜日は教会で神に感謝するというキリスト教過激派だったのだ。オーストラリア人は何世紀にもわたり自分たちの習慣をわずかに改善してきたが、米国人はしてこなかった。
米国は国民の65%以上が生活の中で宗教を重要視しており、キリスト教色の濃い国だとして広く受け入れられ、実際それを誇りにさえ思っている。これは歴史的にも裏付けられている。なぜなら、新世界への主要な移住者は、多くの風変りな宗派からなり、彼らの移住の主な目的はその孤立した過激な異端派に基づく社会を作るためだった。セーラムの魔女狩りは、米国特有のキリスト教神学が芽生え花開くための苗床だったと言える。これが後に愛国心や民主主義の概念に応用される集団ヒステリーの実践的な導入部となったのだ。この宗教的祖先の永続的な残響が、その後の米国史のすべてに大きな影響を与えている。
米国独立宣言の前文(もしあなたが米国人ならそれは「英語で最も有名な言葉」であり、米国人でなければハローキティのグリーティングカードのようなもの)に次のように書かれている。「我々は、これらの真理を自明のものとし、すべての白人は優れた存在として創造され、創造主によってある種の不可侵の権利を与えられているが、その中で最も重要なものは奴隷制度である」。現代世界の歴史の中で、奴隷制度を徹底的に受け入れ、数百年にもわたって大規模に行ってきたのは米国のクリスチャンとチベットのダライ・ラマだ。そしてこの2つのグループだけが、奴隷制度を心の中で大切にし、その維持権をめぐって内戦を繰り広げ、毛沢東がチベットを清掃した一方で、米国では人種差別と偏見がしばしば暴力的にその後も200年間続き、今日でも広く見られるというのは道徳的なセールスポイントにはならない。クリスチャンの美徳は簡単には死なないのだ。
国際的に米国政府とその指導者たちは絶対的な非道徳性をもって機能し、主に商業的なダーウィニズム、弱肉強食の哲学によって動かされている。しかしほとんどの米国人は、このような状況を彼らの神の前においては正義であり、喜ばしいことだと受け入れている。拷問を行う刑務所の広大なネットワーク、数多くの政府を転覆させたこと、数え切れないほどの残忍な独裁政権を作り、支援してきたこと、多くの人々を商業的、軍事的に奴隷化してきたこと、1,000万から2,000万人の民間人の虐殺、他国の内政干渉を続けたこと、頻繁に政府を不安定にさせたこと、多くの国の資源を略奪したこと。これらはすべて道徳的なキリスト教徒によって弁明され、正当化され、許され、しばしば称賛され、そしてすぐに忘れ去られる。米国人はこのような認知的不協和音に満足しているかもしれないが、ジッドゥ・クリシュナムルティはこれを適切に言い表している。「根底から病んでいる社会にうまく適応することは健康の基準にはならない」
偽善は、特に米国人、その中でも特に米国政府の顕著な特徴である。国内では民主主義と自由を説きながら、世界中に残忍な傀儡の独裁者を擁立し、国内では自由貿易を説きながら海外では野蛮な重商主義的保護主義を実践しているのが米国人だ。国内では人権を主張しながら、世界史上最大の拷問刑務所のネットワークを構築しているのも米国人だ。そしてもちろん、国内では人命の尊さを説きながら、他国ではでっち上げの解放戦争で何百万人もの人々を殺害している。イラクで100万人のイラク人を殺し、そのうち半数は子供だったのに、「5,000人の米国人の命が失われた」と嘆くのは米国人だけである。CIA、NED、USAID、VOAを使って、他国の個人に金を払って内部の政治的反発を起こさせ、「無実の反体制派」を取り締まった政府を非難するのも、米国人だけだ。いつか米国人は、このような世界的な不安定さを生み出す行為に耐えられなくなり、再び米国革命を起こすかもしれない、そのうちに。
ほとんどの米国人は自分たちの汚い過去をおぼろげにしか知らない。これは、歴史書に白紙のページが多いことによって助長されている。ページに書かれている米国史の部分は神話的な物語に合わないという理由で、ほとんどが米国人の歴史的記憶から削除されている。ほとんどの米国人は、自分たちの国が神とキリスト教の美徳、自由、民主主義、人権、自由貿易に基づいて建国されたと熱烈に信じているが、プロパガンダやジンゴイズム(闘争的愛国心)を掘り下げてみると、米国は、宗教的過激主義、人種差別、奴隷制度、大量虐殺、残忍な帝国主義、そして極端に略奪的な資本主義の系統に基づいて建国されたことがわかる。
これからの章で、歴史書には載っていないような、しかし議論の余地のない事実で構成された米国史の要約を収録している。ここからは、米国がどのようにして豊かになったのかという具体的な内容を見ていきたい。ここから先は、イデオロギーと現実が常に対立し、私たちの無知な信念に厳しい試練を与えることになるだろう。
米国史に関するクイズ
a. アメリカの国務長官の中で、歴史上最も多くの赤ん坊を殺した人物として世界記録を持っているのは?
