No. 1415 スナップショット

スナップショット

by Fred Reed for the Saker Blog

https://thesaker.is (March 10 2022)

誰もがウクライナについて話している。私が話してもいいだろう?フレッド、それについて何を知っているの?とあなたはきくかもしれない。それに対して私はこう答える、いいか、これはジャーナリズムなんだ、アドリブでいい。できれば綴りを知ってる言葉を使えばいい。確かに以前よりも制限されている。では、いってみようか。

ロシアはなぜウクライナに侵攻したのか?米国のメディアとは逆に、今回の侵攻はいわれのないものではない。

1991年のソビエト連邦崩壊以来、米国はNATO(米国の派兵作戦)をロシア国境近くまで押し進め、5年生の地理を習った人なら誰でもわかるような明らかな軍事包囲網の計画を進めてきた。黒海に面したロシア以外の5カ国のうち、トルコ、ルーマニア、ブルガリアの3カ国が現在NATOに加盟している。米国はウクライナとジョージアを取り込む方向で動いている。ジョージアの次はアゼルバイジャンと、イランやカザフスタンにアクセスできるカスピ海に米軍を置くことになる。これが長期にわたって計算された侵略行為だとわかる米国人はどれくらいいるだろう。コーカサスを知っている米国人は10%?15%?くらいだろうか。

中国がメキシコに軍事基地を置いたり、キューバに中国やミサイル部隊を設置するのを米国が許さないのと同じように、プーチンは何度も何度も、ロシアは国境に敵対的な軍事力を許すことはできないと言った。でもワシントンは突き進んできた。ロシアは「もうたくさんだ」と言った。要するに戦争を引き起こしたのは米国だった。

このようなことをフォローしている人たちの間では、今回の侵攻について2つの見方がある。1つは、プーチンがハッタリをかましたとワシントンが考えたが、そうではなかったというもの。2つ目は、米国は意図的にロシアにNATOのウクライナ進出を認めるか(これはワシントンの世界帝国にとって大成功)、または戦うか(これもワシントンにとっては結果的に大成功)のどちらかを選ばせたというものだ。

2つ目の見解からすると、米国は一見したところ少なくともロシアに対して驚くべき地政学的勝利を収めた。ノルド・ストリームIIは阻止され、ロシアには致命的な制裁が課せられ、多くの銀行がSWIFTから追い出され、ヨーロッパとアジアの経済統合は減速または逆転し、ドイツは再軍備(主に米国の高価な兵器を買うということ)に1130億円を費やし、ヨーロッパは高い米国のLNGを買わなければならず、ヨーロッパのエネルギーは米国に依存することになった。これらが数日のうちに、米兵が一人も死ぬことなく行われた。少なくともこれはバージニア・ニューランドが仕組んだと思われる。彼女はライ病にかかった消火栓のように見えるが、実際はマキャベリストのようだ。

次の犠牲者は中国だ。分割統治。少なくとも理論的には。同時にJCPOA(イラン核合意)を復活させ、経済的なお飾りを使ってイランを北京から引き離そうとするだろう。

ここでいくつかの前後関係が必要になる。ワシントンが国際的に行うことはすべて、米国のおもに軍事的な世界覇権を維持することを目的としている。これにはいくつかの要素がある。

まず、軍事的優位性。これには世界中にある何百もの基地、海軍の覇権、莫大な軍事費などが含まれる。軍事費は国内のニーズを犠牲にしてでも維持されるし、増額されるだろう。

2つ目は世界のエネルギー供給のコントロールである。米国は膨大な石油埋蔵量を持つベネズエラを飢えさせ、服従させようとしている。服従とは、米国支配の石油メジャーにベネズエラの石油を搾取させることである。米国は、イランとその膨大な埋蔵量に対して同じことをしようとしている。クウェートとサウジアラビアに軍隊を置き、シリアの油田を没収し、リビアを潰し、といった具合だ。ヨーロッパの属国がノルドストリームIIを通じてロシアのガスをさらに購入しないようにすることはこのエネルギー支配の一部であり、重要な部分である。

