No. 1416 ロシアは100年に2度、絶滅戦争に直面した

ロシアは100年に2度、絶滅戦争に直面した

By Mike WHITNEY

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絶滅戦争とは、国家の完全な消滅と国民の絶滅を目的とする戦争である。それは、「すべての精神的、物理的限界」が取り除かれ、戦略的目標が必要なあらゆる手段によって追求される戦争の急進的形態と定義される。 ルールや制限、道徳的な制約のない戦争である。 米国は、ロシアに対する絶滅戦争の初期段階にあり、その目的は、経済、文化、人口、国家の完全な破壊である。

NATOの拡大には5つの波があった。今、NATOはルーマニアとポーランドに入り、ミサイル攻撃システムを配備している。これが我々が話していることだ。我々は誰の脅威にもなっていないことを理解してほしい。ロシアが米国の国境やイギリスの国境に行ったのではない。行ってない。あなたがたが我々の国境に来て、こう言っているのだ。“ウクライナはNATOに加盟し、そこにシステムを配備することになる。ウクライナは軍事基地や攻撃システムを配備するだろう”。我々が心配しているのは我々の安全保障だ。それが何を意味するか、わかるだろうか?” ウラジーミル・プーチンの記者会見、YOUTUBE{1}

質問- ロシアのウクライナ侵攻に正当性はあるのか?

答え-ある。ロシアはウクライナの展開に脅かされていたので、ウクライナに対して、今やっていることをやめるか、その結果に苦しむか、どちらかにするように言った。ウクライナはその警告を無視することを選んだので、ロシアは侵攻した。それが基本的に起こったことだ。

質問-しかし、それがどのように侵略を正当化するのか。結局ウクライナは主権国家であり、主権国家は自国の領土で好きなことができるはずだと思うが。

答え- いいえ、それは間違っている。ウクライナは自国の領土で好きなことをする権利を持っていない。ウクライナと50カ国以上の国が、他国の安全保障を犠牲にして自国の安全保障を強化しないという条約(「1999年のイスタンブールと2010年のアスタナでのOSCEサミットで」)に署名している。これは「安全保障の不可分性」と呼ばれるが、現実的には「あなたの家の私道に砲弾や戦車を置いて、私の家に向けてはいけない」という意味だ。なぜならそれは私の安全保障を損なうことになるからだ。わかるだろうか?国家にも同じルールが適用される。

もしこの問題についてあなたの理由付けを受け入れるなら、ジョン・F・ケネディにはキューバに核兵器を配備したフィデル・カストロに対抗する権利はなかったと結論づけなければならない。しかし、カストロの行動は米国を核攻撃の危険にさらすので、ケネディにはその権利があった。言い換えれば、カストロは米国を犠牲にして自らの安全保障を向上させる権利はなかった。これと何ら変わりはない。プーチンには、ロシア国民の安全と安心を守る権利があり、実際、国民はそれを指導者に期待している。

質問―あなたの言ってることは筋がとおらない。プーチンはウクライナに侵攻した、だからプーチンは侵略者である。

答え- 私はそうは思わないが、議論するのではなく、例えを使おう。例えば、私があなたの頭に銃を突きつけて、脳みそを吹き飛ばすぞと脅したとしよう。しかし、あなたはとっさに銃を手に取り、私の足を撃ち抜いた。この場合、誰が悪いのだろうか?

私に責任があると思うのなら、その通りだ。この場合、被害者は単に自分の安全を確保するために最善の方法で反応しただけだ。それは正当防衛と呼ばれるもので、完全に合法である。

この基準は、ロシアにも適用できる。ロシアの「特別軍事作戦」は、自国の安全保障を守るための先制的な措置である。ロシアはウクライナの領土を狙ったものでも、ウクライナの内政に干渉しようとするものでもない。ロシアの唯一の目的は、ワシントンによって作り出された存立危機事態を終わらせることだ。NATOにウクライナに殺傷力のある武器を満載するよう促したのはワシントンだ。東ウクライナでロシア系民族を脅かしていた極右過激派に武器を提供したのもワシントンだ。ウクライナのゼレンスキー大統領にミンスク合意を破棄させ、核兵器開発を公然と支持するように仕向けたのもワシントンだった。2014年にクーデターを起こし、民主的に選出された大統領を退陣させ、米国の傀儡に置き換えたのもワシントンである。そして、完全に自作自演の挑発行為を受けて、ロシアを孤立させ、悪者扱いするためにあらゆる手を尽くしたのもワシントンだ。要するに、ロシアの頭に銃を突きつけ、脳みそを吹き飛ばすと脅したのはワシントンなのだ。

そんなこともわからないのか、それとも洗脳されているのか、プーチンの戦車が国境を越えたときからこの大混乱が始まったと思っているのか?CNNの熱心な宣伝マンでさえそんなバカげたことは信じていない。この危機は、容赦ない兵器の増強と、次から次へと起こる計算された扇動から始まったのだ。 ロシアは意図的に、繰り返し挑発された。このことに異論を挟む人はいないだろう。

ところで、プーチンはキエフの政府を倒し、モスクワが支援する手先の政府に置き換えるなどとは一言も言っていない。彼の計画は、”非軍事化 “と “非ナチ化 “を目指しているのだ。なぜだろうか?

