ウクライナ報道が明らかにした欧米の本質的な人種差別主義
By Kit Knightly
Off Guardianでは人種差別の政治的武器化に関するメタ分析以外ではあまり人種差別について取り上げない。
多くの場合、「人種差別」は現状に脅威を与える人々(ジェレミー・コービンを参照)を攻撃するために体制側によって使われる。また、複雑な政治的問題を善玉と悪玉に単純化するために使われることもある。
思想のマーケットプレースは、すべてを単純な人種の問題にすり替えようとする歪んだ試みで飽和状態になり、「人種差別」という言葉の意味をほとんど奪ってしまったほどである。
この見せかけの怒りの下には、皮肉にも、現在どこよりも無知で最も建設的でない人種差別が潜んでいることは、常に明らかだ。
例えば、Woke(社会問題に高い意識を持つ人)は、トールキンのオーク{1}は「明らかに」黒人を意図していると憤慨している(オークは愚かで凶暴だから)。 あるいは、この壁画{2}はユダヤ人銀行家を描いているに違いない(「ユダヤ人の鼻が引っ掛かっている」{3}ため)– これらは最も賢明な中産階級の白人が白人至上主義者と同じくらい馬鹿で偏屈な黒人像を持っていることを示している。
だからウクライナの戦争が特に憤慨させられるのは、それが白人に対して起こっているからだということを理解したとしても、あなたはおそらくショックを受けることはないはずだ(受けるだろうが)。
私の言っていることが信じられない?それなら、見てほしい。この戦争は、ヨーロッパで「金髪と青い目」を持つ人々に対して行われているため、特に悪いものだというメッセージがページからスクリーン、ソーシャルメディアまで、はっきりと伝わっている。
https://twitter.com/i/status/1497974245737050120
ITV News のレポーターは、「想像を絶する」事態が起こっていると語っている。なにしろ「ヨーロッパで」戦争が起きている、「第三世界の発展途上国」で起きているのではないのだから、と。
https://twitter.com/i/status/1497878168216252416
CBSのレポーターは、ウクライナは「文明的」で「ヨーロッパ的」な場所であり、「イラクやアフガニスタンのように何十年も紛争が続いているところではない」と語り、謝罪するはめになった。
https://twitter.com/i/status/1497607326487826435
Daniel HannanはTelegraph{4}に寄稿し、その見出しは、プーチンは「文明そのものに宣戦布告した」と次のように嘆いている。
彼らは見た目が私たちと同じだ。だからとてもショッキングだ。ウクライナはヨーロッパの国なのだ。国民はネットフリックスを見てインスタグラムのアカウントを持っている。戦争はもはや、貧しく辺鄙な人々に訪れるものではない。誰にでも起こりうることなのだ。
これ以上ひどい偏狭な無知はあるだろうか?
フランスのテレビ局の評論家も言っている。
同じチャンネルの別の識者{5}は、「ここで話しているのは、逃げているシリア人のことではない……ヨーロッパ人のことだ」と指摘した。
これは単なる人種差別ではない。うんざりするほど多くの修正主義でもある。彼らは皆、アフガニスタン、シリア、イラク、そして「第三世界」一般における戦争について言及しているが、それらの戦争がどのように始まったのか、誰が始めたのか、一度も言及していない。
これに「文明」や「ヨーロッパ人」という言葉を組み合わせることで、私たちの戦争はOKだというメッセージが明確になる。なぜなら、遠くの茶色い人を爆撃することは、身近な金髪の人を爆撃するほど悪いことではないからだ。
これが本当の人種差別だ。見せかけの怒りの感情ではなく 文字通り根深いものである。他の人種は自分の人種ほど重要ではないという、疑いのない前提に基づいている。
公正を期すためにいうと、インディペンデント紙やガーディアン紙{6} {7} など、いくつかの主流報道機関もそう報じている。しかしどちらもこれらの戦争を始めた西側諸国の責任には言及していない。
しかし、ウクライナの物語には、さらに認知度の低い別の形の人種差別がある。
ウクライナの政治に内在する人種差別と、それを政治的目的のために否定したり正常化しようとする西側の論客の試みだ。
この地域は、少なくとも第二次世界大戦まではナチズムの歴史がある。ウクライナの民族主義者でナチスに協力したステパン・バンデラ{8}が、ユダヤ人、ポーランド人、スラブ人に対するポグロムに参加したと言われている。
バンデラは一部のウクライナ人に英雄として持ち上げられている。バンダー派の教えは、スヴォボダ、右翼セクター、トリズーブ{9}、C14など、ウクライナの多くのネオナチグループの背景にある。
