生物兵器帝国の嘘
by Pepe Escobar
胸を締めつけてくる この根はなんだ? どんな枝が
石ころだらけのガラクタから育つというのか? 人間の子よ
君には想像できないし 語れないだろう 君が見知っているのは
壊れた不完全な像の集積にすぎない そこでは太陽が容赦なく輝き
日差しを避ける朽ち木の影もなく コオロギの鳴き声が安堵を
もたらしもしない 乾いた石に水の気配はない
たったひとつ 赤い岩のもとに影がある
(この赤い岩の影に入りなさい)
まだ見たことのないものを 君に見せてあげよう
それは朝の日差しのなかで君の後ろについてくる影ではなくて
夕暮れの長く延びて君を迎えてくれる影でもない
君を恐怖に突き落とす ひとつかみの塵を見せてあげよう
T.S.エリオット 「荒地」 死者の埋葬
21世紀早々の主要な突破口の一つにすでに位置づけられているこの「一握りの塵の中の恐怖」の片鱗を、今週、ロシアの放射線・化学・生物防護部隊のイゴール・キリロフ部長が発表した。
ウクライナにおける米国の生物兵器の研究について集められた証拠の暫定的な結果は、まさに驚くべきものだった。以下が主な内容である。
1米国の生物兵器空論家は民主党の指導部で構成されている。非政府のバイオテクノロジー団体と連携してクリントン、ロックフェラー、ソロス、バイデンの投資資金を使い、彼らはさらに選挙資金から利益を得ていたがそれらはすべて隠蔽されていた。これと並行して、彼らは生物兵器プログラムに直接連邦予算から資金を供給するための法的根拠を作り上げた。
2新型コロナワクチンメーカーであるファイザーとモデルナ、そしてメルク、さらにギリアド(ペンタゴンと関係があり、「知らないと知っていること」で有名なドナルド・ラムズフェルドが会長をしていた)が直接関与していた。
3ウクライナの生物研究所では、米国の専門家が国際的な安全基準を無視して新薬のテストを行っていた。キリロフによれば、このように行動することで「西側企業は研究プログラムのコストを大幅に削減し、大きな競争力を得ることができる」のだそうだ。
4キリロフによれば、「米国の製薬会社や国防総省の請負業者とともに、ウクライナ政府機関が軍事バイオテクノロジー活動に関与しており、その主な任務は、違法行為の隠蔽、野外および臨床試験の実施、必要な生体材料の提供」であったという。
5ペンタゴンは、生物兵器の製造という点だけでなく、抗生物質耐性や特定の地域の住民に特定の病気の抗体が存在するという情報を収集するという点でも研究の可能性を広げているとキリロフは指摘した。ウクライナの実験場は、いわゆる「国際社会」のコントロールから事実上外れていたのである。
これらの発見は十分文書化されていて、膨大な「合法化」された生物兵器ビジネスが米国の政治的最高レベルに達していたことを示唆するものである。ロシアは世界世論のために徹底的に正体を暴くつもりであることは間違いない。まずはおそらくドネツクに設置されるであろう戦争犯罪法廷において行われるだろう。
ウクライナで行われている米国の生物兵器プログラムは、Z作戦の開始につながった上位3つの理由の1つであった。そのほかは、ドンバスに対するNATOの電撃作戦の阻止と、キエフが核兵器開発を再開することを望んでいることである。ロシアにとって、この3つがレッドライン(平和的解決から軍事的解決へと移るその一線)なのだ。
収集された証拠が強力であることはプーチン大統領の慎重な戦勝記念日の演説{1}として人々が解釈したものと直接的に相関している可能性がある。クレムリンはハッタリをきかせたりしない。大げさなレトリックよりも、現地の事実(生物兵器)の綿密な提示を優先するのは確かだろう。
ノルド・ストリーム2の復活
ドミトリー・ポリアニスキー国連次席代表は、ロシアが国連安全保障理事会の公開会合を開き、ウクライナの米国の生物研究所に関するさらなる証拠を提示するよう要求していることを明らかにした。この会合を米国が拒否しても、その証拠はロシアによって国連の記録に登録されることになるだろう。
これらの動きはウクライナのEU加盟の可能性についてコメントした際にポリアニスキー氏自身が示唆したように、ロシアと米国/西側集団の間に外交の余地が全く残されていないことを示している。「EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表ボレル氏が「この戦争は戦場で勝つべきだ」という発言をし、EUが(ウクライナへの)武器納入のリーダーであるという事実から、状況は変わったのである。」
