ウクライナに米英軍が派遣されるのは時間の問題
by Martin Jay
超大国がいかにして、とりわけ多くの兵力を相手に戦い敗北したかを、我々は歴史書から学んでいない。
アメリカではジョー・バイデンがウクライナに330億ドルという途方もない額の軍事援助の拠出を求めたというニュースが報じられているが、大西洋の両側で自分たちのしていることをもう一度考えるべきである。これはウクライナで勝つための戦略なのだろうか?この戦場はロシアを倒すためにゼレンスキー政権に有利なように軍備のバランスを傾けることだけが目的なのだろうか。西側メディアがひたすら掲載し続けるゼレンスキー氏から西側への嘆願文を見ると、彼の要求と提供されているものが一致していないように見え、このことは基本的な質問を投げかける議論が西側メディアで起きるべきである。ウクライナ軍が弱体化する中で、より多くの装備を送るという現在の戦略は、実は送った側にとって逆効果にならないのか?
この軍事戦略について少し考えてみてほしい。ロシアが確実に支配権を握ろうとしているドンバスでの血なまぐさい戦いや、マリウポルのような他の場所では、食料と弾薬が尽きて、強硬派のウクライナ軍司令官でさえソーシャルメディア上で敗北を受け入れているのに、キエフにさらに軍備を送ることがウクライナ人の勝利にどうつながるのだろうか?
もしあなたが腐敗(汚職)を理解していれば、わかるだろう。ウクライナはこれまでも、そしてこれからも腐敗のチャンピオンで、戦争が起きると汚職は10倍にも膨れ上がるのだ。また、戦地に赴き、軍隊が敗北するとどうなるかを目の当たりにしたことがあれば、よりわかりやすいだろう。例えば、イギリスが送っている100の装甲輸送車に何が起こるか、現実を見てみよう。あるいは、ほとんどの西側諸国がこだわっている対戦車兵器でさえもだ。問題はこうである。例えば100の装甲車のうち、それらの車両がどうなるかを控えめに見積もると、半分はロシア側に渡る。ロシア軍がウクライナ兵を倒してその25%が失われれば、彼らがそれを奪取した場合、その代償は許容範囲内だと多くの人が主張するだろう。しかし、もう25パーセントは、少なくとも、自分たちの支持者や民兵の政治的ネットワークを養う必要のある腐敗したウクライナの役人が、ロシアやその他のビジネスマンに売ることになることを理解しなければならない。100台のうち50台がロシア人の手に渡り、残りの50台は彼らの手に委ねられたら、どうなるのだろう?自滅的な予言に聞こえないか?しかもこれはいいほうだ。もし半数以上がロシア軍の手に渡ればロシア軍は米国とその同盟国から与えられた道具を使ってウクライナ兵を打ち負かすことになるだろうという見方もある。
これは一言で言えば、飛行禁止空域を設定せずハードウェアの提供だけ戦争に協力することの問題点である。ウクライナに必要なのは、ロシアがシリアで持っていたような地上部隊を支える重要な航空支援である。ウクライナにいくらハードウェアを送ってもロシア軍に勝つことはできない。私たちは、超大国が、とりわけ、戦っていた部隊の数の多さによって敗北したという歴史書から学んでいない。
ベトナム戦争のときベトコンたちは、航空戦力で勝る米軍と戦っていた当初からこのことを知っていた。彼らには強い意思があった。そして数が多かった。第二次世界大戦末期、連合国がドイツ軍を打ち負かしたのは、数が多かったからだ。連合国軍の兵力と戦車の数は、ドイツ国防軍の優れた戦車と勇敢な将校に打ち勝ち、あらゆる困難を克服して素晴らしい戦いをした。アメリカのシャーマン戦車は速度が遅く、効果も低く、優れたパンツァーに事実上どこでもぶつかるとガソリン爆弾のように爆発したため、ドイツの将校たちはイギリスのライターにちなんで「ロンソン」と呼んだほどだった。ヒトラーが市民が操作できるように設計した悪名高い対戦車兵器、パンツァーファウストでさえ、ベルリンでは十分な数があってもソ連戦車に勝つことはできず、首都はあっという間に奪われてしまったのである。
ウクライナでは、勝者は長期戦にそなえて腰を据えてそこで国を支配することができる者である。兵士ではなく武器を送り続けるのであれば、戦争が長引いたとしても、そしてそれを両者が望んだとしてもロシアが勝者になることを確認するために必要なのは数学的な方程式だけだ。軍需品を送り続けるが、それを使う兵士は送らないというのは失敗した政策の広告でありプーチンを喜ばせるに違いない。バイデンやボリスのように、プーチンは長期的な視野で物事を考え、勝利の兆しが見えない消耗戦に何十億ポンドもの税金を投入する戦略を西側が維持することはできないと考えている。また、西側諸国は同様にプーチンは必要な量の軍備を維持することはできないと考えている。しかし英米が送り込む戦車や車両、ロケット砲がプーチンの手に渡るだけなら、それは誤った戦略かもしれない。最近EUの一部の国々がガス代をルーブルで支払うというニュースがあったが、プーチンはウクライナで、NATOよりもずっと長い間ゲームをすることができると戦略を練っているのかもしれない。
残念ながら、このような考え方は私たちをさらに恐ろしい場所に導いていく。バイデンが議会で、ロシアの年間軍事予算の半分に相当する前例のない支援策を支持するよう要請しているように、ボリス、バイデン、マクロン、ショルツといった西側の指導者たちは最も貧しい人々が燃料費の高騰や新税に直面する最も厳しい経済状況の中、彼らのお金が、長期的な計画に固執するあまり終着点がないように見える戦争に注ぎ込まれている理由を説明するのに苦労することになるだろう。彼らの答えは、軍事援助がロシアを助けているようにさえ見えようになってしまえば、自分たちは解決策を持っている、というだろう。彼らは過失を認め、ウクライナにハードウェアを送るという現在の戦略には欠陥があることを認めるだろう。それを守るために自国の兵士も送る必要がある、と彼らは主張するだろう。シリアでやったように、最初はウクライナ兵に道具の使い方を教えるために、イギリスとアメリカの特殊部隊の兵士を数人送ることから始まるかもしれないが、それが増える可能性がある。悲しいことにこれは避けられないことと私はみている。アメリカのウクライナ作戦は危険な展開にあり、少なくとも8年前にさかのぼることができる。それは、プーチンを倒すことだけが目的なのだ。実際、ウクライナで代理戦争を起こし、その目的のためにプーチンを引き込むという戦略だったと考えるアナリストさえいる。ボリス・ジョンソンが最近発表した7000人の英軍兵士の派遣について、私たちは憂慮すべきだ。これはイギリス軍がそこにいるという考えに自国民を慣れさせるための第一段階であり、最終的にはウクライナに派遣される。その頃にはイギリスで家を失う人の数が急増し、マスコミは彼に背くようになる。同様に、バイデンはNATOがプーチンに打ち勝つことで2期目が与えられるという希望にしがみついているが、彼の健康状態については多くの疑問が残っている。