これらのグループはマイダンのクーデターで主導的な役割を果たし、その後の内戦では私設民兵団を結成して東部の分離主義者と軍事交戦を繰り広げた。
ペトロ・ポロシェンコは後に、悪名高いエイダル大隊やアゾフ大隊など、これらの民兵をウクライナ軍{10}に正式に編入することになる。
2014年のクーデター以降、ネオナチグループはロマの人々に対して定期的に攻撃を行い{11}、ロイターは2018年に「暴徒司法の台頭」{12}に直面していると報じた。ウクライナのメディアは文字通り、そうした攻撃のひとつを「ジプシー・ポグロム」(ポグロムは「暴力的に破壊する」という意味のロシア語。歴史的にロシア帝国のユダヤ人以外の市民が地元のユダヤ人に対して行う暴力的な攻撃を意味する) {13}と表現した。
ロシアが参戦して以来、アゾフ大隊の兵士が豚の脂に弾丸を浸してチェチェンのイスラム教徒を撃ったり{14}、捕虜{15}を処刑すると言っているビデオが公開されている。彼らは公然とナチスの記章を身につけている{16}。
2018年、イスラエルの人権運動家がイスラエル政府に「ウクライナのネオナチへの武装をやめる」{17}ことを要求する嘆願書を送っている。そして2021年にはオタワ・シチズンが、カナダ政府がウクライナ軍のネオナチを武装させ訓練していたことを報じた{18}。
ロシアの侵攻以来、黒人や南アジア系の移民{19}は国外への脱出を禁じられたり、列車に乗るのを妨害されたり、銃口を向けられたりすることもあった。
要するに、ウクライナは政府も軍も生粋のネオナチ差別主義者で、欧米政府の全面的な支援を受けて活動しているのだ。
主流メディアはこのことを議論することを拒否し、ほとんど認識さえしていない。ナチズムを「ナショナリズム」にすり替え、残虐行為の記録を単なる「戦争の不透明な」残虐行為に書き換えたりしている。
しかし、それだけにとどまらない。ウクライナの物語全体には、3番目の種類の人種差別が存在し、それは最も衝撃的で危険なものである可能性がある。
白人の覚醒主義者とメディア層が現代で最も偉大な人種的偏見を持つことを許している自惚れた無知は、ロシアに頂点を見つけた。
何世紀とまではいわないまでも何十年もの間、無意識のロシア恐怖症の菌株があり、それが東欧やその他の地域の報道を汚染してきたのである。
こんな見出しだ…
“ロシアの倫理が存在するはずのブラックホール”{20}
あるいは、
“ロシア的価値観の異常性”{21}.
そして、これはスボボダ(西ウクライナのウクライナ民族至上主義、いわゆるネオ・ナチ)が言っているのではない。教養があって洗練されたニュアンスのある西側の見解なのである。
NATOの政治家はロシアと中国が「我々の価値観を共有していない」{22},とか、「ロシア人は人命の価値を認めていない」{23}といともたやすく主張する。
著名な主流派の声が「ロシア人の祖先の汚点」{24}について語ったり、『ウォールストリート・ジャーナル』{25}に主張する記事を掲載したりするのを日常的に目にすることができる。たとえば:
基本的な道徳的原則を明らかにすれば、ロシア人にそれを理解させることができる。ロシア人は西洋の倫理的遺産を共有していない。しかし道徳的な直観はどこにでも存在するのでそれを呼び起こさせることはできる。
ロシアは、あるいはロシア人は、事実上「倫理的遺産」を持たない「凶悪犯」であり、我々のように「人命を大切にしない」という考えは、我々の情報通の知識人の間で受け入れられるだけでなく主流であり、当然のことなのである。
同じことは、ある程度までは中国にも当てはまり、エドワード・サイードの「オリエンタリズム」のあらゆるバリエーションがある。だから『ワシントン・ポスト』紙にはこんな見出しが載る{26}:
ロシアと中国を抑止するための文明国の努力が積み重ねられ始めている
私たちのメディアと政治家は無知な人種差別主義者で、アジア系家族が経営する角の店での買い物を拒否するような小心者のようだ。原住民の「文明化」について語るヴィクトリア朝の植民地支配者のように恩着せがましく偏狭なのだ。
彼らはまた、恐ろしいほどの速さでブラウン・シャツ(茶色のユニフォームを着ていたナチSA)にもなる。
ロシアの元スパイ、スクリパリが毒殺された後、著名なジャーナリストたちがロシアの子供をイギリスの学校{27}から追い出せと言ったり、ロシア人の妻を持った人を攻撃したりしたのを覚えているだろうか?
当時、ロシアのテレビ局で働くイギリス人ジャーナリストは公然とBBC {28}で「売国奴」と呼ばれ、ガーディアン紙のジャーナリストは労働党の国会議員とともにバスを借りてロンドン中を走り回り、どのビルがロシア人の所有物かを指摘した{29}。
ロシア人嫌いに慣れているあなたにはそれが人種差別に聞こえないだろうが、ロンドンを車で走り回り、団地や会社を指差して、“あそこはユダヤ人の所有だ!あれもそうだ!”と。
あまりいい光景ではないでしょう?