それが彼の唯一の目的だからだ。 彼は、NATOと米国がウクライナに輸送している(紛争を煽るための)武器を破壊し、ロシア連邦の宿敵であるナチスの過激派を撲滅したいと考えているのだ。

それは理不尽なことなのだろうか?もしメキシコがアルカイダやISISの拠点をグアダラハラやアカプルコで公然と活動させたら、アメリカは今ロシアがとっているのと違う行動をとると思うだろうか?バカなことを言わないでほしい。彼らは平気でその地域全体を爆撃して粉々にするだろう。

あなたはそれも「侵略」と呼ぶのだろうか?

呼ばないはずだ。ロシアが介入を “特別軍事作戦 “と呼んでいるように、ワシントンも “特別軍事作戦 “と呼ぶだろう。

問題はロシアが何をしているかではなく、米国に対しては常に異なる基準が適用されることだ。私が求めているのは、マスコミのヒステリックな騒ぎを無視して、人々が自分自身の批判的思考力を働かせて、この問題について自分自身で判断することである。

ロシアは誰もがするように、自国の安全を確保するために最善の方法で対応したのだ。それが自衛というものだ。ロシアは大きな被害や死の脅威から自らを守り、現在、自国の安全を再確立する過程にある。ウクライナはロシアの正当な安全保障上の懸念を無視することを選択し、そして今、ウクライナはその代償を払っている。ロシアの作戦に先立つ出来事について、WSWS(World Socialist Web Site)の記事から優れた要約を紹介しよう。

メディアでは侵略はいわれのない行動であるとされているが、それはNATO諸国、特に米国とその傀儡であるウクライナ政府による攻撃的な行動を隠すための捏造である。

     米国は、ヨーロッパとアジアにおいて、ロシアを包囲し服従させることを目的とした戦略を追求したソ連の官僚とロシアの寡頭制が信じていた以前の約束に真っ向から反し、NATOはウクライナとベラルーシを除く東ヨーロッパのほぼすべての主要国を含むまでに拡大した。

   2014年、米国はキエフで極右クーデターを画策し、ウクライナのNATO加盟に反対していた親ロシア政権を倒した。2018年、米国はロシアや中国との「大国間紛争」に備える戦略を正式に採用した。2019年には中距離核ミサイルの配備を禁じたINF条約から一方的に離脱した。ロシアとの戦争準備とウクライナの武装化は、2019年に民主党がドナルド・トランプを弾劾する最初の試みの中心になった。 

    この1年…バイデン政権はロシアに対して無謀にも挑発をエスカレートさせた…。 これを理解する鍵は、2021年11月10日にアントニー・ブリンケン米国務長官とドミトロ・クレバ・ウクライナ外相が署名した「米・ウクライナ戦略的パートナーシップ憲章」である…。 

    この憲章は、クリミアと分離主義者が支配するドンバスを「奪還」するという軍事目標を明確に宣言した2021年3月からのキエフの軍事戦略を支持し、それによって東ウクライナの紛争解決のための公式枠組みであった2015年のミンスク合意を破棄した …

   また、ワシントンは「ウクライナが NATO の 機会拡大パートナーとしての地位を最大限に活用し、相互運用性を促進する努力」、つまり NATO の軍事指揮機構への統合を明確に支持した。

    ウクライナがNATO非加盟であるというのは今も昔も、どう見ても虚構である。同時にNATO勢力は、ウクライナが正式に加盟していないことを、すぐに世界大戦に発展するわけではないロシアとの対立を煽る機会として利用したのである。

     米国は、ウクライナのファシスト勢力がロシア軍と住民の反対派双方に対するショック部隊として主要な役割を果たすことを十分に認識していた。ファシストのスヴォボダ党からネオナチのアゾフ大隊に至るまで、彼らの子孫は現在、ウクライナの国家と軍に深く溶け込んでおり、NATOの武器で重武装されている。