3つ目は、これは極めて重要で、ユーラシア、つまり「EU」を、中国が一帯一路で考えているような、大陸をまたぐ広大な貿易地帯に合体させないことである。手短に説明するにはあまりにも多くの主題があるが、いくつかをあげると、中国は爆発的な成長を遂げている製造業大国である。経済力はすべてのパワーの基礎である。中国は大陸内の通信網で優位性を持っている。米国がほとんどアクセスできないアジアに、鉄道、光ファイバー、高速道路、パイプラインを建設することができるのだ。中国には営利目的の経済があるためお金があり、米国にはそれがない。中国の巨大な市場と製造業が、米国のヨーロッパ支配をゆるめ始めていたのである。ユーラシア大陸の統合は阻止しなければならない。

4つ目はドルである。ワシントンはドル、IMF、SWIFT、そして国際金融システム全般を支配している。この支配力を武器に、ベネズエラ、イラン、キューバ、北朝鮮、そして現在のロシアといった国々の経済を麻痺させ、制裁を加えるという残忍な手段を使っている。これを見ている他の国々は怖がっている。ワシントンはこの井戸に何度も足を運びすぎたかもしれない。ベネズエラの金準備を没収し、今度はロシアの金準備を凍結させ、この処置をうけないですむ国はないと警告を発している。私の勝手な推測だがこれは米国にとって1619年以来最悪の失敗となるかもしれない。なぜなら、他の決済システム(中国のCIPS、ロシアのSPFS、そして来るべきデジタル人民元)への模索を大きく加速させるかもしれない。米国は全財産を賭けていると私は思う。

世界はそんなところだ。一方で、米国は不可逆的な退廃に沈みつつある。それはいずれ、いや、近いうちに、その国際的地位に影響を及ぼすに違いない。世界の経済的、技術的な重心が東のアジアに移ると、内部崩壊した米国は帝国を維持することができなくなる。考えてみよう。

ワシントンの貨幣印刷は、破綻した社会に特徴的な貨幣の堕落に相当し、高いインフレと破滅的な国家債務をもたらす可能性がある。有権者は、本質的に同じ2つの政党のうち、どちらがもう一方の政党のような振る舞いをしないか探そうとするので政治的な混乱が起きるだろう。不安は増大するだろう。ドルに対する海外の信頼は低下するだろう。

米国は膨大な貿易赤字に苦しんでおり、その大部分は中国に対するものだが、米国はもはや必要とするものを作っていないため、どうすることもできない。半導体のようなニッチな市場を除いて、製造業を復活させることはできない。なぜなら米国にはもはや必要なエンジニアも訓練された労働力もなく、米国の人件費は中国より高いので、製造業を米国にもどすことはインフレを引き起こす。逆に、安価な中国製品の輸入はインフレを抑制する。

オフショアリングに加え、ウォール街や軍事に国富が大量に流れたことで、アパラチアやラストベルト、ディープサウスの田舎では本当の貧困が発生している。その結果、絶望した人々の間で年間約10万人のオピオイドによる死亡が発生している。同時に、ロサンゼルス、シアトル、サンフランシスコ、オースティン、セントルイスなどでは、ロサンゼルスで6万人、ニューヨークで5万人ともいわれる大規模なホームレスの集合体が出現し、地下鉄を危険なものにしている。ブッシュ世界の状況はおそらく政治的安定をもたらさないし、政府がそれに対して無関心であることも同様である。

犯罪は制御不能となり、健全な政治を示していない。シカゴでは年間700件、ボルチモアでは300件、その他の地域でも同様の数の殺人が日常化しており、犯人と殺された者のほぼ全員が黒人である。日本や韓国のような国から見れば、これは野蛮なことに違いない。このような状況は第一世界のものではない。

米国の人種問題は深刻だ。南部の国境は開かれており、南西部の州はラテン系が多数を占めるか、まもなく多数を占めるようになる。これは人種が仲良くしているように見えるのでそれほど悪いことではないが、重い経済的コストなどを課している。同時に全米の都市には巨大な黒人居住区があり、ひどい識字率、若者の将来性のなさ、これらすべてが明らかに改善不可能である。白人{1}やアジア人{2}に対する人種的攻撃は増加し、ほとんどすべての場所で、ほとんどが黒人による人種的殺戮が行われている。あらゆるレベルの政府は刺激すれば都市を焼き尽くすとわかっている黒人を恐れ、そのために税収源が都市から逃げ出し、事態はさらに悪化している。