それはさらに悪化しつつある。次のチャプターはフィンランドがNATOに加盟しようとしていることだ。
アメリカは、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟すれば、プーチンの「Z作戦」は戦略的にほとんど何も達成しなかったとして完全に信用を失うと踏んでいる。結局のところ、近い将来、フィンランドとスウェーデンに駐留するアメリカの極超音速ミサイルは、サンクトペテルブルクとモスクワに非常に接近することになる。
その間にロシアが生物兵器の正体を暴露すれば、アメリカの政治エリートの有毒なグループが戦争を加速させるだろう。すべては綿密に計算された脚本に従っている。
まず、生物兵器を管理する「エリート」たちが、2月初旬、キエフに対してドンバスへの大規模な砲撃を命じた。
それによってクレムリンはZ作戦の発動を余儀なくされた。
2014年以来、戦争のためにウクライナ人を訓練してきたアメリカの計画の最終目標は、ドイツをロシアから遠ざけることだということを私たちは常に覚えておく必要がある。ドイツは事実上経済的にユーロ圏を支配しているからだ。
帝国は海洋を支配することで、ロシアのエネルギーを遮断し、ドイツを意のままに操り従属させることができる。
第二次世界大戦中、ブリタニアが海を支配していた頃、イギリスがドイツにしたようにだ。ドイツ国防軍は機械化された軍隊に燃料を供給することができなかった。今、理論的にドイツとEUは天然資源を海外に、そして完全にアメリカに依存しなければならなくなるだろう。
ウクライナ保安庁(SBU)の狂信者とアゾフのネオナチが支配する遠隔操作されたキエフ政権は、ロシアからウクライナ経由でヨーロッパへの天然ガスの供給をすべて停止し、流れを3分の1以上減少させることによってさらにそれを難しくしている。
これを解釈すると、ロシアと戦うためにウクライナの兵器をEUが増強するように米国が脅迫しているということだ。現実的な結果として、ドイツとEUにとって産業の停止や家庭の暖房や電力のコストという点で悲惨なものになるだろう。
一方ロシアは中国や東アジアとのパイプラインを強化し、高速鉄道ですべての天然資源を輸送することになるだろう。
しかし、アメリカに対する予期できない負の結果も起こるだろう。奇妙なことが起きているのだ。ウクライナ経由でヨーロッパへのガス輸送が完全に断たれれば代替手段がなくなる。ベルリンにIQがあるのなら、ノルド・ストリーム2の将来について再交渉する道が開かれるだろう。
エネルギー開発センターのキリル・メルニコフ所長は、「ヤマル-ヨーロッパ間のガスパイプラインは実質的に休止状態であり、ノルド・ストリーム2の1ラインもドイツの規制当局がまだ稼働許可を出していないにもかかわらず、稼働の準備が整っている」と指摘している。
そこで、メルニコフは「このままだとドイツはウクライナ経由の輸送ルートを置き換えるためにノルド・ストリーム 2のうち1ラインの稼働を早急に許可する必要があるだろう」と貴重なコメントを残している。
EUの政治家の意思決定層に浸透している驚くべき愚かさに賭けたら誰も損しないだろう。経済的な自殺に直面しても、EUはロシアの石油を「放棄」しようと必死なのだ。しかしエネルギーのない東欧のために全面的な禁止は不可能である。
公平なエネルギーアナリストならロシアの石油を置き換えることは多くの理由から「即座に否決される」ことを知っている。OPECプラス協議、ワシントンとリヤドの間の恐ろしいほどの溝、終わらないJCPOA再交渉では米国人は頭のない鶏のように振る舞っている。そしてヨーロッパの石油精製所はウラル産の石油を使うように設計されているという、EUの批評家たちには理解しがたい重大な事実があるのだ。
もしヨーロッパが切腹するのを見て夏を楽しもうと思っていたのなら、アペロール・スプリッツを買いだめする時期だ。新しいヒットシリーズ、シーズン1「アメリカの生物兵器ビジネスの内幕」に乞うご期待。
Link:
{1} http://thesaker.is/president-putin-of-russia-speech-on-red-square-victory-parade/