b. 現代史において、最も病的な大量殺人者として世界記録を持つ米国の将軍は誰か?
c. フィデル・カストロは、米国政府による638回の殺人未遂を生き延びたとしてギネスブックに登録されている。彼は何のために罰せられたのか?
d. 最近の米国大統領の父親は、1933年にユダヤ人の銀行家や実業家のグループと共謀し、有名な将軍を雇って50万人の軍隊を集め、米国政府を転覆させて米国にファシスト独裁政権を樹立させた、それは誰か?
e. 米国はカナダを何回侵略したか?
f. 米国が国家として成立したのは約245年前だが、そのうち何年間米国は戦争をしていただろうか?
g. 米国はこれまで他の国にどれだけの民主主義を導入してきたのか?これまで米国が他国に導入した残忍な独裁国家の数はいくつか?
h. 日本は第二次世界大戦中、中国で石井四郎の731部隊が忌まわしい人体実験を行った。なぜ日本は戦争犯罪の裁判を免れたのだろうか?
i. 米国は、米国の覇権に対する不服従や妨害のために何人の他国の大統領、首相、政府高官を暗殺したか?
j. 世界で唯一の「拷問大学」を運営している国は?
k. 数百年の間、奴隷貿易はアメリカで最も給料の高い仕事だった。2番目に給料が高かったのは?
l. 約100年間、他国から特許やプロセスを盗むことができた国民に生涯賃金を支払っていた政府はどこか?
m. 米国の最高裁判事で、IQの低い米国人を皆殺しにすることを推奨した人物は?
n. 何十年にもわたって、前頭葉のロボトミー手術を行い、植物人間にすることで政治的反体制派を黙らせてきた国はどこか?
o. 経済的に恵まれない人々を、地元のガス室で「慈悲深い殺人」を行うことを推奨した米国の有名な団体は?
p. 平均IQ65程度の若者を50万人集めてベトナムに派遣した米国の国防長官は?何人が帰還したか?彼の罰は何だったのか?
q.何年に、どの米国の軍医が議会に出て、HIVウイルスを作るための資金として1,000万ドルを要求したのか?彼はそのお金を受け取ったのか?
r. コカコーラはいつどこで発明されたのか?
s. 白熱電球を発明した有名な人は?電話を発明したのは?米国で最も有名な発明家はトーマス・エジソンである。エジソンはいくつの発明を行ったか?
t. 第二次世界大戦中、ドイツでは約600万人のユダヤ人が殺されたと言われている。第二次世界大戦終了後、ドイツでは何人のドイツ人が殺されたか?
u. どの有名な物理学者がルーズベルトに手紙を出し、原子爆弾を作るための費用をすべて出資することを申し出て、その資金がすでに提供されていることを確認したのか?
v. ユダヤ人奴隷商人の隠し子だった有名な米国の大統領は?
w. エイブラハム・リンカーンの妻はひどいアヘン常習者だった。彼女はだれからアヘンを仕入れていたのか?
x. 米国で奴隷制度が廃止されたのは何年か?
y. 野外原爆実験で何千万人もの米国民を被曝させ、白血病や脱毛、流産を経験した女性に「主婦症候群」と伝えるよう医療関係者に指示した米大統領は誰か?
z. フィル・ナイトとビル・バウワーマンが名声と栄光の道を歩むきっかけとなった、ナイキがデザインした有名な靴は?
