嘘の上に築かれた国-米国はいかにして豊かになったか(パート2i)
by Larry Romanoff
2i. 労働、資本主義の呪縛
人件費は、企業の営業費用の中でほとんどいつも最大の割合を占めており、多くの業界で総費用の50%から60%となっている。人件費をなくせば、すぐに天文学的な利益を得ることができるだろう。そして500年もそれが続けば、おそらく世界中のお金を所有することができるだろう。競合他社が通常の市場賃金を支払っていれば、500年たたなくてもあなたは世界で唯一生き残る企業となるだろう。そうでないことがあるだろうか。人件費がかからなければ競合他社の実際の製造コストよりもはるかに安い価格で製品を売ることができ、すぐに他の企業を廃業に追い込むことができる。そうなった時点であなたは販売価格をいくらでも上げることができ、欲張りな夢のような利益率を実現できるのだ。現在、多国籍企業の多くはこれを目指している。多国籍企業の財務諸表を見ると、最も目立つ数字は人件費が占める割合であり、利益を上げるために人員削減、雇用凍結、昇給拒否(役員を除く)などを行っている。固定費や変動費のほとんどは改善の余地がなく、間接費のほとんどは節約の余地がないため、人件費は常に最も脆弱な要素である。製造コストはすぐにそれ以上削減できないレベルに達するため、残されたターゲットは労働力となる。
これは本当にその通りで、雇った労働者の反感を買わずに金持ちになった人はほとんどいない。米国の人気企業アップル社を見ると約2,000億ドルの非課税の利益が海外に眠っている。アップルはそのお金をすべて盗んだ、いや、少なくともそのサプライヤーが盗んだのである。スティーブ・ジョブズはアップルのiPhoneのおかげで革新者として崇められているが、iPhoneはとるに足らないものだ。ジョブズの真のイノベーションはフォックスコンという会社を見つけ、100万人の若者をその強制収容所に雇ってiPhoneの製造と組み立てを行わせ、一方でその100万人の若い労働者は餓死寸前の生活をしていることだ。もしジョブズがアップルの従業員である彼らに対する責任を感じ生活費に相当する賃金を支払っていたら、2000億ドルはゼロになっていたはずだ。iPhoneがクール(かっこいい)なことはこの方程式となんの関係もない。アップルの利益は、クールだったからではなく、人生を始めるために仕事を必要とする社会的に最も弱い立場にある若者の賃金を奪ったことから得られたのだ。ジョブズの成功のために、まず若者たちを失敗させなければならなかった。そしてジョブズは成功したのだ。
ウォルマートのサム・ウォルトン氏を考えてみよう。まさに彼がやってきたのは100万人の従業員を30年、40年と低賃金で働かせ、しかもパートタイムで雇用することで医療費や年金、失業保険など賃金の30%以上に相当する福利厚生費の負担を回避したのである。このやり方でウォルトンは競合他社よりも販売価格を大幅に引き下げることができて町で唯一の選択肢となった。今ではサム・ウォルトンの後継者数人で、米国の全財産の30%を所有していると言われている。中国では香港の大富豪である李 嘉誠がそれに当てはまる。彼は従業員を酷使し、低賃金で働かせていたため彼のホンコンフラワー工場は1960年代に香港で起きた9カ月に及ぶ内乱の起爆剤となった。李は自分の略奪能力を過大評価したため(サム・ウォルトンはこの過ちを犯さなかったが)、世界は爆発したのである。しかし文字通り血が流れる頃には李はすべてのものを非常に安く買い取るだけの資金を蓄え、さらに金持ちになっていた。もしあなたが今日の大富豪の歴史を調べれば、わずかな例外を除いて、スティーブ・ジョブズ、サム・ウォルトン、ジャック・マーなどほとんどの人が労働者を背景にして金持ちになったことがよくわかる。これらの人々は今日メディアで寛大な慈善家や親切な人道主義者として宣伝され、木を守り、中絶を推進している人々と同じ人たちだ。そして彼らは皆、惨めな詐欺師である。慈善活動は、彼らがもともと金持ちになるために犠牲にしてきた従業員たちに向けられるべきなのだ。もしまだ従業員が生きているとしたら。