     ウクライナを殺戮の場とし、ロシアとの戦争の発射台とするという誓約と引き換えに、ウクライナの寡頭制がワシントンからどんな約束をしてもらったかは、歴史家が明らかにすることになるだろう。しかし、1つだけはっきりしている。クレムリンとロシア軍参謀本部は、この文書を差し迫った戦争の告知として読まずにはいられなかったのだ。

 2021年を通して、そして侵攻の直前の数週間、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのNATO加盟と欧米列強による武装化がロシアにとって「レッドライン」を構成すると繰り返し警告し、米国とNATOに「安全保障」を要求している。

 しかし米国はこれらの声明を蔑ろにし、NATOはロシアの国境で次々と大規模な軍事演習を行った。戦争に至るまでの数週間、バイデン政権はロシアの侵攻が迫っていることを絶えず警告しながら、それを回避するための外交努力をせず、むしろそれを誘発するためにあらゆることを行った。{2}

 さて、この事件の概要から何が読み取れるだろうか?

モスクワをウクライナ戦争に巻き込むという明確な目的のために、ワシントンがロシアの安全保障を損なうためにあらゆる手段を講じたことがわかる。それが最初からの目的だった。米国は、ウクライナのNATO加盟がプーチンの「レッドライン」の一つであることを知っていたので、米国外交当局は、プーチンのレッドラインを逆手に取ることにしたのである。彼らはウクライナを実質的なNATO加盟国として扱い、名目だけは非加盟とすることでロシアが侵攻する十分な挑発行為になると思った。それが計画だったし、その計画はうまくいった。

この1年、ウクライナには殺傷力の高い兵器が次々と運び込まれた。戦車を破壊したり飛行機を撃墜できる重火器である。同時にウクライナの戦闘部隊と将校団は、NATOのアドバイザーから定期的な訓練を受けた。また、ウクライナ国内および欧州各地でNATO部隊と頻繁に合同軍事演習を行った。(今年だけでも少なくとも10回の合同軍事演習が予定されている)。この12カ月間、NATOの専門家はほぼ常時ウクライナ領内に滞在し、部隊統制システムはすでに完全にNATOに統合されている。「つまりNATO本部はウクライナ軍に対して部隊や分隊に至るまで、直接命令を下すことができるのだ」。

また、ウクライナの「飛行場網は整備され、空域は米国の戦略機や偵察機、ロシア領内を監視するドローンの飛行に開放されている」。

つまり、WSWSの著者が指摘するように、「ウクライナのNATO非加盟は(主に)虚構」なのである。ウクライナは正式な加盟宣言をしていないが、あらゆる面でこっそりと同盟に組み込まれているのだ。その結果、ロシアは西側国境で敵対する軍隊とその軍事インフラに直面し、国家の存亡に関わる危機に瀕している。プーチンの言葉を借りれば、「NATOの軍事インフラは我々の喉に突き刺さるナイフ」なのである。

したがってプーチンの分析は、基本的に我々の分析と同じで、ロシアは自己防衛のために行動しているということだ。プーチンは、ワシントンが自分の頭に向けた銃をつかんだに過ぎない。それがいけないことなのだろうか?米国が地政学的なアジェンダを中断することなく追求していくために、ロシア全国民が常に身の危険にさらされなければならないのだろうか?

いいえ、どの国も基本的な安全保障と暴力の脅威から安全保障と保護を受けるに値する。その点では、ロシアも他の国と何ら変わりはない。そして、そうした基本的な安全保障の懸念が、(ゼレンスキーのような)Tシャツを着た操り人形によって無視されたら、その国は自分たちの手で問題を解決しなければならない。それ以外に選択肢があるだろうか?国家の安全保障は、国家の最優先事項であることに変わりはない。 すべての国家においてそうだ。「世界の安全保障の保証人」が、(キング牧師の言葉を借りれば)「今日の世界における最大の暴力の提供者」でもあることは残念なことである。しかしそれこそが今起きている困難な状況の悲しい皮肉なのだ

しかし、なぜ米国はプーチンにウクライナを侵略させるために、これほどまでに手間をかけたのだろうかと思うかもしれない。結局のところ、最も被害を受けるのはウクライナ国民であり、この国は今後何年にもわたって破壊的で流血のNATO軍事作戦の中継地となる可能性が高いからだ。ここでの戦略的目的は何なのだろうか?