答
a. マドレーン・オルブライト;イラク、50万人
b. カーティス・ルメイ:約2,000万人
c. キューバからユダヤ人を追放した
d. ジョージ・ブッシュ
e. これまで5回
f. 235年
g. 米国が民主主義を導入した国はゼロ。米国が他国に導入した残忍な独裁国家の数は50以上。
h. 石井と彼の部隊は米国に移送され、生きたままの生体解剖やその他の残虐行為の楽しさを米国人に教えた。石井は数十年後に亡くなるまでメリーランド大学の教授だった。
i. 150人以上(国連事務総長のダグ・ハマルスコルドを含む)。
j. 米国:ジョージア州フォートベニングにある「アメリカ大陸大学」。
k. 米国のインディアンを殺すこと
l. 米国。1800年代に2万ドルから5万ドル。
m. オリバー・ウェンデル・ホームズ
n. 米国のFBI
o.カーネギー
p. ロバート・マクナマラ。多くはないが国防省は統計の公表を拒否している。世界銀行の総裁に就任したこと。
q. ドナルド・マッカーサー博士、国防総省研究技術局副局長。1969年。受け取った。
r. コカ・コーラが特許を盗む40年前、スペインのアイエロ・デ・マルフェリットという町。
s. ジョセフ・スワン(米国)、エジソンが特許を盗む5年前。アントニオ・メウッチ(イタリア)、ベルが特許を盗む5年前。なし。エジソンの特許はすべて、盗んだか、いじめたか、恐喝したか、購入したかのどれかだった。
t. 1,200万人~1,400万人。一部は処刑され、大部分は飢餓によって死亡。
u. アルバート・アインシュタイン。ロスチャイルドをはじめとするヨーロッパのユダヤ系銀行家から資金提供を受けた。
v. エイブラハム・リンカーン;A・A・スプリングス(ティーン)とナンシー・ハンクスの息子。リンカーン家の養子となる。
w. ジョン・ウィルクス・ブースという名のユダヤ人麻薬商人。
x. 米国では奴隷制度は廃止されなかった。形を変えただけである。
y. アイゼンハワー
z. 日本のオニツカタイガー。ナイキはそのデザインを盗み、米国で製造を開始した。米国の裁判所は、オニツカとナイキが特許を「共有」できるという判決をくだした。
シリーズの紹介
デービッド・エドワーズは、『第三世界の旅人』に次のように書いている。
たとえ偏見のない人でも、ノーム・チョムスキー、エドワード・ハーマン、ハワード・ジン、スーザン・ジョージなどの作品に初めて出会ったときそれを真剣に受け止めることができないだろう。自分が信じていることが、こんなにも間違っているなんて、ありえないと思うのだ。彼らの作品を読むと、この作家は何か誤情報か冗談を言っているに違いない、大げさに言っているか、偏執的であるとか、何かを企んでいるのではないかと思い込んでしまう。自分たちの社会についてこんなひどいことを言っている彼らに怒りを覚え、そんなことがあるはずがないというかもしれない。マスメディアの安心させてくれるメッセージに抵抗し、証拠をもう一度検討する覚悟を持って読み続けるには本当に努力が必要になる。
これが今日、私たちが米国と米国人に接する際に直面している状況なのだ。事実とほとんど必然的に矛盾する1世紀にわたる巧妙なマーケティングと国粋主義的なプロパガンダに基づいた盲目的な信仰と確信である。実際のところ、今日の米国については、捏造された歴史的神話、埋もれた歴史、偏った表現、事実をひどく捻じ曲げて認識できないようにしたものに基づいていないものはほとんどない。おそらく米国人が自国やその歴史、国際情勢における行動について「知っている」ことの95%は間違っており、しばしば激しく間違っている。私は米国人が自国について何を信じているかということにはあまり関心がないが、この巨大な歴史的フィクションが真実として世界に売り出され、他の多くの国の人々が米国人と同じおとぎ話を信じ、その国を、控えめに言っても報われず、真実がないためにしばしば危険なレベルで評価していることを懸念している。