ゼネラルモーターズ(GM)も、アップルやウォルマートと同じようにこれらの方法を組み合わせて少し工夫したことによって成功した。労働組合の力がまだ強かったGMには自社の労働者を飢えさせるような柔軟性がなかったので、アップルのようなアウトソースの手法を採用した。GMはすべての部品製造をやめ、サプライヤーに製造を委託した。それによってGMはレバレッジを得ただけでなくUAW(United Auto Workers)組合の怒りからも逃れられた。GMはサプライヤーから大量に購入することを提案したが、それはあまりにも低い価格設定だったため、サプライヤーはフォックスコンと同じく強制収容所のような生活と賃金を強いられたがGMは大きな利益を上げた。それはあまりにもひどかった。GMの契約書には毎年5%の追加値下げ規定が盛り込まれており、既存の契約で10%の値下げを受け入れない限り、新規契約の見積もりをすることは許されなかったのである。もちろんこのアウトソーシング戦略によってGMはひどく嫌悪された。なぜならGMの強欲さによる経済的負担はすべて他の労働者が吸収することを意味していたからだ。何百万人もの労働者がGMの利益のために毎年1万ドルずつ譲歩したのである。
これこそ米国が後進国を軍事的に植民地化し略奪していくための戦略だった。米国の多国籍企業は軍や国務省の支援を得て、アメリカ大陸、アフリカ、アジアの50カ国以上にこの政策を適用した。原材料や製品の価格をほぼゼロにして交渉し、飢餓的な賃金を支払い、任命した独裁者を利用して十分な恐怖心を維持し、労働争議や労働組合を作ろうという考えが起こらないように国民を抑圧する。ウォルマート、アップル、GM、コカコーラ、ナイキなど米国の多国籍企業が愛してやまないこの労働哲学は、これらの企業が誕生するずっと前に、米国務省によって完璧に磨きをかけられていた。
話をウォルマートに戻そう。サム・ウォルトンが30年か40年の間にこの方法で世界最大の小売会社を作ることができたなら何百年もの間には何ができるのだろうか。その比較的短い瞬きの間に、彼の惨めな子孫が米国の全財産の30%をすでに所有しているとしたら、100年後、300年後、500年後にはどれほどの財産を持つことになるのだろうか。ウォルトンが世界最大、いや世界で唯一の小売業者になっていることを想像するのは論理的に飛躍したことではないし、彼が他の多くの企業や産業を買収して、彼の実証済みの方式を適用することを想像するのも飛躍したことではない。100年後、200年後には、世界で唯一の食料品店、薬局、病院を持つことができるかもしれないし、実際、同社はこれらすべての分野に進出し、まさにそれを実現しようとしている。
しかし、サム・ウォルトンの場合、従業員に何がしかを支払わなければならなかったので、標準賃金の1/2から2/3程度を支払った(福利厚生はなし)。しかし、もし彼が従業員に何も支払う必要がなかったとしたら?もし彼の義務が彼らに食べ物を与え彼の倉庫で眠らせることだけだったら?そしてもし従業員の子供たちが6歳から自動的にウォルマートの無給の従業員となり、同じく食事と倉庫の提供だけを受けていたとしたら?今頃彼はどれだけ豊かになっていただろうか。もし、このやり方を続けることができれば、500年後にはどれだけ豊かになっているだろうか?次に時間を逆行させ、もしサムが500年前にプリマス・ロックに最初のウォルマートをオープンし、それ以来1セントも賃金を払わなかったとしたらどうなるかを想像してみよう。そして米国のあらゆる産業のほぼすべての企業が、同じようなやり方で事業を展開し、他国ではそのような企業がなかったと想像してみよう。
これと奴隷制度や米国がどうやって豊かになったかということと、どう関係があるのだろうか?すでにあなたが想像しているように、すべて関係がある。