No.1429 アジアの “牙のない虎 “、日本にとって最後の決着をつける出来事

アジアの “牙のない虎 “、日本にとって最後の決着をつける出来事

https://www.strategic-culture.org (April 05 2022)

By デクラン・ヘイズ

日本の未来は好むと好まざるとにかかわらず、米国の第7艦隊が真珠湾に帰った時に東アジアの近隣諸国の一帯一路構想と共に歩むことになるだろう。

ベストセラーとなった私の『Japan:The Toothless Tiger』(牙のない虎 日本)の英語版が出版されてから20年が経過したが、その後起こったすべての出来事は、日本にとって東アジアは封じ込めることのできない火薬庫であるというテーゼを裏付けている。

中国の「一帯一路」構想は厳然と形になってきているが、南シナ海もまた然りである。最近ドイツと米国の巡洋艦に支援されたイギリスの護衛艦がこの海域を航行したが、中国の制裁に腹を立てているオーストラリアと同様、彼らは本気のプレーヤーではない。

この地域の強打者は、韓国、台湾、そして日本である。台湾は将来的な対戦について素晴らしい説明をしているが、中国の圧倒的な兵力に直面したらできることはほとんどない。台湾は東アジアのフェルディナンド公爵のような存在になるかもしれない。

しかし、韓国は依然として日本の心臓に突き刺さる本格的な短剣である。朝鮮半島には500万人以上の兵士がいて米国やロシアの兵力よりはるかに多い。極東ロシアの軍事司令部であるウラジオストクは北朝鮮からわずか50マイルしか離れていない。その結果、地政学的なライバル関係から韓国は地球上で最も軍事化された土地となり、米国が核兵器を固定し、装填したと(何度も)宣言している唯一の場所となった。断固たる攻撃からソウルを守ることはできないため、米海兵隊は沖縄に重点を置いている。沖縄は朝鮮戦争の最中、急遽退却した場所であり、おそらく再び退却しなければならない場所である。北朝鮮とその歴史的な支援者であるロシアや中国に対する緩衝国として日本は韓国を必要としているが、一帯一路構想は日本を疎外し、中国版「グレートゲーム」にとって日本はほとんど無用の存在である。

中国は自国の航路を守るために海軍の拡張を重要視しており、ワシントンと同様ブラックゴールド(石油)が自国の海岸に到着し続けるよう海軍を配備している。この政策が日本に脅威となることは北京にとって最大の関心事ではない。それよりも広大な国土を維持するという、はるかに困難な課題があるからだ。そのためには石油の供給を保証する強力な海軍と、国家目標を守り推進する不屈の精神が必要なのである。

中国が自由に発展を遂げてきたのとは対照的に、日本は台湾や韓国と共に米国の東アジア政策の属国として、米国の政治的・軍事的覇権と引き換えに経済発展を遂げてきた。そしてそのツケが回ってきた。

中国は絶対に負けられない大きな戦略ゲームをやっている。カザフスタンは中国がイランやイラクの豊富な油田にアクセスするためのうってつけの橋である。このような連携は中国の世界大国としての地位を高めることになる。また、欧米のためにカスピ海の石油を確保しようとする米国の努力も無駄になる。さらに中国は中央アジアの経済協力を確保し、新疆ウイグル自治区をなだめたいとも考えている。そこではエルドアンのイスラム教徒であるウイグル人の第五列主義者(本来味方であるはずの集団の中で敵方に味方する人々)が破壊活動をしているとされている。カザフスタンには約20万人のウイグル人が住んでおり、その最大都市アルマタには反対派イスラムテロ集団が拠点を構えている。中国はカザフスタンでの石油外交や、パキスタン、イラン、イラクでの武器外交を通じて、この米国が支援するISIS内部の脅威を制圧したいと考えている。

東ヨーロッパにおいてNATOが継続して好戦的であるため、中国がロシアや他の地域勢力とやっていたパイプラインのポーカーを一変させ、ロシアと石油資源の豊富なカザフスタンは中国と運命を共にしなければならなくなった。シベリアの石油は南下して中国に流れ、韓国と日本が望むなら彼らにも流れることになるだろう。

一方イランは、カスピ海とペルシャ湾に埋蔵される膨大な石油をアンクル・サムから奪い取るために中国に協力している。イランと中国がこの地域の石油の流れを支配すれば、米国はカスピ海だけでなく、ペルシャ湾の広大で重要な石油供給の支配権をも失うことになる。日本は早急に現状を見直したほうがいい。

中国のミサイルは、小さく分散した海兵隊でアジアの広大な地勢を軍事的に支配する米国の能力を無力化する。米国の前方展開政策拠点はあまりにも脆弱だからだ。アジアに前方基地がなければ米国の軍事力の集中はありえない。なぜなら兵器の保管はおろか、使用するために集結することさえできないのである。