これが潜在的な憤りを増幅させる。大規模なホワイト・ナショナリストの運動は米国に非白人を入れないことを望んでいる(ちょっと遅すぎる)。共和党の商工会議所は安い労働力を求めて不法滞在のラテン系を増やしたいが、口ではそうは言わない。ハイテク部門は東アジアやインドからの移民を増やしたいと考えている。なぜなら米国の教育制度は破綻しているため、ますます外国人への依存度が高まっているのだ。

全体として、政府は弱く、犯罪、暴動、略奪を防ぐことができない。ワシントンは支配しているのではなく支配されているのであり、特別な利害関係者のための店舗経営である。選挙で政策が変わることはなく、戦利品の分配が行われるだけである。大統領は、ウォール街、イスラエル、軍事予算を守る、という3つの必須任務を遂行するが、それ以外はあまりしない。

中国とは対照的に、米国の学校教育は低レベルである。公平性の名のもとにあらゆる場所で優秀性が阻害されている。

上位の高校からカリフォルニア工科大学まで、エリート校ではアジア系が優勢になりネイティブの白人の才能は減少している{3}。SATやMedcatsのような才能を測る指標は廃止され、軽視される。英語の文法や算数は人種差別として排除される。このどれもが、米国の将来の競争力を向上させることはないだろう。

最後に、メディアはコントロールされている。「ロシア人が来る、中国人が来る、イラン人が来る、グアテマラ人が来る…」とテレビで言われれば、多くの国民が何でも信じてしまうためワシントンは海外で自由に行動できる。国内では検閲によって何が起きているのか国民に知らせないようにして、とりあえずは蓋をすることができるだろう。問題について議論したり言及することを妨げることで、何も起こらないようにしているのだ。私は、これがゼンマイを巻くような影響を及ぼすのではないかと思っている。

これらすべてはどこに向かうのだろうか。

バイデンは、今は1960年で、米国が確固たる軍事的・経済的優位を享受し、国民が彼をしっかり支持しているかのように振る舞っている。これは老いた冷戦戦士である彼の記憶にある世界だ。彼は、結果的に米国に何の影響も与えず、自分の好きなようにできると信じているようだ。これは真実かもしれないし、十分に真実かもしれない。おそらく彼はロシアが国内の反乱で崩壊するか、単に米国に降伏すると信じているのだろう。私はそうは思わない。

しかし、これは全くの憶測だが、ロシアがヨーロッパからガスや石油、小麦、ネオンガスなどを遮断したらどうなるかはわからない。西側諸国は遠隔地の国々を爆撃することには慣れているが、何もせずに過ごすことには慣れていない。ヨーロッパがモスクワと貿易をしたいと思う前に、ロシアは貧窮で崩壊してしまうのだろうか?

もしバイデンとタカ派が中国に強硬策を取ると決めたら、米国は北京との経済的依存関係にあることに気づくかもしれない。 もし - また、非常に仮定の話だが - 中国が米国との貿易をすべて断ち切ったら、米国経済は即座に破綻するだろう。米国の棚にあるものはほとんど中国製である。すでに非常に不満を持っている米国民は様々な理由から爆発的に増えるだろう。フロイドの暴動を考えてみてほしい。中国もダメージを受けるだろうが、中国には他の市場があり、米国人よりも愛国主義の国民が結束している。

これらは私の考えである。おそらくあなたがお金を払っているだけの価値はあるだろう。

Links:

{1} https://www.unz.com/article/34-deaths-if-you-count-one-hmong-girl-definitely-not-killed-by-white-supremacists-february-2021-another-month-in-the-death-of-white-america/?highlight=kenn+gividen

{2} https://www.unz.com/mmalkin/who-murdered-all-the-asian-women-and-whos-covering-it-up/

{3} https://quillette.com/2021/08/19/as-us-schools-prioritize-diversity-over-merit-china-is-becoming-the-worlds-stem-leader/

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