政治アナリストで元欧州議会議員のニック・グリフィンは、Unz Reviewの最近の記事で、このように要約している。

 この危機におけるNATOの戦争屋の根本的なターゲットは、ロシアではなくドイツであり、そして中国の「一帯一路」構想である。彼らはドイツを抑え、中国を締め出そうとしている。この両方ができなければ米国は世界の中核的な経済ブロックから何千マイルも離れた、さび付いた孤島になってしまうだろう。

     またこの展開は世界の金融基軸通貨としてのドルの終焉を意味する…。NATOのロシアへの攻撃は、自信からではなく、恐怖からきている。わずか30年の間に、我々は「歴史の終わり」から、迫り来るドル帝国の終焉へと向かっているのだ…。

     ロシアをウクライナとの戦争に追い込もうとする試みは、実はドル帝国の地政学的利益を促進するためではなく、まさにその存続を賭けたものなのだ。 

そのため、彼らは戦争がしたくてたまらないのだ! {3}

グリフィンの言うとおりだ。ウクライナの戦争はウクライナに関するものではなく、地政学であり、特に世界舞台においてワシントンの力が着実に侵食しているということである。だからこそ、中国を包囲するために、ロシアを潰そうとするこの惨めな試みが見られる。 2月4日にプーチンと習近平が首脳会談において「インフラの連結」、高速鉄道、エネルギー資源の共同配分を通じて欧州とアジアを結びつける新しい「グローバル・ガバナンス・システム」を発表してから、さらに状況は悪くなっている。ロシアと中国は歴史上最大の自由貿易プロジェクトにおける同盟国であり、だからこそアンクルサムは全力で船を揺さぶろうとしているのである。以下は、カウンターパンチのアルフレッド・マッコイ氏の記事である。

5,300文字に及ぶ画期的な声明の中で、習近平とプーチンは「世界は重大な変化を遂げつつある」とし、「権力の再配分」と「リーダーシップへの要求の高まり」(明らかにそれを北京とモスクワがやろうとしている)を生み出していると宣言している。ワシントンの見え透いた「覇権主義への試み」を非難した後、両者は「民主主義と人権の保護を口実にした主権国家の内政干渉に反対する」ことで同意した 

   ユーラシア大陸における世界経済成長の代替システムを構築するため、二人のリーダーはプーチン大統領の構想する「ユーラシア経済連合」と習近平主席がすでに進めている1兆ドル規模の「一帯一路構想」を統合し、「アジア太平洋とユーラシア地域の相互接続性を高める」ことを計画した。両首脳は、両国の関係を「冷戦時代の政治・軍事同盟よりも優れている」と宣言し、毛沢東とスターリンの緊迫した関係を示唆した上で、両国の同盟には「限界がない・・・協力の『禁じられた』領域がないもの」と断言した。戦略的問題についてはNATOの拡大、台湾の独立に向けた動き、2014年に親ロシアのウクライナ大統領を追放したような「カラー革命」に断固として反対した 。{4}

これがウクライナ戦争とどう関係しているのか?

これは、アンクルサムがロシアを破壊することで中央アジアに権力を注ぎ、ワシントンのグローバルパワーの支配を維持しようとしていることを示している。次の世紀で最も人口が多く、繁栄している地域であるアジアを支配するのは誰か?ウクライナにおけるワシントンの行動を導いているのはその質問である。

簡単に言えば、ワシントンの計画はまずロシアを潰して、次に中国に移るということだ。これが、米国が史上最も包括的で悪質な制裁を課した理由である。そして本気を出したワシントンがロシア経済の息の根を止めるために始めた焦土作戦を目にしている。ロシア市場を暴落させ、重要な石油・ガス収入を削減し、外貨準備を凍結し、私有資産を差し押さえ、外国資本の流入を止め、数十億ドルのパイプラインプロジェクトを妨害し、資本市場へのアクセスを妨げ、ルーブルを崖から落とし、ロシアの指導者を悪者にし、国家共同体からロシアを追い出そうとしているのだ。またそれと同時に米国はウクライナへの殺傷力の高い武器の供給を増やし、CIAは反ロシアの反乱を起こすために利用される極右過激派への助言と訓練を続けている。

ワシントンのロシアに対するアプローチが根本的に変化したことは、もう明らかだろう。現在の戦略の獰猛さは、ロシア国家に対する頻繁でない小競り合いから、本格的な絶滅戦争に移行したことを示唆している。

Links:

{1} https://www.youtube.com/watch?v=MOkl2XgZlw0

{2} https://www.wsws.org/en/articles/2022/03/10/pers-m10.html

{3} https://www.unz.com/article/ukraine-implementing-minsk-accords-ending-conflict-very-last-thing-us-uk-want-ex-mep-says/

{4} https://www.counterpunch.org/2022/03/11/the-geopolitics-of-the-ukraine-war/

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