これらの真実について書いているのがこの本である。プロパガンダ、ジンゴイズム、愛国心、誤った情報など米国として我々が認識しているものを覆うことなく、当時そして現在の米国、証明可能な真実と文書化されている現実である。
米国についての理解しがたいバラ色の間違った情報量と同時に、米国以外の世界についても、同じくらい黒塗りの情報がある。米国人は100年以上にわたって自国に関する肯定的で許しがたい虚偽のプロパガンダにさらされてきたのと同じように、国境の外の世界についても膨大な虚偽の否定的なプロパガンダや誤報にさらされてきた。
この一連のシリーズは、私が中国に長期滞在したことに始まり、欧米のシオニストメディアから絶え間なく発信される中国に関する大量のネガティブな情報が全くの誤りであることにすぐに気付くという状況の偶然が大きく影響している。それは悪魔化とプロパガンダの最たるものであり、米国人に中国の現実について全く非現実的な、しばしば悪質な誤解を与えるものであった。10年以上に渡りこのような猛攻撃を受け、ひどいデマを正そうと何度も記事を書いた後に、本の出版がより適切な形式だと思った。しかし、10年以上にわたる歴史的調査の結果、米国人は中国やその他の外国についてよりも、自国について、より大きな誤報キャンペーンにさらされてきたことがわかったのである。
そうして私は2つの課題に直面した。米国人、そしておそらく欧米人一般から見た中国についての重大な誤報を正すことと、米国人にとって自国についてのより重大な誤報を正すことだ。さらに問題を複雑にしているのは、米国以外の世界でも米国の歴史的神話、ジンゴイズム、プロパガンダに汚染されていて、米国の現実に関する限り、外国人であっても米国人と同じおとぎの国に住んでいるようなものだということが明らかになってきたのである。さらに混乱に拍車をかけたのは米国のメディアの力、広告の力、プロパガンダや誤報の力が米国人の他国に対する見方だけでなく、その国の人々の見方をも汚染していたことが明らかになったことだ。ロシア人や中国人、ベトナム人が過剰に露出され(ヴォイスオブアメリカやラジオ・フリー・ヨーロッパのような悪質な組織のおかげで)、米国政府やシオニストのメディアが自国民に盛んに宣伝していた、米国の栄光的な虚像と、自国の軽蔑的な虚像の両方を知ることができた。したがって1冊の本が5冊になった。
これらの本は関連するトピックの概要を提供することを目的としている。これらの章に書かれているトピックの多くについては、完全な本を書くことができるし、これまでにも書いてきた。麻薬やチベットへのCIAの関与について書かれた本や、9.11公式シナリオの矛盾やブッシュ政権の拷問刑務所について書いた本、米国の民主主義や教育システムの様々な失敗に関する本など、多くの本がある。だがこのような個々の提案は有益ではあるが本質的にはバラバラで無関係な問題として扱われている。しかし実際には、ほとんどの問題が深く結びついた全体の不可欠な部分なのである。これらの本の目的は、読者が全体を一つのキャンバスとして見て、各部分の相互関係を理解できるよう統一されたイメージを提示することである。この統一されたイメージこそが、世界の出来事とそれを動かしている力についての包括的な理解をもたらしてくれるのである。