この中国ミサイルに対する基地の脆弱性は、アジアにおける米国の唯一の軍事的弱点である。米国の強力な第7艦隊はアジアの陸上基地の損失を補うことはできない。第7艦隊は固定された基地のような軍事力や心理的効果を生み出すことはできないからだ。

その前方基地の中で最も重要なのが日本国内の基地である。グアムは米国本土と同様この役割を果たすには遠すぎる。沖縄は極めて重要で望ましい場所なのだ。そして米国の戦略的思索家にとって、中国のミサイルはこれらの基地が徐々に不必要なものになっていくのである。

中国はミサイル開発に膨大な資源を投入している。これは神経戦であり、時間と最終的には技術が、中国本土の側にある。この心理的な側面が、中国が弾道ミサイルを広く使用している理由であり、本質的に心理的な武器、いわば張り子の虎なのである。台湾は水陸両用の攻撃から身を守ることができるかもしれないが、北京の弾道ミサイル部隊による外科的ミサイル攻撃、あるいは外科的ミサイル攻撃の脅威から台北を守ることはより困難な仕事である。北京はこのことを承知で、適切と判断した場合にはネジを締めたり緩めたりし続けるだろう。

日本には弱点があり、それは今後数年間に日本が責任ある行動をとらなければ、中国に簡単にやられる可能性がある。日本は世界の主要国の中で唯一、政策の手段としての戦争を明確に放棄している国である。日本国憲法第9条第1項は、「国の主権的権利として」戦争を放棄している。9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明言している。

とはいえ、日本は非常に充実した「陸・海・空」の戦力を保持している。日本の軍事費は実に世界で3番目に多い。東京は兵器級の物質に変えるのが比較的簡単なプルトニウムを100トン以上備蓄している。日本の高速増殖炉(FBR)は、ウラン燃料から他のほとんどの国の軽水炉の60倍以上のエネルギーを搾り出す能力がある。言い換えれば、日本は米国とロシアの核兵器を合わせた数よりも多くの核兵器を製造する能力があるということだ。この核兵器は、何はともあれ、交渉の材料として非常に有効である。

日本の課題は空からの攻撃を受けることだったので、強力な対空・対弾道ミサイル防衛システムを開発した。日本のレーダーとトマホークミサイルの精度は、米国の原型をはるかにしのぐ。その他、小型化、自動化、通信、耐久性のある軽量な新素材の開発など、日本の強みは軍事力をさらに向上させている。

日本はプルトニウムを購入したことで、中国のブルーウォーター・ネイビーに対抗するために必要な原子力潜水艦の技術を開発することができた。しかし、数隻の原子力潜水艦と数基のミサイル防衛網があっても、日本が難攻不落になるわけではない。

奇妙に思えるかもしれないが、こうしたニッチな分野での日本の専門性はワシントンでは懸念材料となっている。 米国は日本がその専門技術を輸出した場合、市場シェアを失うことを恐れている。必要な専門技術を開発するためには、日本は、イスラエル、スウェーデン、南アフリカなどの小国の例を真似て、積極的に輸出をしなければならないだろう。米国は日本が自国の犠牲の上に輸出受注を獲得することを恐れているのである。

日本の軍事転用可能な商業分野の技術力は、現在、世界の武器市場において、米国生産者が享受している卓越した地位を脅かすものである。これは皮肉なことで、歴史的に米国は日本のデュアルユース能力の開発を奨励してきた。例えば、ラジオ産業からのスピンオフが、日本の商業テレビ産業を活性化させ、最終的に米国の競争相手を消し去った。

しかし日本の防衛産業は日本全体の工業生産高の中では取るに足らない存在である。日本の防衛産業は、国内総生産(GDP)の1%未満であり、三菱重工業(MHI)や川崎重工業(KHI)のように、防衛産業に最も深く関わっている企業でさえ、分離独立した技術的利益によって存在している。

日本には特に強い知識の木があるが、森は圧倒的に米国に属している。日本は米国やEUのようなメジャーリーグになるための物流の深さがない。日本の産業は現代の重要な技術で世界的な地位を確立しているが、防衛産業は遅れている。システムレベルでは軍事技術の進歩は日本が追いつく能力を超えている。

言い換えると、日本には自立した軍需産業はない。現在、防衛産業が工業生産全体に占める割合は0.6%未満であり、日本全体の文脈から見ればほとんど取るに足らない量である。日本が必要とする軍事物資の約90%を自国内で生産しているが、その多くは米国企業のライセンスによって製造されており、相当量の技術がブラックボックス化されている。

つまり、東アジアは “筐体 “の状態にある。日本には勇気も道具もないが、韓国、台湾とともに、自律的な防衛システムだけでなく自律的な外交発言力を身につけなければならない。日本の将来は、好むと好まざるとにかかわらず、どんなに時間がかかっても米国の第7艦隊が真珠湾に帰港した時、東アジアの近隣諸国による「一帯一路構想」と共にある。_____

High Noon for Japan, Asia’s Toothless Tiger