当時もひどかった。しかし今はもっとひどくなっている。
イギリスの労働党党首のキーア・スターマーは、安っぽい青い「労働者階級」のスーツを着ることが社会的不公正に対する真の懸念の適切な代用品であると考える人物で、彼はロシアに同調する議員は停職処分にすると言った。{30}
英米の両政府{31} {32}はロシアの億万長者から私有財産を差し押さえることを検討している。フランス{33} とドイツはすでに開始している。
そうおそらく彼らは腐敗したオリガルヒだが、国籍だけで個人から私有財産を差し押さえるのは、非常に、非常に危険な先行きだ。
どうやらチェコ政府{34}は、実際にロシアの行動を支持することを犯罪とすることを検討しているようだ。
ジェレミー・ヴァイン(イギリスのアナウンサー)はテレビで、「ロシアの軍服を着る」人は死に値すると示唆した。
https://twitter.com/i/status/1498773245339840518
イラクのイギリス軍についてもそう言っただろうか?それかガザにいるイスラエル軍?あるいは米軍…いや、どこの国でも?もちろん、そんなことはない。
でも、ロシア人は…そう、彼らは我々とは違う。彼らは本当の感情を持っていない。ロシア兵を殺せば世界のためになる。
これは、ロシア(あるいは中国)がファシスト帝国の暴力の不運な犠牲者に過ぎないと言っているのではない。
プーチン政権は結局のところ、グレートリセットのアジェンダに従った。その理由はいくらでも推測できるが、彼らは間違いなくそれを行った。しかし、それはまた別の機会に、別の記事で議論することにする。
私が言いたいのは、私たちの社会は白人主義という薄いベールの下で、ここ何十年かで最も人種差別的、狂信的、不寛容になりつつあるということだ。危険なほどに。
ロックダウン左翼は自由の戦士を打ちのめし、彼らを「白人至上主義者」{35}と呼んでその偽善から隠れている。自分たちの姿を、自分たちが憎んでいる人たちに投影している。
この2年間、私たちはさまざまな報道で、マスクをせず、ワクチンをしていない人たちが嘲笑され、罵倒され、基本的人権を否定され、人間性を奪われるのを見てきた。
ドイツのある店では、「プーチン支持者にはサービスを提供しない」{36}と書かれた看板があり、その横には「マスクしていない人にはサービスしない」と書かれた看板が並んでいる。ものすごい調和だ。
完全に存在を無視することはもはや当たり前となった。人種差別は、恩着せがましい「包括性」にねじ曲げられて神聖化された。
これは非常に危険なことだ。不寛容で、偏屈で、無知であるように社会を訓練すれば、選んだターゲットを憎むように動員するのは難しいことではない。
その憎しみは、無差別であると同時に暴力的であり、オーウェルが書いたように、”電灯の炎のように、ある対象から別の対象に切り替えることができる “のである。
我々は皆気を付けるべきだ。なぜならあらゆる意味で我々は今、ナチスなのだ。
{1} https://www.scotsman.com/arts-and-culture/film-and-tv/lord-rings-labelled-racist-2461845
{3} https://twitter.com/daily_politics/status/978231398061375488?lang=en
{5} https://twitter.com/AlanRMacLeod/status/1497984372414156800
{6} https://www.independent.co.uk/voices/ukraine-refugees-racial-bias-western-media-b2024864.html
{8} https://en.wikipedia.org/wiki/Stepan_Bandera
{9} https://en.wikipedia.org/wiki/Tryzub_(organization)
{11} https://www.aljazeera.com/features/2018/11/23/attacked-and-abandoned-ukraines-forgotten-roma
{12} https://www.reuters.com/article/us-ukraine-rights-roma-idUSKCN1C01RN
{13} https://www.timesofisrael.com/in-ukraine-jews-witness-historic-echoes-in-pogroms-against-the-roma/
{15} https://twitter.com/KyleKulinski/status/1499155911369273345
{16} https://en.wikipedia.org/wiki/Wolfsangel
{19} https://www.independent.co.uk/world/ukraine-racism-refugees-russia-war-un-b2025771.html
{20} http://carnegiemoscow.org/commentary/64062
{21} https://www.4freerussia.org/abnormality-of-russian-values/
{22} https://mobile.twitter.com/SkyNews/status/1493567719861633030
{24} https://twitter.com/KeithOlbermann/status/1363946602826764292
{25} https://www.wsj.com/articles/a-christmas-encounter-with-the-russian-soul-1513983153
{27} https://twitter.com/PeterTatchell/status/975380078237487104
{28} https://www.youtube.com/watch?v=cxWv7yYhkf4
{30} https://www.independent.co.uk/news/uk/politics/starmer-labour-mps-nato-russia-b2025240.html
{31} https://www.reuters.com/world/uk/uk-eyes-seizing-property-sanctioned-oligarchs-ft-2022-03-02/
{34} https://balkaninsight.com/2022/03/01/czechia-mulls-penalising-support-of-ukraine-invasion/
{36} https://twitter.com/consent_factory/status/1499481649389752324
https://off-guardian.org/2022/03/04/ukraine-coverage-reveals-wests-inherent-racism/