No.1368 米軍は2024年の暴動に今から備えなければならない

No. 1365で米国がいかに内戦に近づいているか、という記事で紹介されたワシントンポスト紙に掲載された退役軍人のオピニオンコラムである。2020年大統領選挙で勝利宣言をしたバイデン氏の「分断でなく団結させる大統領になる」と誓った。しかし米国の国内は治安の悪化のみならず、「内戦」の危機にあるほど分断がすすんでいるのである。(耕助)

米軍は2024年の暴動に今から備えなければならない

3人の退役軍人の意見

by Paul D Eaton, Antonio M Taguba, and Steven M Anderson

https://www.washingtonpost.com (December 17 2021)

ポール・D・イートンは退役米陸軍少将でVoteVets{1}の上級顧問。アントニオ・M ・タグーバは34年間勤務した退役陸軍少将。スティーブン・M・アンダーソンは米国陸軍に31年間勤務した退役准将である。

米国連邦議会議事堂での致命的な反乱{2}から1周年を迎えようとする中で、我々(全員が元軍幹部)は2024年の大統領選挙のあとに起きるであろう軍内部の致死的な混乱の可能性について大きな懸念を抱いている。これはすべての米国人を深刻な危険にさらすことになるからだ。

一言でいうと、次はクーデターが成功するのではないかと考えると我々は骨の髄まで寒くなる。

米軍の強みの一つは多様な国民性を活かしていることだ。軍隊にはさまざまな信念や背景を持つ個人が集まっている。しかし常に維持管理をしていなければ、社会や政治の混乱を反映して軍隊が崩壊する可能性は極めて高くなる。

軍隊が混乱する可能性を示す兆候はある。2021年1月6日の国会議事堂襲撃事件では、不穏な数の退役軍人と現役軍人が参加していた。攻撃で起訴された者の10人に1人以上が兵役経験者であった{3}。退役軍人124名からなるグループは「Flag Officers 4 America」という名称で、ドナルド・トランプ氏の主張である、選挙の正当性に対する誤った攻撃{4}を繰り返す書簡を発表した。

最近では、オクラホマ州の州兵司令官であるトーマス・マンシーノ准将が、州兵全員にコロナワクチン接種を義務付けるバイデン大統領の命令{5}を拒否した。マンシーノはオクラホマ州兵は連邦政府から動員されているわけではなく、彼の最高司令官は大統領ではなく共和党の州知事{7}だと主張した。

上層部から分隊レベルまで党派を超えて指揮系統が完全に分断される可能性があり、これは再び反乱が起きたときに重要な意味を持つ。ならず者部隊たちが「正当な」最高司令官を支援するために自分たちで組織するという考えも否定できない。

再選されたばかりのバイデンが指示を出すのと、トランプ(あるいは別のトランプ的人物)が影の政府のトップとして指示を出すのとで、最高司令官が競合することを想像してみてほしい。もっとひどいのは、州や連邦レベルの政治家が負けた候補者を違法に大統領として据えることを想像してほしい。

すべての軍人は米国憲法を守ることを宣誓している。しかし、選挙が行われ、忠誠心が分裂した状態では、ある者は正当な最高司令官の命令に従うかもしれないし、ある者はトランプを支持する敗者に従うかもしれない。誰が監督するかによって武器が確保できないかもしれない。このような状況下では、軍の崩壊が内戦につながる可能性があると言っても過言ではない。

このように軍が弱体化し分裂した状態では、米国の安全保障は機能しなくなる。敵のいずれかが米国の資産や同盟国に対して全面的な攻撃を仕掛ける可能性がある。

2020年の選挙の余波に対する軍の準備不足はひどく心配すべきものだった。トランプの国防長官代理であるクリストファー・C・ミラーは、1月6日以前に国会議事堂の軍事的保護を意図的に保留したと証言{8}した。統合参謀本部議長のマーク・A・ミリー陸軍大将は、国の核防衛チェーンが不正な命令から守られていることを確認するために{9}奔走したと報じられた。軍全体が油断していたことは明らかだ。国の分裂が続いている今、私たちは最悪の事態に備えて行動しなければならない。

第一に、再び暴動が起きないように全力を尽くさなければいけない。暴動を引き起こしたリーダーは一人も責任を問われていない。選挙で選ばれた議員と、司法省、下院の特別委員会、そして議会全体を含む法を執行する人々は、もっと緊急性を示さなければならない。

しかし、軍は選挙で選ばれた議員が行動するのを待つことはできない。国防総省は制服組と民間人を問わず、すべての隊員を対象に、憲法と選挙制度についての公民科教育を直ちに実施すべきである。また、戦争法や、違法な命令の見分け方や対処法についても復習しなければならない。そして、国防省のすべてのメンバーが誰に従うかを完全に明確にするために「指揮系統の統一」を強化しなければならない。最悪の事態に陥ったとき、誰から命令を受ければいいのかわからなかったという軍人がいてはならない。

また、すべての軍部は、すべての施設でより集中的な情報活動を行わなければならない。 その目的は、潜在的な反乱分子を特定し、隔離し、排除することである。誤った情報を使って指揮系統を覆そうとする宣伝者の努力を防ぎ、そのような情報やその他の誤った情報が宣伝者によってもたらされた後、どのように階級を超えて広がっていくのかを理解するのである。

最後に、国防総省は、選挙後に起こりうる反乱やクーデターをウォーゲームで再現し、弱点を洗い出す。そして、その結果をトップダウンで報告し、軍だけでなく、軍と連携しているあらゆる機関の機能低下を防ぐための安全策を講じなければならない。

軍も議員も、2024年に再び暴動が起きないようにするための後知恵を授かっているが、今、決定的な行動を起こさなければ成功することはないだろう。

Links:

{1} https://votevets.org/

{2}https://www.washingtonpost.com/politics/interactive/2021/jan-6-insurrection-capitol/?itid=lk_inline_manual_4

{3} https://www.cnn.com/2021/05/28/politics/capitol-insurrection-veterans/index.html

{4}https://www.washingtonpost.com/politics/2021/05/15/former-military-leaders-criticized-election-administration-that-hurts-militarys-reputation/?itid=lk_inline_manual_9

{5}https://www.washingtonpost.com/national-security/2021/11/17/vaccine-mandate-oklahoma-national-guard/?itid=lk_inline_manual_10

{6} https://www.washingtonpost.com/coronavirus/?itid=lk_inline_manual_10

{7} https://coffeeordie.com/oklahoma-guard-vaccine/

{8}https://www.washingtonpost.com/powerpost/trump-jan-6-riot-national-guard-capitol/2021/05/11/9a1b5c18-b29f-11eb-a980-a60af976ed44_story.html?itid=lk_inline_manual_21

{9}https://www.washingtonpost.com/politics/2021/09/14/peril-woodward-costa-trump-milley-china/?itid=lk_inline_manual_21

https://www.washingtonpost.com/opinions/2021/12/17/eaton-taguba-anderson-generals-military/